J 最新アルバム『Limitless』を携え
新なスタートをきったツアーでオーデ
ィエンスと交わしたもの

Jが全国ツアー『J LIVE TOUR 2019-THE BEGINNNGー』のツアーファイナル公演を、8月11日、東京・マイナビBLITZ赤坂で開催した。ここでは、そのツアー初日となった岡山公演の模様を含め、最終日のレポートをお届けする。
いくつかの節目と、フェンダーのニューベース、そして新しく生まれた11枚目のオリジナルアルバム『Limitless』とともに、J自身が新たなスタートをきる。そんな想いを込めて挑んだ今回の『THE BIGINNING』ツアー。7月6日、ツアー初日の岡山公演がスタートしたときは、本来なら発売されている予定だったアルバムはまだ出ていなかった。それでもJは「世界最速、初めてみんなの前で披露してます」といってアルバムの曲を当初の予定通りアクト。「今までの人生でこれだけ新曲を続けてやったステージはないんじゃないかな」と本人がいうほど、ライブ中盤はアルバム曲だけでとことん攻め抜いていった。それに対して、驚いたのはオーディエンスの反応だった。どの曲も新曲ならではの身構えた空気感はすぐに消え去り、オーディエンスが曲をすぐに楽しもうとしているのが伝わってきたのだ。そのなかでも、抜群のレスポンスでフロアが反応していたのが「Can’ t Get Enough」。こうして『Limitless』のキャッチーさ、ポップ性を初日のステージでまざまざと体感したJは「なんの先入観もないまま曲を聴いてもらえることは、ミュージシャン冥利につきます」という言葉で、この日集まった観客を讃えていた。
そもそも今回のツアーの初日はなぜ岡山だったのか。1年前のこの日の翌日、じつはここ岡山ではJの公演が行われる予定だったのだ。だが、そのライブは西日本豪雨の影響でやむなく延期となったため(後日、振替公演が行われた)「今回は岡山をツアーのスタートに選ばせてもらいました」とその理由を初めて会場に集まった観客だけにあかすと、そのあまりにもJらしい紳士で男気を感じさせるエピソードに胸がアツくなった。フロアからは惜しみない拍手がJに送られた。そうして「この瞬間は当たり前にある訳じゃない。だからこそ、こうして一つの想いをみんなで共有できたり、楽しめるときは、がむしゃらになるべきだと思います」とこの場所で伝えたかったメッセージを届けたあとは「ここ岡山のみんなの想いを連れて、全国各地リレーして最高のライブをやってきます」と約束をかわし、いつもの挨拶で初日公演を締めくくった。
あれから地方を周るなか、アルバムも無事発売となって迎えたツアー最終日。
「オーライ東京、飛ばして行くぜ!」
登場するなり第一声から威勢よく「Now And Forever」で真夏の太陽のようなエネルギッシュなバンドサウンドを轟かせ、初日からずっと描いてきた夢の景色の続きが始まる。そうして2曲目にして最高のキラーチューン「PYROMANIA」をドロップ。フロア一面にはオーディエンスがライターを着火させて歌うというJだけに許された景色が広がる。何度見ても、ロックを好きになった頃の自分を全速力で思い出させてくれるというのは本当に凄いことだと思う。Jのライブには、観た人の音楽への情熱、それを呼び起こすパワーが漲っているのだ。
「俺はここからまだまだロックしていくぜ」、そんな自分の幕開けとなる「the Beginning」からは、アルバム曲で新たな物語を刻みつけていく。この日披露した新曲たちは、初日と比べると驚くほどの仕上がり具合。masuoならではの重量感あるパワフルなドラミングがグイグイバンドをひっぱっていく曲に進化していた「Don’ t Let Me Down」では、Jのブレス音や間奏のセクシーボイスもさらに大胆さを増し、ギターのmasasucksの手による「Fever」は、新しい物語の始まりを感じさせるギターフレーズがJのライブにフレッシュな空気を注ぎ込んでいった。
溝口和紀
masasucks
masuo
ズシリと腰にくる豪快で太いトーンのギターリフを背負い、叙情性あふれるメロディを男の香りプンプンのボーカルで歌い上げる「at Midnight」を濃厚なグルーヴで聴かせたあとは、Jのキャッチーなメロディが炸裂。もはやキラーソング的な仕上がりとなっていた「Can’ t Get Enough」へと展開。フロア一丸となってのOIコールが響き渡るなか、続く「Fly Again」ではミラーボール灯って観客たちがいるフロアを照らし、オーディエンス全員を引き連れてこの先も光の先へと突き進んでいくんだというメッセージを、情熱的かつアグレッシブなステージングで見せつけていった。しかし、ここで途切れないのが有言実行のJ。このあと、さらにどこまでもパワフルでキャッチーなメロディが光のなかに連れてっいってくれるような「RECKLESS」を投下。オーディエンスをきっちりポジティブな空気を体感できる世界へと導いていったのだ。
そうして、ライブはそのままクライマックスに向けて猛スパークをかける。「さっきの25倍ぐらい声出してくんないと届かないんだよ」とJ。Jがいうと、こんな煽り一つでフロアはさらなる熱狂へ掻き立てられ、それを証明するように「break」では人が次々とダイブ。Jのアカペラから始まる「BUT YOU SAID I’ M USELESS」は凄いテンションで観客たちが頭上でハンドクラップをしながら体をシェイク、「NOWHERE」のシンガロングでバンドとオーディエンスの見事な結束力を確かめ合ったあと、最後はおなじみの「Feel Your Blaze」でこの日1番の鮮やかな絶景と一体感を作り出し、本編は熱風に包まれたまま終了を迎えた。
アンコール、まずはJが1人でオンステージ。アルバム『Limitless』について「とても難産だった」ことを告白。 完成までにかかった4年間について「バンドでベースを弾いてるだけの奴がソロで10枚もアルバムを作って。その節目の後に作るアルバムはどんなものなんだろう? これからまだ俺自身、アツくドキドキできるんだろうか? と自己確認し続けた時間だった」と回想。そのなかで生まれた『Limitless』を爆音でプレイし、オーディエンスと大騒ぎしていくなかで「大切なものを体に刻みつけられました」といって今回のツアーを振り返った。そうして「これからもROCKな人生を、みんなと突っ走っていきたいと思います」と意思を表明。「みんなもそれぞれの立場で戦ってると思うんだ。そんなときに俺の曲やライブがエネルギーになってくれたら」と伝えたあと、珍しくJは「いまの俺からみんなへのメッセージ」という注釈をわざわざつけて、アルバムから「Love Song」をプレゼント。<逃げ出した自分の影 君の中に見つけた>、<まだ終わりなんかじゃないだろ?>という言葉を通して、オーディエンスに最大限のエールを送ったあとは、その想いが途切れないようにと願いを込め「BURN OUT」の投下でステージは大団円のままフィニッシュ。
アルバム『Limitless』と、今回のツアーを通して新たなスタートをきったJはこの日、ライブのなかで12月30日に『J 2019 放火魔 大暴年会』、31日に『F.C.Pyro.Member’ sOnly~‘19-’ 20 COUNTDOWN LIVE~』を東京・渋谷TSUTAYA O-EASTで開催し、今年を締めくくることを発表。このツアーで、さらにパワーアップしたJが年末、渋谷でどんな大激震を引き起こしてくれるのか。こちらのライブも、ゾクゾクしながら待っていて欲しい。

取材・文=東條祥恵 撮影=Yoshifumi Shimizu
>>【インタビュー】J 4年ぶり11枚目のオリジナルアルバム『Limitless』に漲るキャッチーさ、そこに込めたメッセージとは?

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