布袋寅泰

布袋寅泰

【布袋寅泰 インタビュー】
“GUITARHYTHM”という言葉が
僕の背中を押してくれた

“夢を見ようぜ”という歌を歌う以上は
僕自身も夢を見ていなければいけない

「Black Goggles」や「Clone (feat. Cornelius)」といった森雪之丞さんの歌詞は近未来へ警鐘を鳴らしているような内容ですが、これは布袋さんご自身もそうした危惧があるからなんですね。

僕だけじゃなくて、みなさんも持っていません? ちょっとこれはトゥーマッチだって。ネットで買い物をしたら次の日には似たようなものが“お勧め”になったり、電話番号を登録すると知らない人から電話が掛かってきたり、完全に支配され始めたなって思うんですよ(苦笑)。もう止められないじゃないですか。ある時は共存しながら、ある時は逃げながら、自分を守っていかなきゃいけないところがあったり、その一方では“それは不可能だろう”と思う部分もあったり。まぁ、そんなことを言ってると、暗くて重い作品になっていると思われるかもしれないけれども、そこにひと筋の光を見いだしたいという考えは、どの時代の人間にもクリエーションにもあるべきだし、そこを描くことで見えてくる人間らしさもありますからね。あと、30年以上経ったけど、何も変わらない…僕は50歳になった時に“50歳になっていいのかな?”みたいな想いがあったんです。50歳になっても若い頃と変わらない。もっと大人になりたいとも思うけど、世間一般で言う大人になりたかったわけじゃないし、そういうものとずっと向き合いながら生きていく…「Thanks a Lot」ではそんなことも描いています。警鐘だけではない、みんなで時に振り向きながら、この先のことも考える、そういうカラフルな作品にはなったんじゃないかな。

その「Thanks a Lot」には、元BOØWYのメンバーである松井常松さん、高橋まことさんが31年振りに参加されているそうですね。

うん。それは今だからやれたことだと思います。だから、生々しいバンドサウンドになりましたよね。僕の拙い歌詞はいつまで経っても言っていることは一緒で、“変わりたくても変われないこともあるけれども、変わらなくてもいいんだ。倒れたら起き上がればいい。とにかく前に向かうことしかできないんだから。だったら、胸を張って進もうよ”ということなんです。そのシンプルなことを、それぞれの年代において「さらば青春の光」(1993年)がそうであったように、「RUSSIAN ROULETTE」(2002年)がそうであったように…もっと言っちゃえば、僕だけの歌詞ではないけれども、BOØWYの「DREAMIN'」がそうであったように(1985年 ※松井五郎氏との共作)、それをずっと伝えてきたし、これからも伝えていくことがミュージシャンとしての僕のコアですからね。「Thanks a Lot」で元BOØWYメンバーが参加したことはそういうことでもあると思います。

「Thanks a Lot」に《傷ついてもいい 挑み続けたいだけ 自分を信じて 明日を信じて そうさ飛び立とう 誰も見たことない世界へ》という歌詞があります。布袋さんはバンド~ソロ~ユニット、そしてまたソロへと活動のスタイルを変えている上、2012年には活動拠点を東京からロンドンへと移していますが、まさに布袋さん自身の生き方とも重なりますね。

“夢を見ようぜ”という歌を歌う以上は、僕自身も夢を見ていなければいけないと思いますからね。あと、自己を更新していきたいと思うんです。タイムもなければ、勝ち負けもない世界だけれども、1ミリでも更新できたかどうかは自分自身が一番分かりますよね。作品作りというのはそういうことだと思います。

布袋さんクラスのミュージシャンがこうして新作を発表し続けていること自体、すごく前向きなことだと思います。

いや。むしろそれが健全だと思いますけどね。オーディエンスがどう考えているかは分からないですけど、僕らにとってミュージシャンのあるべき姿というのは、今を生きるミュージシャンであるかどうかであるし、それは今のサウンドでしか出せない。まぁ、“ずっとそれだけやっていたら安泰だから、10年先まで何も心配しないでいい”って言われたら悩まないわけでもないだろうけど(笑)、それは退屈でしょうね。それじゃあ、胸を張れない。

過去だけに生き続けるのは布袋さん自身が耐え切れないし、満足できないだろうということでしょうか。

だってさ、友達に“コンサートにおいでよ。去年と一緒だけど”なんて言えないじゃん(笑)。やっぱり最新の布袋が最高であって、それを更新していきたいよね。僕のファンはそれを誇りに思ってくれていると思いますよ。あと、僕が憧れたDavid Bowieや良き日のロックスターたちも貪欲だったしね。毎作毎作、違う世界を見せてくれたし、そういうところでワクワクさせるのはエンタテイメントの大切なことだと思うよね。

OKMusic編集部

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