【Spotify×ONE MUSIC CAMP×SPICE】
未経験から始めたキャンプインフェス
『ONE MUSIC CAMP』今年10回目を迎え
た主催者の想いとは

2010年にから毎年兵庫県三田市で開催されているキャンプイン野外フェス 『ONE MUSIC CAMP』。野外フェスランキングで全国4位に選ばれ、過去5年連続(2014〜2018年)チケットはSOLD OUT。かつてはClap Your Hands Say Yeahが出演したりと国内のみならず海外のアーティストもやってくる。経験ゼロからキャンンプインフェスを10年続けてきたチームを動かす衝動とは。『ONE MUSIC CAMP』の主催である佐藤大地、深川浩子、野村優太に話を聞いて見た。
ーー『ONE MUSIC CAMP』は今年で10周年です。今年のオフィシャルHPには2010年に開催された初回の『ONE MUISC CAMP』についても書かれてますが、改めて1年目を振り返っていかがでしょうか。
佐藤:1年目は今のメンバー体制とは少し違っていて、僕と今は辞めてしまったもう1人のメンバーで始めました。フェス以前にそもそもライブハウスやクラブでのイベントというのもやったことがなかったんです。友達が集まってDJをやる、みたいな身内のパーティーはありましたが、お客さんを呼んでチケットを売るというようなことはやったことがありませんでした。僕は『FUJI ROCK FESTIVAL』(以下、『フジロック』)に行って衝撃を受けて、フェスをやろうと決めたんですが、友人達は「いきなり未経験で野外でイベントなんて無茶でしょ」とか「ライブハウスでまずはやった方がいいんじゃないの?」という声もありましたね。
佐藤大地(ONE MUSIC CAMP)
ーーなるほど。ただ佐藤さんはフェスがやりたかったと。
佐藤:はい、そうですね。ただ、チケットを売り始めるんですが、開催1ヶ月くらい前になっても20枚しか売れてない……みたいな状況でした(笑)。当時は、Twitterなどが少し浸透してきたくらいの時で、今と比べるとSNSでの宣伝も難しい状況でした。それでも色々SNSでの企画などをやって、そこそこ話題にはなったのですが、初開催のフェスというのはお客さんの心理的なハードルも高くてチケットも中々売れませんでした。友達とかを誘いなんとか形にしたという感じですね。お客さんの半分くらいは知人や友人でした。その年には踊ってばかりの国奇妙礼太郎カルメラ、などに出演頂きました。彼らには今でも頭が上がりませんね。
ーー深川さんと野村さんはその1年目には行ってるんですか?
深川:行ってないです。私は佐藤と共に『ONE MUSIC CAMP』を始めたメンバーとバンドをしていたんです。それで「何かやっているな」というのは思ってたんですけど、「まぁいいか」くらいの感じで(笑)。 ある日スタジオ練習をしている時に、「1回目を開催したけれどボロボロで、もっとデザインにも力を入れてWebサイトも作ってプロモーションもたくさんしていきたいから協力してくれないか」と声をかけてもらったのがキッカケで2年目から参加しました。作ったWebサイトがWeb業界のデザインショーケースみたいなものにも取り上げられて、『ONE MUSIC CAMP』の認知度が広がったりしました。
野村:僕は5年前からの参加です。フィリピンに住んでいたんですが、そこで出会った方が佐藤さんの後輩だったんです。その当時『ONE MUSIC CAMP』はアジアのバンドのDesktop Errorなどを呼んでいたので、僕は現地からアジアのバンド情報などを送っていました。その後日本に帰国し、大阪で1年間働くことになりました。それと同じくらい時期に、『ONE MUSIC CAMP』を立ち上げたメンバーが抜けることになり、そのタイミングで佐藤さんと一緒にやることになりました。
DJ 竹内琢也(FM802)
ーー『ONE MUSIC CAMP』が立ち上がった当時は関西ではローカルフェス黎明期という様なムードはあったんでしょうか。
佐藤:そうですね。関西ゼロ世代の方々が立ち上げたイベントが多かった気がします。neco眠るさんとか、あふりらんぽさんとか。面白い人たちがやっているアンダーグラウンドなイベントが多かったです。ただフェスというより、イベント、レイヴといった感じでした。僕にとっては『フジロック』での体験が凄く大きかったので、キャンプフェスを絶対やりたいというのが真ん中にありました。キャンプフェスという形をとっているフェスは当時は関西はほとんどなくて。そういう意味では競合するフェスがあまりなかったというのはラッキーでしたね。
ONE MUSIC CAMP
ーー2010年に初開催して、今年で10回目。この10年でどんな変化をしていますか?
佐藤:毎年色んなことにチャレンジしていると思いますし、この10年色んな人と繋がりが出来たり、収益を貯めたりして呼べるアーティストの幅が広がっていると思います。ただ、最初から自分たちが本当にいいと思ったアーティストに出演して頂きたいというのは変わっていないので、そういう面では全くブレていないと思います。改めて初回に出演して頂いたアーティストを見ても、「良いラインナップだよね」って思います。
野村:アーティストの幅でいうと海外のアーティストも出て頂いていますが、最初はそのアーティストを呼んでいる日本のイベント会社のHPの電話番号を見て直接電話をかけたりしていました(笑)。 その電話がキッカケでオブ・モントリオールというアメリカのアーティストに出ていただいたり。翌年は新年会でそのイベント会社の社長と飲んでいる時に、「今年はClap Your Hands Say Yeahとか無理ですかね」とダメ元で聞いたら奇跡的に出演OKが出たということもありました(笑)。
ーーClap Your Hands Say Yeah出演は当時本当にビックリしました。
野村:凄いですよね(笑)。 ここ数年はアジアのアーティストの出演が多くて、昨年はシンガポールのザ・スティーブ・マックイーンズと、台湾のフリックルスに出演頂きました。
佐藤:今、アジアは凄く盛り上がってきてますからね。
野村:東京のライブハウスの青山月見ル君想フの寺尾ブッダさんという方がアジアのパイプ役みたいな感じになっていて。寺尾さんに良くして頂いています。
深川:去年は台湾のフェスに『ONE MUSIC CAMP』メンバー全員で行ったんですが、いい感じでしたね。
野村:数年前に出演頂いた落日飛車(サンセット・ローラー・コースター)というバンドがキッカケでアジアでの繋がりがどんどん出来てきています。
ーー『フジロック』や他のフェスに影響されて『ONE MUSIC CAMP』でこういう事やってみたいと思うこともよくありますか?
佐藤:僕の場合はワークショップ系のイベントとかに影響されることが最近は多いですね。『森、道、市場』とかもそうですけど物作りをしている人たちが集まるイベントは多いですし、影響力がある人も多いと思うんです。こういうワークショップやモノがあったらお客さんが喜ぶんじゃないかというようなことを探してしまいます。音楽フェスでいうと『橋の下音楽祭』は色々衝撃でした。イベントのコンセプトが日本の昔のお祭りを再現しましたみたいな感じで、会場にニワトリが歩いていたり、土俵があったり、ダルマが売っていたりするんです。そして建物や屋台もハリボテではなく、しっかり作っています。職人さんが実際に参加していたり、見せかけではなく日本の文化に密接に繋がっていて衝撃でした。しっかりバックボーンがありますよね。フジロックも日高さんが経験してきた海外のフェスっていうのがバックボーンにあると思いますし、尊敬します。自分たちもしっかり色んなことを経験して、それをフェスに還元したいです。
ーーということは『ONE MUSIC CAMP』の表現というのは3人のバックボーン、経験した所から来ているということですね。
佐藤:まさにそうですね。
深川浩子(ONE MUSIC CAMP)
ーーあと最近は三田米とコラボして、お米を1合で販売したり、三田市主催の『学生のまちづくりコンテスト』に協賛サポートと審査員で参加されています。三田市とのコラボも増えてきそうですか?
深川:そうですね。私は色んなフェスに行く時に地域の人たちとの関わりというのが気になるんです。地元の人たちに「若者が来て、よく分からないことをやってる」と嫌がられてしまう可能性もあるので。私も自分が住んでいる近くでフェスをやると聞くと不安に思うかもしれないですし、騒音や交通渋滞の問題もありますしね。地域の皆さんにも楽しんで頂いて、メリットがあるようなものにしたいですね。ローカルフェスというものが地域や社会にも意味のあるものになれば良いなと思って、最近はそういう交流や活動もしています。三田市には本当においしいお米や野菜があるので、『ONE MUSIC CAMP』のフードに入れていけないかなと考えています。
ーーそして今年は東京で「都市で遊ぶ」をコンセプトに『ONE MUSIC CITY』というイベントも行われます。
野村:これは僕が東京に住んでいて、アーティストさんの繋がりも増えて来ているので東京でもやりたいというシンプルなキッカケです。関西だと「『ONE MUSIC CAMP』をやってます」と言うと音楽好きの方なら、知ってくださってる方も多くなってきましたが、東京だとまだまだなんですね。やはり全国に名前を知らしめたいという気持ちもあります。
野村優太(ONE MUSIC CAMP)
ーー今年のブッキングについて聞かせてください。
佐藤:今年は10周年ということで、例年とは少し違います。基本的には前の年に出演頂いたアーティストさんや、今まで出演頂いたアーティストさんにはそんなに声をかけていなかったんです。毎年ラインナップをフレッシュにしていきたいという思いで動いているので。ただ、今年は10年目なので、今までお世話になった方々や出て頂いた方々で、また出て頂きたかったけど我慢していたアーティストさん達にお声がけしました。今まで出演してくださったアーティストが200組近くいるので、絞るのは本当に難しかったのですが、全体のバランスの中でTempalayドミコなど、以前出て頂いて今は人気がかなり高くなっているアーティストさんなどもストーリー的に面白いので今回お声がけしました。奇妙礼太郎、Lainy J Groove、空中ループなど1回目にも出て頂いて、関西でずっと活動されている素晴らしいアーティストにも10周年は出て欲しいよねという話もしました。
ーーエストニアのアーティストもいますね。
佐藤:マリ・ユリエンスですね。僕がずっと好きなアーティストで2年目くらいからずっと出て欲しいなと思っていました。
ーーあと『ONE MUSIC CAMP』といえば夜を彩るCLUB SNOOZERも醍醐味ですね。
佐藤:はい。朝までやりたいという思いが凄く強くてDJには『ONE MUSIC CAMP』は凄くこだわっています。『ONE MUSIC CAMP』にCLUB SNOOZERがバッチリはまってる感じがします。
ONE MUSIC CAMP
ーー最後に10年振り返って、最初に『ONE MUSIC CAMP』をしたいと思った初期衝動は今もフェスをやる原動力になっていますか?
佐藤:最初は『フジロック』に突き動かされて始めて、その後新しいメンバーが増えたり、色んな人に会ったりして、その衝動というのを動かし続けて来た感じがあります。3人でやる体制の中でいい物を作りたいとなると、それぞれこれだけは譲れないというものもあり、ぶつかることもあります。色々現実的な問題とかもあるんですが、話し合いの中で本気でやりたいんだなというのが見えた時は経済的な問題とかではなくて、「一度やってみよう」ということにしています。そういうぶつかりを経て出て来たものが、お客さんに本当に喜んでもらうフェスっていうのに繋がるのかなと思っています。
深川:この3人はバンドみたいな感じがありますね。曲作りの時にモメる時はあるけれど、音楽性は一致しているみたいな。
ーー『ONE MUSIC CAMP』当日は本当に皆さんいい顔してますよね。今年も楽しみにしています。
※SPICE1〜10はDJ竹内琢也によるインタビュー音源
タソガレコーヒースタンド
​取材協力=ダソガレコーヒースタンド(大阪府大阪市中央区南船場4-13-15 ビームキャラ南船場 1F)
取材・文=竹内琢也 撮影=森好弘

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