70’sロックの熱気を蘇らせる
テデスキ・トラックス・バンドの
デビュー作『預言者(Revelator)』
オールマン・ブラザーズ・バンドに
加入したトラックス
そして、トラックスは敬愛するデュアン・オールマンの在籍していたオールマン・ブラザーズ・バンドに加入、世界で広く彼の名が知れ渡ることになった。オールマンズ脱退後も、テデスキとトラックスはしばらく各々のグループで活動を続けるのだが、彼らはソウル・スチュー・リバイバル(キング・カーティスの名曲、メンフィス・ソウル・スチューから名付けられた)というユニットで自分たちのスタイルを模索していた。テデスキは、トラックスの最良の演奏はスワンプロックやサザンロックのようなスタイルでこそ発揮できると思ったのだろう。2010年、満を持してテデスキ・トラックス・バンドを結成する。
本作『預言者(Revelator)』について
収録曲は全部で13曲。メンバーを含む複数のソングライターの手になる楽曲群は、どの曲もよく練られているものばかり。40歳を過ぎたテデスキのヴォーカルは枯れ具合がボニー・レイットにますます似てきているのは置いておいて、このグループのリーダーが間違いなく彼女であることがわかる仕上がりになっている。通常、トラックスのギタープレイは難解なものも少なくないが、ここではサザンロックやスワンプロックの文法を逸脱しないように弾いている。それはトラックスのプレイがテデスキのコントロール下にあるからだ。自分のコントロール下にあってもトラックスは最高のプレイができることをちゃんと分かっているところなど、さすがにテデスキ9歳年上の貫禄である。
曲によって、ブルース、ゴスペル、スワンプロック、フォークロック、サザンロックなど、多彩な味付けがなされている。3管編成のホーンと複数のゴスペル的なコーラスが加わることで、彼らの音楽は重厚なものになった。トラックスのスライドが肉声のようにテデスキのヴォーカルに被るところは何度聴いてもゾクッとする。テデスキ・トラックス・バンドの音楽は、ライヴでこそ本領を発揮する性質であるが、本作はライヴの臨場感を感じさせるプロデュースワークがなされており、素晴らしい作品となった。
TEXT:河崎直人