Helsinki Lambda Club 6周年記念イベ
ント・東京公演の公式レポート到着

Everybody Wants Help!! 2019年6月28日 代官山UNIT
この日の夜、東京は梅雨の真っ只中で蒸し暑い雨上がりだった。6月28日、静かな代官山の地下でHelsinki Lambda Club(以下、ヘルシンキ)の6周年イベントは開催された。
5周年の時はバンド初のワンマンツアーが行われたが、6周年はいい意味で肩の力が抜けたツーマンライブだった。対バンはツーピースで存在感のあるロックを鳴らすドミコ。橋本(Vo/Gt)が「かっこよすぎて日常で聴けない」と言っていたのは、同世代のバンドとして意識するところがあるからだろうか。音楽性こそ違うが、本気でひねくれているかっこよさに共通点を感じる。転換中、開場内には橋本がこのイベントのためにセレクトしたBGMが流れる中、ヘルシンキのライブを心待ちにしている観客はドミコの余韻の中で揺れていた。
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo
会場BGMが大きくなり、暗くなったところでメンバーが登場して歓声が上がる。これから夏が来るというのに、<夏は去ったまんま>と歌い出す「何とかしなくちゃ」で始めるところがヘルシンキっぽい。1週間の仕事で疲れた身体に、抜けのあるリズムが心地よい。
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo
その後「ユアンと踊れ」から「Lost in the Supermarket」と『olutta』の流れが続く。お馴染みの2曲につい笑顔になり、続いて「マリーのドレス」では洒落っ気を見せる。そこから2曲はとても優しい時間だった。「NEON SISTER」の<窓の無い部屋は君の光だけが頼りで>という歌詞は、窓のないライブハウスで奏でる彼らのステージに重なって見えた。明日は太陽が照らしてくれるとしても、君の光を頼りにしている今のほうが幸せなのかもしれない。続く「Jokebox」は、歌詞にある<二人は始まらない ラストシーンは特にない>というような恋を体験したことがあるわけではないけれど、切ない物語を読んだ後のように心地よい後味が残った。
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo
「今日はもう金曜日だから、色々辛いことがあった人もいると思います、そんなみなさんに捧げます」という橋本の言葉から始まった「引っ越し」。この曲がリリースされた昨年末から、何度も救われてきた。<海の底へ引っ越そうか>と言うが海の底も苦しいし、火星もきっと楽に呼吸できるわけではない。でも、気ままに「引っ越し」していいんだと思うだけでなんとなく楽になる。今までに色んな曲を作ってきたヘルシンキは、好きなことを楽しんでやってきたからこそ、6周年まで来れたのだということを改めて気付かされる。
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo
中盤は「しゃれこうべ しゃれこうべ」で渋谷メルトダウンさながらの楽しい地獄の空気を作り出した。「メサイアのビーチ」、「Morning Wood」と「Boys Will Be Boys」では演奏している本人たちが何より楽しそうだった。「シンセミア」をうっとりと奏でた後、すっかりバンドの代表曲になった「PIZZASHAKE」で一盛り上がりし、徐々に加速していく。「All My Loving」「ロックンロール・プランクスター」「This is a pen.」と各アルバムを印象付ける曲が続き、本編を締めくくった。
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo
アンコールでは、デビュー前の曲「KIDS」を新体制となった今のヘルシンキで新しくアレンジして披露した。6年間色々なことを乗り越えて続けてきたからこそ出来る、ヘルシンキをずっと追いかけてきたファンはもちろんのこと、当時を知らないファンにも嬉しいサプライズだった。8月25日に新代田・FEVERで、メンバーの敬愛する髭とこの結成6周年記念イベントのアフターパーティーの開催を発表し、会場が湧いた。本人たちが本気で好きなことをやっているヘルシンキは、観客に思いをしっかりと届けることが出来る。8月のイベントもきっと特別な日になるだろう。「懐かしいついでに」と言い「バンドワゴネスク」を演奏し、「Skin」でアンコールを締め括った後、ビールを飲みながら再び登場したダブルアンコールの「メリールウ」では迫力ある演奏で魅せ、舞台から去った。
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo
ツーマンライブとは思えないボリュームのある時間で、最近の曲もデビュー当時の曲も全て混ぜて作られたセットリストに唸った。彫刻から油絵、リトグラフ、舞台装飾まで幅広く活躍した芸術家のように、一筋縄ではいかないヘルシンキの魅力がしっかりと詰まった時間だった。沢山知ってもどんどん知りたくなる、それが今の彼らの魅力だ。
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo
終演後、セットリスト通りのプレイリストをダウンロードできるカードが配られた。帰り道、雨上がりの渋谷を歩きながらライブの余韻の中で、ヘルシンキのファンの温度感が高い理由が分かった気がした。粋なお土産が嬉しい。
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo
この日のライブのタイトルは「Everybody Wants Help!!」。
思えば今週は助けを求められることが多かった。この季節は、もしかすると冬よりも余程感情が揺れるのかもしれない。ヘルシンキのライブは、さりげなく、助けを求めている人に手を差し伸べてくれる。好きにならずにはいられないバンドだと改めて実感させられた日だった。

取材・文=柴田真希 撮影=renzo
Helsinki Lambda Club 撮影=renzo

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