【この2.5次元がすごい】独自の世界
観は健在 ミュージカル「少女革命ウ
テナ」が見せた光と闇

 1997年にテレビ放送され、今でも根強い人気を誇っているのが「少女革命ウテナ」です。男装した美しい主人公の天上ウテナに、神秘的な美しさを持つ薔薇の花嫁こと姫宮アンシー、そしてふたりを取り巻く個性的で魅力的な学園の生徒たち……。強く美しい独自の世界観と、それを描く独自の手法が人気の作品ですね。今回紹介するのはミュージカル「少女革命ウテナ〜深く綻ぶ黒薔薇の〜」です。華やかな世界観と華麗な決闘シーンをどのようにステージ上に描いているのでしょうか。
華やかでゴシックなウテナ独自の世界観がステージ上に再現
 今作は6月29日から7月7日まで東京ドームシティ・シアターG(東京)にて上演されました。会場に入るとステージの上に薔薇が浮かび上がりすでにウテナの世界は始まっている! とわくわくとした予感に期待しながら着席しました。アニメ「少女革命ウテナ」ではその世界観を表現するために影絵の劇中劇が取り入れられるなど、独自の手法が用いられていました。このミュージカルでもその手法は取り入れられていて、少し不思議な影絵の劇中劇がシルエットで浮かび上がり、緊張感を生み出しているようでした。
 男装した主人公の天上ウテナが薔薇の花嫁のために決闘をするという展開には、多感な少女時代に影響を受けたという人も多いと思います。衝撃的な作品であったからこそ、その後のメディアミックスの先駆けでもあった「少女革命ウテナ」。1999年には「月蝕歌劇団」による舞台化もされていましたね。今作でも会場にはアニメ放送時からのファンという人も多く詰めかけていたようで、作品の人気が高いからこそミュージカルへの期待感は非常に高いように感じました。
 今回は原作でも人気の高い「黒薔薇編」が取り上げられているため、見どころはなんといっても次々と繰り広げられる決闘です。前作に続いてウテナを演じる能條愛未さんは女性でありながらも強いウテナらしい殺陣を見事に披露してくれました。また戦いのさいに使用する剣をウテナはアンシーの胸元から抜くという象徴的なアクションがありますが、ここがあまりに美しく、アンシーを演じる山内優花さんのウテナを信用しきっていることが伝わる演技もさすがです。
キャストたちの心の闇への向き合い方が観客を魅了
 今作ではメインキャラクターたちが次々と心の闇に向き合っていくのですが、悩みや葛藤は特別なものではなく、見ている私たちにも心当たりがあるような、ずっしりと考えさせられる瞬間も多くありました。妬みや憧れといったキャラクターたちが抱える闇が決闘を招いてしまうのですが、そこへいたるまでの苦しみがミュージカルならではの表現で描かれています。ドラマティックに感情を歌い上げる楽曲や、迫力のある音楽がステージを盛り上げ、キャストの演技が観客の心を惹きつけていました。山内さんは「自分がどのキャラクターにいちばん心を寄せやすいのか考えながら見てほしい」と本番前に話していましたが、その言葉の通り、観客はウテナの世界観に夢中になっていたように感じます。
 とはいえ、深刻なシーンばかりではないのが「少女革命ウテナ」。シリアスなテーマを描きながらもコミカルな場面でしっかり笑わせてくれます。中でも西園寺莢一役の吉澤翼さんは、時に身体を張って笑いを起こし、かっこいいのに情けなく、でも嫌いになることはできないキャラクターの魅力をしっかりと表現しているのが印象的でした。
 動きも多く、スピード感のあるこのミュージカルで、シリアスになりすぎずエンターテイメントとして楽しく観ることができたミュージカル「少女革命ウテナ」。前作と同じくアニメ版を手がけた幾原邦彦監督がスーパーバイザーとして携わっていることもあり、一貫して「少女革命ウテナ」が大切しているものがそのまま舞台上で生きているように感じるミュージカルでした。
 華やかで、闇と光を感じることができるこの作品。月日が経っても色褪せない作品の魅力を感じることができました。

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