北村想の幻想的な新作二人芝居、トム
・プロジェクト プロデュース『A列車
に乗っていこう』石田ひかり×松風理
咲×日澤雄介インタビュー

北村想の新作を、劇団チョコレートケーキの日澤雄介が演出する二人芝居『A列車に乗っていこう』(トム・プロジェクト プロデュース)が、2019年7月20日より東京芸術劇場シアターウエストで上演される。
難病を患っていた少女・そらと、そらの看護師でもあり個人教師でもある時枝が列車で旅に出る、という幻想的な物語で、数々の映画、ドラマ、舞台等で活躍している石田ひかりが時枝、2015年に芸能界デビューをして、本作が初舞台となる松風理咲がそらを演じる。
どのような舞台になるのか、演出の日澤、出演の石田と松風に話を聞いた。
石田ひかり、松風理咲
不思議で難解、でも引き込まれる瞬間がたくさんある北村想ワールド
――台本を読ませていただき、まさに北村想ワールド全開、という作品だと思いました。皆さんは最初に読んだとき、どのような感想を抱かれたのでしょうか。
石田 言葉にはできないくらいの、「何なんだろう、これは」という静かな衝撃といいますか、不思議な気持ちになりました。
松風 まず知らない言葉が多かったですし、そらちゃんと時枝さんという2人の人物像も謎が多いですし、これがどんな感じの舞台になるんだろう?と思いました。
日澤 みなさんのおっしゃっている通り、不思議だし難解だし、話の取っ掛かり見つけづらい本だな、と思いました。でも読んでいると、どこに行きつくかわからないけれど、グッと引き込まれる瞬間がたくさんあるんです。宗教や哲学、地球の成り立ちといった、人間が思考する大きいテーマから2人の物語を抽出して、この2人に人類を背負わせているような感じがしました。
――全体的にはすごく幻想的な雰囲気でありながら、2人が話している言葉は哲学的で文学的で、ところどころ鋭い言葉も出て来ますね。
日澤 演じる側は大変ですよね。雰囲気で乗り切れるお芝居ではないですし、かといって熱のこもった会話劇というわけではないので、存在感が重要になってくる作品だと思いますし、そういった居住まいみたいなところは大切にしたいな、と思って演出しています。
稽古場にて
「相手役がひかりさんでよかった」(松風)
――日澤さんからご覧になって、お二人はそれぞれどんな女優さんでしょうか。
日澤 理咲さんは初舞台ですので、観客からどういう見え方をしているのか、という感覚がまだつかみ切れていない部分はあるんですけど、こちらから「ここはこう見えているよ」と伝えると、次の稽古では自分なりの視線というか風景を持って臨んでくれるので、とても頑張り屋さんで勉強熱心だと思います。ひかりさんは、センスがやっぱり人とは違う感じがしますね。舞台上での自分の立ち位置というか、バランス感覚みたいな部分は絶対的なものを持っていてぶれないので、作品として軸を作りやすくてとても助かっています。こっちがちょっと遊び心で「こんなのやってみたらどうですか」と言ってみると、それを楽しんでやってくださったり、そんなところも含めてチャーミングな印象があります。
――石田さんから松風さんをご覧になって、どんな女優さんだと思いますか。
石田 初舞台って一生に一度しかなくて、そんな理咲ちゃんにとって記念すべき作品でご一緒させていただく共演者は私しかいない、ということは本当に嬉しいなと思いますね。一緒にやっていて、初舞台ゆえの頼もしさをすごく感じます。私も初舞台の時は本当に怖いもの知らずでしたけれども、舞台ってやっていくうちにいろいろな怖さを知ってしまうじゃないですか。それを知らない本当に無垢な状態の理咲ちゃんは、知らないことが強みだと思います。
石田ひかり
――日澤さんはどんな演出家さんだと思いますか。
石田 とっても優しい方だと思います。あとは、忍耐の方だな、と思います。ひたすら待てる方。演出家が答えを出してどんどん演出をつけて行くやり方もあると思いますが、細かいところまでディスカッションしながら進めていけるというのが、とても楽しいです。想さんの台本の世界観を壊さずに、なんとかこの世界を素敵に表現したい、そのためには共通の解釈を持っていないといけないと思うので、そのあたりを丁寧に突き詰めていけるのが、本当に贅沢な時間を過ごせているな、と思っています。
――松風さんからご覧になった石田さんの印象はいかがですか。
松風 相手役がひかりさんでよかったな、とすごく思っています。舞台の稽古中の居方とか、台本の読み方とか、いろいろアドバイスもしてくださいますし、ひかりさんの稽古場での様子を見て勉強になることもたくさんあります。すごく優しい方で、変な緊張をしないでいいというか、リラックスしてお芝居ができます。
――松風さんにとって、日澤さんは初舞台の演出家ということになります。
松風 日澤さんが「こういうふうにやってみたら」と実際にやって見せてくださったり、「こういう表現をしたら伝わるんだ」ということをわかりやすくアドバイスしてくださるので、すごく助かりますし、同時にそれにもっと応えなきゃな、と感じています。
松風理咲
「その頼もしさで私を助けてちょうだい!(笑)」(石田)
――石田さんも二人芝居は今回が初めてなんですよね。
石田 以前から一人芝居にすごく興味があるんです。究極の演劇というか、究極の力試しだな、と思っていて、イッセー尾形さんとか風間杜夫さんとか片桐はいりさんとか、いろいろな方の一人芝居を見てきました。今回こうして二人芝居のお話しをいただいて、これをやることができたら私にとって財産になるだろうし、舞台は修行だと思っているので、なるべく難しいことに挑戦したいし、これは挑戦しがいがある作品だなと思って、出演を決めました。
――今公演が決まってから、北村さんとはお会いになりましたか?
日澤 想さんとはまだ一度もお会いしたことがないんですよ。制作さんを通じて台本について質問したときの返信メールがまた面白くて、想さん自身がこの台本の通り、好奇心の塊なんだろうな、と思いました。今回、想さんの作品をやれることになって光栄ですが、想さんの思いの淵にたどり着けているのかどうか不安も感じています。初日には見に来てくださるそうなので、お会いするのが楽しみでもあり、どんな反応をされるのか怖くもあります(笑)。
――石田さんから初舞台の松風さんに、何かアドバイスはありますか。
日澤 ひかりさんの初舞台は『飛龍伝’ 94』ですよね。そのときはどうだったんですか?
石田 ただただ楽しかったです。本当に夢のような。元々、あの役をやりたくてつかさんに直訴しに行って、念願かなって決まった舞台でしたから。何もわからなかったので、初舞台のプレッシャーも全くなかったですね。
日澤 それを踏まえてのアドバイス、となると何でしょうか?
石田 ただただ楽しんで欲しい。いいの、今のままで。その頼もしさで私を助けてちょうだい!(笑)
日澤 確かに、自分が思っている以上に経験が締め付けてくる部分ってありますからね。
石田 舞台はどんどんハードルが上がっていってしまいますね。自分で上げてしまっている部分もありますし、あとはやっぱり体力の面とか、記憶とか、衰えを感じるので。だからこそ、私にとって舞台は修行であり、脳トレであり、筋トレでもあるんです。
「感じたり考えたりできる面白さにあふれた作品」(日澤)
――では最後に、この舞台を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
日澤 僕はいつも面白いお芝居を作ろうと思っているんですけど、面白さにもいろいろあって、今回の作品は笑える面白さはそんなにないかもしれませんが、感じたり考えたりできる面白さにあふれた作品なので、見終わったときに、見てくださった方の中で何かしらちょっとした変化が起きるような、そんなものをお渡しできたらいいですね。難解な本ですけど、あまり構えることなく、女優2人の存在感を楽しみながら見ていただければと思います。
松風 今作はいろいろな解釈の仕方ができると思うので、観る人によってひっかかるポイントとか、思うこともそれぞれだと思います。内容的には難しい部分も多いので、時枝さんとそらちゃんの二人の空気感というか、楽しんでいる姿や掛け合いを楽しんでいただけたらいいな、と思っています。
石田 わかりやすい内容ではないと思います。内容を100%理解しようとするより、北村想さんの世界を一緒に楽しんでいただけたらな、と思います。あと、理咲ちゃんの初舞台は一生に一度しかないので、その姿をぜひ見てあげて欲しいですし、スタッフ・キャストたちで約1か月、ああでもないこうでもないと作り上げたものを、今は本当に怖くて仕方がないのですが、迷いなく皆さんにお見せできるよう、初日を楽しんで迎えたいと思います。
取材・文=久田絢子

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