Rude-α×さなりが語る「過去・現在
・未来」ーー今、熱い注目を浴びる新
世代ラッパー対談

『高校生RAP選手権』『フリースタイルダンジョン』で名を上げ、今年の5月にEP「22」でメジャーデビューを果たした沖縄発、1997年生まれの22歳、Rude-α。そして、幼い頃からYouTubeと戯れ、中学生でオリジナル音源の制作を開始。SKY-HIがプロデュースを手掛けた「悪戯」を含む1stアルバム『SICKSTEEN』を6月にリリースした、2002年生まれの16歳、さなり。今、熱い注目を浴びる2人が、まるで兄弟のように語り合う光景は微笑ましくも頼もしく、そして希望に満ちている。これからのシーンを担うきらめきを備えたRude-α✕さなりによる新世代ラッパー対談、ここに開幕!
Rude-α×さなり
●ラップに出会うのは必然だった●
――まずは、『フロム ニューエイジアツアー 2019』を一緒に回ってみてどうでした?
Rude-α:もう、さなりの人気がすごい(笑)。
(一同笑)
Rude-α:あんなに黄色い歓声、久々に聞きました、マジで。
さなり:いやいやいや。まぁ、その歓声は気持ちよかったですけど(笑)。ツアーをずっと同じアーティストと回るのも初めてで、福岡にも初めて行ったし、本当に楽しかったですね。
――さなりから観たRude-αのライブはどうでした?
さなり:やっぱ、カッコいいっすねぇ……「盗めるところは盗もう」と思ってずっと観てました。もう完全に見習うというか、勉強という感じで。
――お互いにいつから存在を知っていたんですか?
Rude-α:元々、日高(光啓・AAA)さん(=SKY-HI)にはお世話になっていて、日高さんがプロデュースしてるのを知ってMVを見てたりもしてたんで。実際に会ったのは今年の3月の『SPACE SHOWER NEW FORCE 2016→2019』というイベントで。
さなり:僕は中学1年生ぐらいに、『高校生RAP選手権』で知りました。僕自身もフリースタイルラップから入ってMCバトルとかもめちゃ見てたんで、最初に会ったときは「おぉ~本物のRude-αだ」、みたいなところはありましたね。
Rude-α:さっき、さなりは俺から「盗めるところは盗もう」って言ってましたけど、俺も全く同じスタンスで日高さんから盗む感じなので、「俺がもらったものなら全てくれてやるぜ!」みたいな縦社会ですよ(笑)。でも、さなりっていい意味で、先輩だからって気を使わない感じがいいんですよね。10代の頃の自分を見ているようだなとも思う(笑)。この前、一緒にメシを食いに行ったりもしましたけど、いい子面するわけでも着飾るわけでもなく、本当に素なんだなって思うから、その感じはすごい面白いなって。

Rude-α×さなり

――そんな2人が表現の手段としてラップを選びながら、ジャンルレスでボーダレスな音楽を生み出していて。Rude-αはJ-POPからブラックミュージックまでを幼い頃から雑食的に聴いていたり、さなりはまさにデジタルネイティブという感じで、YouTubeで出会ったSKY-HIをはじめ様々な音楽を吸収して。
さなり:僕は入口は完全にYouTubeでしたね。インターネットでしか音楽を聴かなくなって、CDも買ったことがなかったんで。
――生まれて初めて買ったCDが自分の1stアルバムって、もう伝説でしょ(笑)。
Rude-α:それヤバいっすね(笑)。俺はそれこそ親が聴いてて知ったORANGE RANGEとかが始まりで。そのときはまだiTunesもYouTubeもそんなに発展してない時期だったんで、結果的にTVで流れてる曲のCDを買って、それをパソコンに落としてiPodに入れる、みたいな。J-POPで言ったらGReeeeNとかAqua Timezとか、そんな時代かな。あとは中学生の頃からみんなガラケーを持ち出して、その中のSDカードに……って、SDカードとか分かる?(笑)、それに音楽を入れてみんなで交換し合ったりしてましたね。
さなり
――そう考えたら、Rude-αはまだ人を介して音楽が回っていく世代な感じがするけど、さなりはネットからOne to Oneで直接つながれる感じが、ちょっと違いますね。
さなり:スマホ1つで全部聴けちゃうし、YouTubeって本当に何でもあるから、ジャンルとかもそんなに気にしたことがなかったですね。ボカロを聴いて、その次によく分かんないJ-POPを聴いたり(笑)、バラバラにいろんなものがあって、それをバラバラに聴いていく。それが当たり前だったんで、別にいつの時代の音楽でもそこにあったら聴くし、みたいな。
――ラップに魅了されたのは?
さなり:僕は小学校低学年のときにラップを聴いて、口ずさみたくなるというか、歌ってて気持ちいいのが好きになったきっかけで。SKY-HIさんとかは当時からすごい高速ラップをしてたので、歌詞を見ながら口ずさんで歌えたら嬉しい、みたいなところはありましたね。
Rude-α:俺はバスケもダンスもやってたからなんですけど、ラップ=カルチャーみたいな感じで受け取ってたんで。俺の生まれた街にはいろんな人種の人たちがいて、それをマネしてブカブカのジーンズを履いて、スニーカーはナイキのエアフォースワンで、ウェッサイ(=LAを中心とするアメリカ西海岸で生まれたヒップホップカルチャー)を聴いて……そういう街だったんで、ラップに出会うのは必然だったというか。
●ラップって情報量が多いし、自然と自分の価値観が出てしまう●
Rude-α
――Rude-αから見たさなり、さなりから見たRude-αの魅力って何だと思います?
Rude-α:ライブでもすごい感じたんですけど、知らないうちに人を引き寄せちゃうというか、狙わなくても人を惹き付ける。だから本当にズルい男だなと思うんですよ(笑)。ただ、彼の本当の魅力はそこじゃなくて。俺は上京していろいろ学んでからできるようになったことが多いのに、16歳でこういうメロディを考えられるのはやっぱり武器だし、独特な歌詞を書いてくるし、トラックも作れる。AbemaTVの『オオカミくんには騙されない』っていう恋愛番組にも出たりして、一見、カッコいいキャラみたいな感じですけど、本当に音楽で成立してる人だなって思いますね。
さなり:いやもう、こんなに嬉しい言葉はないです、本当に(照笑)。このコメントを超えられるかな、俺(笑)。
Rude-α:ただ、さなりが出てるから『オオカミくんには騙されない』は見てて、俺の中の乙女が「キャー! さなりヤバッ!!」ってなりましたけど(笑)。彼と話したりご飯を食べてても思うんですけど、「そりゃ女の子は好きになるわ」ってちょっと思うんですよね。母性本能をくすぐる何かを持ってる。でも、そういうものに媚びてないというか、ちゃんと自分の音楽で戦ってるから、超リスペクトしてますね。日常的に俺のプレイリストに入ってます。
――いや~すごい称賛の嵐を先輩からもらいましたけど。
さなり:ヤバいですね(照笑)。もう本当に『高校生RAP選手権』から、MCバトルからずっと好きで画面越しに見てた人だし、そういう意味ではそれこそSKY-HIさんと同じなので。だからこそ、ちょっとした親近感も実は持ってて。あと、ラップって情報量が多いし、自然と自分の価値観が出てしまう。バトルとかを見てもそういうところが完全にまっすぐというか、根っこにある情熱が溢れ出てるし、実際に会ってみたらライブも本当にカッコよくて……スタッフの人とも、「マジカッコよ過ぎだろ。さなりのファン、めっちゃ取られそう」みたいな話になって(笑)。
(一同爆笑)
Rude-α
さなり:あとはもう、「wonder」が出たときに「この曲はエグい」って思いました。トラック、メロディ、曲としても最高にいいんですけど、MVも日本のラッパーであの雰囲気を出せてる人は少ないと思うんですよね。あれを見たときは、先を越されたなと思いました。サビも超キャッチーだし、歌詞も共感するというか……結構、神の視点(笑)。完全に刺さりましたね。
――Rude-αはさなりのアルバムの中で気になる曲はありますか?
Rude-α:何曲かあるんですけど、衝撃を受けた曲が「Prince」で。ああいうキャッチーなメロディにラップを乗せてるけど、トラックの音数はそんなに多いわけじゃないし、「Mayday」とか「嘘」もですけど、ボカロだったりロックっぽい部分、あとはどこか米津玄師さんとかに通じるところも感じる。そういう意味でも、ラップ以外のミュージックもいろいろ活かしてるなって思うんですよ。しかも、さなりは曲によって歌詞の書き方を変えてくるんで、「Mayday」は椎名林檎さんを感じさせるような詩的さで、「Prince」はストレートに、「嘘」は10代にしか分からない痛みを音楽に閉じ込めてる。自分の中にあるいろんな引き出しを使い分けてて、すごい器用だなって思います。
さなり:同じように音楽をやってる人がちゃんと分かってくれてるって、やっぱりめちゃくちゃ嬉しいですね。
●タピオカの代わりに流行って、今年でブームを終わらせます!(笑)●
Rude-α×さなり
――2人が音楽を通して伝えたいこと、軸にしてることはありますか?
Rude-α:俺は自分の気持ちを歌うときもあれば、結構引きの視点で歌うときもあるんですけど、全てにおいて共通するスタンスとして、「こうやって歩いていけば前が見えてくるよ」とか答えを出す曲じゃなくて、人の痛みに寄り添ってあげられるような、ふとした瞬間に聴いてちょっと前向きになれるような、人生のBGMとしての音楽を心がけてるんで。そういう意味では、愛や思いやり、優しさは自分の中でずっとテーマだなって。亡くなったおじいちゃんに、「愛がないと人生はつまらないから、一生青春だから大人になるなよ」みたいに言われたことがあったんですけど、Twitterとかって自分と考えの違う人を叩きたがるし、よくケンカしてるじゃないですか。俺はそれより好きな人には好きと言いたいし、素敵だなと思えるものの前では素直に涙を流したいし、弱ってる人がいたら抱き締めてあげたい。愛されるより愛する、受け入れてもらうよりは受け入れるっていうところは、結構ありますね。
――Rude先輩、人間がデカいっす!(笑)
Rude-α:アハハ!(笑)
さなり:僕は現状、そんなに伝えたいことがなくて。歌詞を書くときはまずテーマを決めるんですけど、フィクションでも全然書いてるし、あえて自分が思ってないようなことを書くときもあるし。別に好きじゃないけど「君が好きだ」みたいに(笑)。
(一同笑)
さなり:そこはもう本当に自由に、受け取りたいように受け取ってもらえればなって。だから最近は、できるだけ歌詞は具体的過ぎないように心がけてますね。それでも、自分の中にある考えや想いは自然と出てしまうと思うから、それが勝手に伝わるんじゃないかな。
Rude-α:彼のいいところはこういうところですよね。俺が「愛です」って言った後に、「特にないです」って普通に言える感じ。
Rude-α
――確かに、Rude-αの発言を受けて、そこで言葉を用意しがちですもんね。
Rude-α:そうなんですよ。ふわふわしてるように見えて意外と堂々としてるし、ブレないものがあるんですよ。
――あと、2人に共通して感じるのは、実行力があるというか。例えば、YouTubeに投稿してみよう、オーディションを受けてみよう、フリースタイルラップをやってみようでも何でも、実際にやる側に回ること、自分に能動的にスイッチを入れてここまでたどり着くことは、案外難しいと思うので。
Rude-α:ORANGE RANGEのライブを初めて観たとき、ステージに立って光が当たってる人を観たときに、「うわ、自分もああなりたい」って思ったのをすごい覚えてるんですよ。子供の頃から目立ちたがり屋ではあったんですけど、母親に「俺、TVに出る人になるから」みたいなことをずっと言ってたらしくて(笑)。
さなり:まぁ僕の場合は、普通にバカ(笑)。
(一同笑)
さなり:ただのバカだったんじゃないかって、今思いました。根拠のない自信も多少あって……何も考えてなかったところは結構ありますね。
Rude-α:さなりはそう言うけど、「バカと天才は紙一重」みたいな。さなりにはそういう雰囲気がありますよね。
――最後に今後の目標というか、やってみたいこと、実現したいことがあれば聞きたいなと。
さなり:何万人といる前で1人でライブしてみたいのもあるんですけど、音楽に限らずいろいろやっていきたいし、近い目標で言えばMVも全部自分で作って、YouTubeに投稿するところまでやってみたいですね。
Rude-α:俺は「さなりのファンを全員奪う!」って冗談ですけど(笑)。自分が魅せられた音楽は海外はもちろんですけど、ORANGE RANGEだったりTHE BLUE HEARTSだったりあいみょんさんだったり、そういう人たちの背中を今は追ってるので。俺はやっぱり武道館でやりたいなって。
――それはもうずっと公言してますもんね。
Rude-α:武道館でのワンマンはいずれ確実にやるし、あとはタピオカの代わりに俺が流行って、今年でブームを終わらせます!(笑)
Rude-α×さなり
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=小杉歩

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