「ザ・ぷー」インタビュー~新譜「コ
レナニ」を引っ提げワンマンLIVE『ぷ
道館2019』を7/13に開催

「ザ・ぷー」が、前作「ナニコレ」から4年ぶりとなるアルバム「コレナニ」を2019年6月23日にリリースした。また、新アルバム発表を記念したワンマンLIVE『ぷ道館2019』を7月13日(土)吉祥寺の武蔵野公会堂で開催する。
2008年頃から活動を続けてきた「ザ・ぷー」(2017年に「ザ・プーチンズ」から改名)は現在、街角マチオ(ヴォーカル、ギター)、街角マチコ(テルミン)、川島さる太郎(さるパペット)、SONE太郎(プロデューサー)の4名からなる自称「国際的怪電波ユニット」である。音楽・演劇・コント・映像をミックスさせたユーモア基調のライヴはとりわけ定評がある。この地球上において真に唯一無二の珍奇なスタイルをまのあたりにさせられた観客は、大いに脱力しながら度肝を抜かれるという、なんともいえない不思議体験を味わい、中毒に陥ってしまう。そんな「ザ・ぷー」から、新譜とライヴについて話を聞いた。
■4年のブランク、何してた?
――新譜「コレナニ」は、ザ・ぷー名義では初のアルバムになりますが、ザ・プーチンズ時代のセカンドアルバム「ナニコレ」(2015年リリース)からだと4年ぶりのニューアルバムということになります。4年もの間が空いたというのはどういった事情によるものでしょうか。
マチオ DVDを出すなどしてたので、まったく何も作品をリリースしなかったわけではないんです。
マチコ 私はすごく充電してたの。充電しまくって、ようやく放電できるようになった。
マチオ この4年間は比較的ライヴ中心でやっていた期間でした。他から呼ばれることが少ないのでワンマンライヴばかりでした。あるアーティストから「ワンマンライヴやりすぎ」って言われて「そうか」って気づいたんです。
マチコ マチオの外注の仕事もけっこう増えていましたね。楽曲提供とか。
マチオ シンガーソングライターの吉澤嘉代子さんや声優の上坂すみれさんなど人気のある方々からお声がけいただいて、楽曲を提供していました。また、変な曲もいっぱい書きましたよ。たとえば、東京になまはげが来たらどうなるかっていう「ナマハゲランド」。日本の"まつり"RE-DESIGNプロジェクト「都市のナマハゲ」のテーマ曲を作って欲しいという電通さんからの依頼でした。
マチコ 「ナマハゲランド」は、「ほぼ日」(ほぼ日刊イトイ新聞)で糸井重里さんの右腕と言われている浅生鴨さん、話題のメディアアーティスト・市原えつこさん、そして我々、という奇妙な組み合わせで作らせていただきました。
マチオ 一方、NHK Eテレの番組「ほうかごソングス」からもお声がけいただいて、子供向けの1分ちょいの作品を2曲提供しました。Eテレの番組って僕らの音楽がうまく嵌る感じがするでしょ。
――渋谷マルイの、交差点前の大型街頭ビジョンも見に行きましたよ。 ♪マーチオマチオ、信号マチオ!
マチオ あれを見に行ってくださった。ありがとうございます。シブヤテレビジョンさんからのご依頼で、信号待ちの時間も海外から来た人たちを楽しませたいというコンセプトでやったものですね。
さる太郎 あれで、ギャラが出てるのが恐ろしい。
マチコ 偶然見たファンのかたからは「ビックリした」とか「周りの人がざわざわしてた」という声が。
信号マチオ
――そんな日々を経て、今このタイミングでアルバム「コレナニ」を発表した理由は?
SONE太郎​ いい曲がたくさん溜まったからです。今回の収録曲は、新しいものもありますが、ほとんどは4年間のうちにライヴでやってきたものばかりです。色々な方から「そろそろ音源出ないんですか」って言われることも多く、もう出すしかないだろうと。まあ、これ以上溜められないっていう……玉突き事故みたいなものです。
――このアルバムタイトルを付けたのは何故?
マチオ どうしようかと悩みに悩みすぎて、前回アルバムのタイトル「ナニコレ」のサンプリング(引用再構築)になってしまいました。お馴染み感があるのもいいかなということで。
さる太郎 お馴染み感。言葉を入れ替えただけというね。
マチオ これ、どっちかな。「ナニコレ」かな、「コレナニ」かな、みたいな……。
――似てるから勘違いして「これ持ってたかな、なら買わなくていいかな」って思われるリスクもありそうです。
マチオ 今気づいたね、それ。
さる太郎 確かに。失敗したかな。
マチコ これ持ってたら、あれも欲しいなーってなるかなと思っていたんです。
マチオ 我々は間違えたかもしれない。外部の人の意見は重要でしたね。
左・前作「ナニコレ」、右・最新作「コレナニ」
■アルバム全12曲解説
――それではせっかくですから、アルバム「コレナニ」の全曲を、できるだけ簡潔に解説していただきましょうか。
マチコ はい、わかりました。1曲目は「THE 改名」。
マチオ これは「チームラボジャングル」というイベントの時に誕生した作品でした。改名したっていうことだけを歌った曲。
【動画】ザ・ぷー(元:ザ・プーチンズ)「THE KAIMEI」in チームラボジャングル

さる太郎 2曲目が「街角ガンジー」。
マチオ 「GO CURRY GONE」というカレーフェスから依頼を受けて作った、イベントテーマ曲です。元々「街角ガンジー」という曲は5年前に作っていたのですが、別にカレーのことを歌っている内容ではなかったんです。それをカレーフェスに合わせて完全にカレー仕様に変えました。色々と要素を付け足してお客さん巻き込み参加型にしたら、結構ウケるナンバーになりました。
マチコ 3曲目が「ヤバい〇〇(街角ヤバオ Version)」。
マチオ 元々はMXTV「上坂すみれのヤバい〇〇」という番組のメインテーマ曲として依頼されて作りました。とにかくプロデューサーの須藤Pから「ヤバい曲を作ってくれ!」っていうオーダーだったので、自分の中の「ヤバい」を総動員して作ったらこうなった。元の曲は上坂さんが歌っていますが、今回の歌詞は上坂さんヴァージョンとは変えてます。
SONE太郎​ その番組でナレーションをマチオくんが務めるなど、上坂さんとは関係が深まりました。それで歌詞を全部書き換えた「街角ヤバオVersion」を、上坂さんのラジオ番組に「かけてください」ってお願いしたところ、「放送コードに引っ掛かりそうだから無理」なんですって。
マチオ 放送できないのであれば、皆さんにはアルバムを買って聴いてもらうしかない。
マチコ ちなみに上坂すみれさんヴァージョンはシングルで発売されています。こちらは番組テーマ曲だったので放送できるものでした。
さる太郎 お次、4曲目は「テルミン・テルミン」だね。
マチコ 他とは全然曲調が違う。ザ・ぷー史上、一番おしゃれで洗練された曲です。まるで、ホテルの素敵なラウンジに来たような。
マチオ ザ・ぷーの他のレパートリーだと、テルミンが申し訳程度にしか入っていないとか、中には全然入ってない曲すらあるんですけど、これはもうテルミンを可能な限り入れた、テルミンを聴かせるためのナンバーです。テルミンがこんなにも歌モノのポップスに入っていて、ちゃんと機能しているのは、多分、世界で初めてじゃないかな。
マチコ いつもはふざけてますけど、たまには真面目にやるぞっていう。PVもいい感じの仕上がりです。
マチオ かつて僕が「ナニコレ」のPVで一人パフォーマンスをしたために、ザ・ぷーはマチコさんのテルミン色がちょっと薄れちゃった。だから謝罪の意味を込めて作りました。
マチコ 今回のPVにはマチコもさる太郎も出ています。お洒落で洗練されたザ・ぷーが見られる!
さる太郎 僕がね、ピアノソロを弾いてるんだ。終盤の盛り上がりのところで僕の華麗なピアノソロが聴けるので、ぜひPVを見てね。
【動画】ザ・ぷー「テルミン・テルミン」MUSIC VIDEO

マチコ 次、5曲目は「じゃじゃじゃ(街角じゃじゃお Version)」。
マチオ 吉澤嘉代子さんのオリジナルミニアルバム「吉澤嘉代子とうつくしい人たち」に提供した曲です。そのアルバムにはサンボマスター岡崎体育さんも参加しています。この曲のあて書き感はすごかった。自分の彼氏が自分を放っておいて外へ戦いに行っちゃうっていう内容なんですけど。僕ら相当、吉澤さんのファンなので、本人のキャラクターとか性格も知ったうえで、吉澤さんが歌うからこそ成立する世界観を追求しました。一方、今回の「街角じゃじゃお Version」はどうなっているのかと言うと、テルミンを思いっきり入れました。吉澤さんのヴァージョンにはそれほど入ってないテルミンが全編で聴ける仕様。もちろんライヴでもマチコさんが弾きまくります。
さる太郎 6曲目は「俺!世界遺産マニア」。
マチオ NHK Eテレ「ほうかごソングス」に提供した曲で、世界遺産をこれでもかって詰め込みました。こちらはテルミンが一切入ってないっていう……。NHKさんに納品する時にバタバタで「あ、入れられなかった」っていう感じでした。
マチコ ……入れられたのにね。
マチオ まあ……入れられましたね。むしろイントロから入って行けた。
――アルバムに入れる時に改めて加えるとかっていう発想もなかった?
マチオ ……それもなかったですね。
マチコ ……入れられたね。二重に入れられたね。
マチオ 申し訳ない。平謝りです。マチコさんを激怒させましたが、NHKさんからはわりと好評で、すぐさま次の仕事の依頼をいただきました。
さる太郎 続いて7曲目、「おまえブタメン!」。
マチオ ゲーム「太鼓の達人」Nintendo Switch 版の曲を書いて欲しいとバンダイナムコさんから依頼された曲です。おやつカンパニーさんから出てる「ブタメン」という、子供に人気の小さいカップラーメンをテーマにした曲で、ひたすら「ブタメン」のことを歌っています。
マチコ これまた、テルミンが入ってない。
マチオ ……これもね、入れられましたね。すみませんでした。改めて、反省します。
【動画】ザ・ぷー「おまえブタメン!」MV ~太鼓の達人 Nintendo Switch 版収録~

さる太郎 んじゃ次。8曲目「ナマハゲランド」!
マチオ 先ほどお話した例の「都市のナマハゲ」のテーマ曲です。
マチコ これはテルミン入ってるね(ニコニコ)。
マチオ 入ってますね。とにかくなまはげを意識して、ちょっと現代的でかっこいい曲を書いて欲しいとの依頼でした。なまはげのことを色々調べたうえで歌詞を書いています。
マチコ なまはげというお題を与えられて、私たち的にヒップホップで返した。とても評判が良かったですね。実際ライヴでもね。マチオくんとマチコの2人でなまはげの衣裳を着けて。都道府県会館の人から借りたんです。
マチオ 一式借りてきました。それを着てしっかりやった。でも、あんな現代風に使われるとは思ってなかっただろうね。
さる太郎 そして9曲目が「ハイパーインフレイション」。
マチオ 設定としては2099年に東京がものすごいインフレになっていて、物の値段が100~300倍ぐらいになるっていう曲。「うまい棒が3千円です」って歌ってる。そんな世界だけど「楽しく優しく生きていこうよ」みたいな、ほんわかふんわりしたメッセージがある。
マチコ 物の値段は変わっても、夫婦愛は変わらないとか。普段メッセージ性のない私たちですが、これは珍しくちょっと優しい、いい雰囲気のメッセージが込められています。
さる太郎 次の10曲目が、もう一つのNHK Eテレ「ほうかごソングス」提供曲である、「消化鉄道 内臓本線」だね。
マチオ 食べたものが便になって出てくるまで、それぞれの内臓器官がどういう働きをしているのかを綴った内容です。これもNHKさんから「かなり評判いいですよ」って言われて。評判がいいとけっこう再放送かかるんですよ。内視鏡の、ちょっとグロいくらいの大腸の映像とかが途中出て来たりするんだけど、でも可愛い絵や給食食べてる子供とかも出てくる。最後はトイレで水が流れていくところまで。現在でもNHKのウェブサイトで閲覧ができます。
さる太郎 11曲目は「私を自己啓発セミナーに連れてって」。
マチオ 今回、溜まった曲以外に、さすがに新曲も何か作ろうということで、Twitterで曲名ファン投票をしたところ、これが1位でした。
マチコ ただ、これも個人名がいっぱい入っていて、放送が全然できないと思うんですよね。
マチオ 電車の中吊りでよく見かける自己啓発本のタイトルが沢山入ってます。個々の本のことを悪くは言ってはいないですよ。カタログみたいな感じですね。でもオンエアはできないので、ライヴをお楽しみに、という感じです。
さる太郎 最後の曲は「おならのソムリエ」!
マチオ ライヴで人気の、笑えて泣ける珍名曲。アルバム一番の名曲です。
マチコ ライヴではさる太郎がブーブークッションで、ブーッておならの音をやってる。
マチオ だからライブだと最初はみんな笑うんです。でも最後には何故か感動的な雰囲気になっていく。ミュージシャン仲間の結婚式の余興でやってくれという話もありました。で、この曲を披露したら親戚の方々の評判も良かったそうです。
――願わくば、ライヴの時、リアルにおならを出せたらもっと面白いのに。
マチオ 別の扉が開きますね。すごいな。話題性ってそういうことですよね。それ、話題性ありますよね。相当、話題になるな。
マチコ それ、さる太郎が得意なんじゃない。
さる太郎 僕が練習しなきゃいけないってこと?
マチコ お芋をいっぱい食べて。
■ザ・ぷーの集大成ライヴを見よ
――さて、そのアルバム発売を記念したワンマンライヴ『ぷ道館2019』が、来たる7月13日に吉祥寺の武蔵野公会堂で開催されます。どのような趣向になるのでしょう。
マチオ アルバムの曲を演奏していくのはもちろんですが、我々のライブはやはり演劇的であることが特徴ですから、今回もマチコさんが暴走するコーナーを色々用意します。
さる太郎 どう暴走するの?
マチコ 今回は講談を。テルミン講談をやりたいんです。テルミン演奏を交えた講談。
マチオ 机の前に正座するんだよね、脇にテルミンを置いて。で、なんか口上を喋りながら時々演奏する、みたいなことを言っていたよね。イメージはいっぱい語ってくれるんですけど、具体像がさっぱりわからなくて。
マチコ 机を叩いたりするじゃないですか。テルミンを叩くのはあれだから、床を叩いて途中でテルミンを弾こうかなっていう。
マチオ マチコさんは近頃、さる太郎にキャラが負けてきて、出番がどんどん減ってる。その分、さる太郎の出番がどんどん増えてきてるんです。だから、ここいらでひとつマチコさんを盛り返そうってことで。マチコさんとテルミンをちょっと押していこうと思っているんです。
マチコ そもそもザ・ぷーの活動主旨はテルミンの普及なんですからね。
――では『ぷ道館2019』への意気込みを。
マチオ 年に一度の「ぷ道館」は、我々ザ・ぷーにとって一番のお祭りイベントでございます。これだけは毎年、一回も欠かさずにやってきました。「ぷ道館」は、我々の努力と才能を全部投入して、お客さんを最大限に楽しませようという、ザ・ぷーの集大成といえるものです。今回のアルバムに収録した12曲も全部やる予定です。
さる太郎 まじか。
マチコ それから、小学生以下の方は親御さん同伴の場合は、無料にしております。
――ならばお子様たちには、なまはげをやってやるといいんじゃないですか?
マチオ そうですね。「ナマハゲランド」も歌いますから。
マチコ じゃあ、また秋田県からなまはげの衣裳を借りてこないといけないんだ。
マチオ なまはげって、どうすると厄が払えるんだっけ?
マチコ なまはげは大きい包丁で、悪いところを切り落とすってことらしいですよ。
マチオ たしかに彼ら、でっかい包丁は持ってるよね。それで切り落とす?
マチコ でしょう? 刺されてる人は見たことがない。
さる太郎 いや、子供を脅して、泣かせばいいんですよ。だからああやって脅すんです。子供は見事に泣くからね。だってあれがわーって入ってきたら、ほんと怖いものね。
マチオ でも僕たちが出ると、いつだって笑われるだけでは? 誰も泣かない。そこに問題が……。
取材・文=安藤光夫(SPICE編集部) 写真撮影=池上夢貢

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