家入レオ、初の幕張メッセ単独公演で
見えた“次のステージ” ツアーファ
イナルをレポート

家入レオ 7th Live Tour 2019~DUO~

2019.7.27 幕張メッセ国際展示場9.10ホール
圧巻のライブだった。
家入レオの通算7度目となる全国ツアー『家入レオ 7th Live Tour 2019~DUO~』、そのファイナルである幕張メッセ。ニューアルバム『DUO』を引っさげての本ツアーは、今までワンマンでは訪れたことのない山梨、秋田、山形、群馬、岐阜、長崎を含む19都市全20公演、4万人を動員という自身最大規模であり、幕張メッセでの単独公演もキャリア初となる。さらに言うなら、ステージ中央から客席フロアに伸びた“花道”も、家入にとっては初だ。
高まる期待感。それはハードルが上がるということにもなるが、この日、家入はそんなハードルなどらくらく飛び越え、期待をはるかに上回る……どころか、今まで見たこともない領域にまで踏み込んだ自身最高峰のパフォーマンスを魅せて、圧倒! 忘れられない感動の一夜となった。
7月27日。場内が暗転すると、まずはバンドメンバーが登場し、演奏をスタート。そして大歓声に迎えられ、青いロングのワンピースを着た家入が登場。ライブは「Prime Numbers」で幕を開けた。素数が盛り込まれたイメージ映像をバックに、まっすぐ前を見据えて歌う家入。切なくも凛とした歌声が会場に広がっていく。続いては「愛してないなら」、間髪入れずに「もし君を許せたら」、「幕張ー! お待たせしましたー! ファイナル、楽しんでいきましょう!」と短く叫んだ後は、ハネるリズムが軽快な「Neon Nights」と、冒頭で4曲、アルバム『DUO』からの曲を披露。「Neon Nights」では上手から下手へと大きく動き、ときに目の上に手をかざしてフロアをいたずらっぽく覗き込んだりする家入に対し、大きな手拍子で応えるオーディエンス。序盤で早くも熱い一体感が生まれた。
家入レオ  撮影=田中聖太郎
「皆さん、こんばんはー! 家入レオです。今日は『家入レオ 7th Live Tour 2019~DUO~』に来てくださって本当にありがとうございます!」「今回、全20公演まわってくる中で、私のライブに初めて来てくださる方も多いんじゃないかなと思いました。なので、初めて来た人にも楽しんでもらえるように耳馴染みのある曲を揃えてきましたし、逆に何回も私のライブに来たことあるよっていう方にはこの『DUO』ツアーでしか聴けないアレンジをバンドメンバーと考えてきました。皆さんに楽しんでもらえたらなと思います」
そんなMCの後は、「君がくれた夏」「Silly」「ずっと、ふたりで」と、ドラマの主題歌としてもお茶の間に浸透したヒットチューンを3曲連続で届けた。家入の言葉通り、どれもお馴染みの曲ばかり、だが、どれも今の気分が投入されたアレンジが施され、新鮮に響く。なかでも壮大なスケールにライブアレンジされた「ずっと、ふたりで」は、曲に込められた大きな愛情がより際立ち、会場は多幸感で満たされた。
中盤。この日はスペシャルゲストも登場した。家入がステージに呼び込むと、前回のアルバム『TIME』で3曲、今作『DUO』でも「この世界で」を制作している元Galileo Galilei・現BBHFの尾崎雄貴が登場。彼を交えて、尾崎作詞作曲の「Relax」を歌うことに。ところで今回のツアーでは「その日その時の気分を楽曲に閉じ込めたい」ということで、会場ごとにリクエストを募り、お祭りバージョン、ボサノババージョン、ジャズバージョンなど、「Relax」をセッションで届けてきたという。「今日は何バージョンが聞きたいですか?」と家入が聞くと、様々な声が上がる。「ロック? ロックが多いってことは盛り上がりたいってことですかね?」と言って、この日はロックバージョンでいくこととなった。ドラムの玉田豊夢がエイトビートを叩き出すと、ギター、キーボードがロックなリフを鳴らし、家入が弾けるように歌う。ゲストの尾崎はアコースティックギターを掻き鳴らしながら、コーラスも。2コーラス目では尾崎がメインボーカルを取り、家入はくるくるとまわってダンス。全身で楽しさを爆発させる。会場も拳を突き上げ、大盛り上がりとなった。
家入レオ  撮影=田中聖太郎
スペシャルゲストを拍手で送り出した後は再び通常の形に戻り、マイクに向かった家入。「次の曲は小谷美沙子さんに作っていただきました」「自分はこういう人なんですって軸を持って生きていくことは大切だなと思います。自分の道を歩いていきたい、そんな思いで歌います」。そう言って放たれたのは、「JIKU」。アルバム『DUO』の中では小谷氏のピアノとデュエットするように歌われているこの曲を、ここではバンドサウンドを強め、繊細さはそのままに骨太に届けた。それにしてもロック、ポップス、深遠な曲、こういった芸術的な曲まで、自在に行き来しながら、それを最高の形で表現できるのが家入レオの強みの1つだ、とつくづく思う。スクリーンには、この曲を制作する際、家入が小谷氏に伝えたという思いを象徴するような、ファスナーの付いたぬいぐるみの熊やナイフといったアニメーションが映し出され、歌、音、照明、映像、すべてが1つになり、イメージを増幅させた。
赤と黒のワンピースに着替えてきた家入は、「ここからもっともっと盛り上がっていきたいと思いませんか!? 音でスパークしていきましょう!」と言って、後半戦へ突入。「Spark」では開放的な家入の歌が、目の前に青い海を描き出す。会場中に広がる左右に振られた手は、キラキラ光を跳ねる波のようにも見えた。続く「Overflow」ではファンキーなサウンドに乗って体を折り曲げながら、腕をぐるぐる振り回しながら、のけぞり、走り、エモーショナルに歌う。「ファンタジー」では花道に走り出て、しゃがみ、倒れ込み、床に寝転がって歌ったりもする。かと思えば、飛び上がり、「幕張、最高ーっ!!」とシャウト。すさまじい熱量と迫力だ。さらに、「Bless You」がすごかった。もともと強い目ヂカラに狂気にも似た光を宿し、この曲の中にある孤独、苛立ち、絶望、痛み、それでも愛を渇望する心の叫び……といったすべての感情を鬼気迫る歌で表現する。いや、表現というより、変な言い方だが、歌自体、表情自体、家入の存在自体が、まんま感情のよう。こんな表現、見たことも聞いたこともない。何かのゾーンに入ったような、神がかった「Bless You」だった。
「今歌った「Bless You」は17歳のときに作りました。これから歌う「サザンカ」は24歳で作った曲です」。そう言って歌われた本編最後の曲「サザンカ」は、つい今しがたの激情とは一転、ひだまりのような穏やかさで、柔らかな歌声が会場を優しく包み込んだ。
家入レオ  撮影=田中聖太郎
アンコールは3曲。ツアーTシャツにデニム、ポニーテールといういでたちでステージに現れた家入は、リラックス感のある「めがね」で本編で見せた表情とはまた違う日常的な側面を見せ、怒涛の盛り上がりとなった「サブリナ」では、歌い終わった後「一緒にジャンプするよ!」と言って、会場中で大ジャンプ! ファンへの感謝とメッセージを込めた「Bouquet」では、花道で歌っているときに感極まって涙。家入はその涙を何度も何度も手で拭い去りながら、このラストナンバーを魂を込めて心を込めて歌いきった。
鳴り止まない拍手にもう一度ステージに出てきた家入は、最後、アコギ1本で「Say Goodbye」を弾き語りするという予定外のスペシャル・アンコールまで披露。そこにいるすべての人の感情を大きく揺さぶるドラマチックな2時間半だった。
この日、家入はアンコールで「次のステージが見えた」と言った。観る側からすれば、今観てる目の前のライブこそが“次”のフェーズそのものだった。が、全力を出し尽くし、圧倒的に突き抜けたライブを実現した彼女には、もっと先にある“次”が見えたのだろう。感動の余韻に浸りながら、早くも“次”に期待が高まる、素晴らしいライブだった。

文=赤木まみ 撮影=田中聖太郎

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