後世のHR/HMに
多大な影響を与えた
ディープ・パープルの傑作
『ディープ・パープル・
イン・ロック』

本作『ディープ・パープル・
イン・ロック』について

前作の『ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ』をリリースした頃、所属していたテトラグラマトンの経営事情が悪くなり、次作はイギリスの新興レーベルハーヴェストからのリリースが決定する。アメリカでは大手ワーナーブラザーズの配給となり、これまでにないサポート体制が敷かれることになった。彼らにとっては急な追い風になったのは間違いなく、新作のプロデュースはブラックモアが中心となってメンバーが行なうことになった。

そして1970年、本作『ディープ・パープル・イン・ロック』がリリースされた。このアルバムが出たあとだったか前だったかは忘れてしまっているが、同時期にシングルのみで発売された「ブラック・ナイト」が日本でも大ヒット、一気に認知度が高まる。この曲はイギリスでもチャート2位の成績を収め、ようやく本国でもディープ・パープルの名前が知られるようになった。

収録曲は全部で7曲。レコードに針を落とした途端(表現が古くてすみません…)聴こえてきたのが「スピード・キング」。中学生だった僕はこの曲に大きな衝撃を受けたことを今でもはっきりと覚えている。それぐらいまったく新しいスタイルのロックであった。ロードのオルガンソロの時にバックの音が小さくなって、ブラックモアのジャジーなギターと掛け合いになり、だんだんとカオスに突入していく様には痺れたものだ。これはヴァージョンがふたつあって、当時の日本盤LPはイントロなしのショートバージョン(アメリカ盤仕様)で、現在CDに収められているのはロングバージョン(イギリス盤仕様)である。僕は聴き慣れていることもあって、最初から圧倒されるショートバージョンのほうが好きだ。なにはともあれ、この「スピード・キング」こそが、後のヘヴィメタルの原型になったといってもよいだろう。ブラックモアとロードのふたりはもちろん、イアン・ペイスの手数の多いドラミング、イアン・ギランのかん高い楽器のようなヴォーカル、的確にリズムをキープしながらも所々で効果的なフレーズを繰り出すロジャー・グローバーのベースなど、それらの素晴らしさがロック初心者の子供にでも理解できるのだから、ディープ・パープルの音楽はロック入門には打って付けのサンプルだと思う。

本作リリース後の成功と第2期の終わり

本作リリース後はブラックモアがグループの主導権を握り、ご存知の通り『ファイアボール』(‘71)、「ハイウェイ・スター」と「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を収録した『マシン・ヘッド』(’72)で大きな成功を収めることになるのだが、長い世界ツアーに加えてレコーディングもこなさざるを得ず、結果的にはメンバー間の不和へとつながっていく。そんな第2期の最高の瞬間をとらえたのが日本ツアーの様子を収録した『ライブ・イン・ジャパン(現在は『メイド・イン・ジャパン』)』(‘72)である。僕の中ではディープ・パープルと言えば、リアルタイムで知り衝撃を受けた『ディープ・パープル・イン・ロック』になるのだが、もし彼らの音楽を聴いたことがないなら、どれでもいい(特に第2期)ので聴いてみてください。きっと新しい発見ができると思う。

TEXT:河崎直人

アルバム『Deep Purple In Rock』1970年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. スピード・キング/SPEED KING
    • 2. ブラッドサッカー/BLOODSUCKER
    • 3. チャイルド・イン・タイム/CHILD IN TIME
    • 4. フライト・オブ・ザ・ラット/FLIGHT OF THE RAT
    • 5. イントゥ・ザ・ファイア/INTO THE FIRE
    • 6. リヴィング・レック/LIVING WRECK
    • 7. ハード・ラヴィン・マン/HARD LOVIN' MAN
『Deep Purple In Rock』(‘70)/Deep Purple

OKMusic編集部

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