初の4日間開催となったLACCO TOWER主
催のロックフェス「I ROCKS」初日は
SUPER BEAVERと2マンで最高を更新

I ROCKS 2019 stand by LACCO TOWER初日 LACCO TOWER✕SUPER BEAVER 2019.05.12(SUN)@群馬音楽センター
 初の4日間開催という史上初の挑戦となったLACCO TOWER主催のロックフェス「I ROCKS 2019」の初日公演が群馬音楽センターで開催された。バンドの地元・群馬に密着したロックフェスとして、今年で6回目を迎えたI ROCKS。今年はLACCO TOWERも含めて過去最多の31組が出演するが、そのキックオフとなった初日は、LACCO TOWERの後輩であり、I ROCKS には欠かせない存在であるSUPER BEAVERとのダブルネーム公演だった。基本はフェス形式のI ROCKSがツーマン形式でライブを行ったのは2014年にback numberが出演したとき以来。お互いに対する愛情を全力でぶつけ合ったライブは、信頼と絆によって成長し続けてきたI ROCKSの理念を象徴するような一夜だった。
 会場周辺では、ライブが始まるまえからI ROCKSは始まっていた。開演の5時間前。13時に毎年恒例のラジオ体操がはじまると、群馬県のマスコットキャラクターぐんまちゃんや、地元のサッカークラブ・ザスパクサツ群馬のマスコットキャラクター湯友くんが、お客さんを出迎えてくれた。小腹をすいたときには、ピクニック気分を楽しめるI ROCKSテラスも開店。全国から集まるファンにI ROCKSを満喫してもらうために、LACCO TOWERが心を尽くした手作り感のあるおもてなしは、地域の協力なしには成立し得ない企画も多く、バンドが群馬と共に育んできた絆の深さを感じたりもした。
 開演5分前。「1年ぶりに言わせてください。おかえりなさい!」という塩崎啓示(Ba)の第一声から開会宣言が告げられた。「何が起こるかわからない。当たり前だけど、当たり前じゃない1年だったから、今日は本当に感慨深いI ROCKS 2019初日です。I ROCKSは僕らのすべてですし、この日のために生きてきたぐらいの気持ちを込めたフェスです。だから最後は笑って帰ってほしい。以上です!」と。さあ、いよいよライブがはじまる。
SUPER BEAVER
トップバッターはSUPER BEAVER。昨年、渋谷龍太(Vo)の体調不良により、出演をキャンセルせざるを得なかった彼らにとってはリベンジマッチのステージだ。このI ROCKS初日は、そんなビーバーが全国11ヵ所をまわる対バンツアー「都会のラクダ Tour 2019 ~今すぐお届け!本格、ラクダチェリーパイ!~」の初日という位置づけでもある。ビーバーのライブはまだまだ続くので、セットリストは記載せず、“敬愛する先輩=LACCO TOWER”との対バンに寄せる熱のこもったライブの模様を伝えたいと思う。
SUPER BEAVER
「ただいま! 愛すべきI ROCKSに帰ってきたぜ」。前のめりなテンションで力強く叫んだ渋谷の言葉には、そのステージに立つことができる喜びが溢れていた。SUPER BEAVERがステージから放つメッセージはいつも明快だ。人としてどんなふうに生きるべきなのか、命を燃やすことがかっこいいのか、後悔なく終わりを迎えられるのか。藤原”30才”広明(Dr)が繰り出す性急なビートにのせて、メインボーカルの渋谷だけでなく、上杉研太(Ba)、柳沢亮太(Gt)も声を重ね、バンドが一丸となって伝える想いはどこまでも愚直だった。
SUPER BEAVER
最初のMCでは、I ROCKSについて、「愛情が溢れているイベンドだって思ってます。めちゃくちゃ温かくてバンドっぽい。気持ちに嘘がなくて、そのまま気持ちが伝わってくる」と語りかけた渋谷。「このI ROCKSが3日間終わったときに言わせたい。“今日がいちばん最高だ”と。出演するバンドのなかで、俺らがいちばんI ROCKSを愛してるから!」。そんな言葉のあとに続けた楽曲たちには、目の前にいるのが自分たちのファンだけではないときにこそ燃えるビーバーのロックバンドとしての性(さが)が否応なしに滲み出ていた。と同時に、たとえ武道館や野音といったバンドの記念碑的な場所でのライブでも、ライブハウスでも、大型フェスでも、いつもびっくりするほど変わらない熱量の高さでお客さんと対峙し続けるビーバーが、先輩バンドの大切な場所で、自ずといつも以上に高まってしまう様子にぐっときてしまった。SUPER BEAVERというバンドを突き動かすのは、「場所」ではなく、「人」なのだ。そんなところはLACCO TOWERにも通じるものがあると思う。
SUPER BEAVER
 「LACCO TOWER、最初は怖かったよね(笑)。でも、あのバンドは優しい。気持ちがとても強い。音楽で何を伝えたいとかを超越して、愛情の大切さを教えてくれるのがLACCO TOWERです」。終盤にかけてのMCでも、LACCO TOWERを敬愛する気持ちを何度も伝えた渋谷。「あとでひっくり返されることは目に見えてますので。俺たちが先制攻撃をしてるからには、“やっかいな後輩を抱えてしまった”と思わせたいです。胸を借りて飛びこんでいきます!」と言うと、さらにライブの勢いを加速させていった。1曲演奏するごとに多くの言葉を詰め込むビーバーのスタイル。それはLACCO TOWERと同じように、ライブハウスで育ってきた彼らが、自分たちが伝えるべきことに真摯に向き合い、それを貫き続けると決めた覚悟の表れでもあると思う。そんな彼らの本気の歌に、客席にはそっと涙を拭うお客さんの姿もあった。「これからもI ROCKSには俺たちがいるからな。次は敬愛すべきLACCO TOWER、くれぐれもよろしくお願いします!」。先輩相手にも容赦ない“やっかいな後輩たち”は、全力のステージで後半戦をLACCO TOWERへと託した。
SUPER BEAVER
 いよいよLACCO TOWERの出番だ。5人はステージ袖で円陣を組み、気合を入れてからステージへと向かっていった。塩崎がI ROCKSと書かれたのぼりを、細川大介(Gt)がLACCO TOWERと書かれたのぼりを持ち、一人ひとりステージに姿を表すと、この瞬間を待ちわびていた客席から割れんばかりの歓声が湧き上がった。「今年もやってきたぞー!よく来たね」。松川ケイスケ(Vo)の絶唱が、集まったお客さんを自らの懐に迎え入れるように放たれると、「薄紅」からライブがスタートした。続けて、「喝采」へ。開放感に満ちたサウンドにのせた盛大なハンドクラップのなかで届けたのは、今日までみんなが背負ってきた“悲しみ”をすべて引き受けてやろうという、LACCO TOWERにしか歌えない包容力を持つ楽曲たちだ。「今日までいろいろあったやろ? 全部置いていっていいからな、ここがあなたの居場所です!」。序盤から会場には、泣きたくなるような祝祭感が満ち溢れていた。
LACCO TOWER
 「今年もこの言葉が言えて、うれしいです。おかえりー!」(松川)。「ただいまー!」(お客さん)。この日、まるで合言葉のように会場に何度も響きわたった「おかえり」と「ただいま」は、バンドの故郷が、そこにいるすべての人にとっても帰る場所になっているという揺るぎない証だった。重田雅俊(Dr)が渾身のちからで叩き出すリズムと、乱れ咲く真一ジェット(Key)のピアノが高揚感を加速させた「柘榴」、塩崎と細川が向き合いながら楽曲が持つ狂騒を演出した「奇妙奇天烈摩訶不思議」のあと、「傷年傷女」では真一ジェットがショルキーを弾きながら、客席へと乱入。「どこ行くねん? 早く戻って来い(笑)!」とつっこむ松川の表情は、めちゃくちゃ楽しそうだ。LACCO TOWERのライブは、そんな松川のフロントマンとして絶大な存在感が際立ちながらも、メンバー全員の総合力でその場所に独特の世界観を作り上げていく。それは誰ひとり欠けても成立しない。
LACCO TOWER
 「いま僕らが歌えるなかで、いちばん今日に相応しい曲をもってきました」と紹介したのは、最新ナンバー「夜明前」だった。軽快なスネアのリズム。まさに“夜明け”を想像させる躍動感のあるバンドサウンド。その歌とリンクするようにステージには三日月が浮かび、電飾が星空のようにメンバーの頭上に輝いていた。「知ってる人はどうぞ歌ってください」と続けた「雨後晴」では、「辛かったやろ? 出してこい!」と言って、会場に特大のシンガロングを巻き起こした。かつてのLACCO TOWERのイメージと言えば、人間の心の闇を抉るような刹那的な楽曲が得意なバンドという印象が強かった。いまも彼らの本質はそこにあると思う。だが、最近のLACCO TOWERの曲は、だからこそ歌える希望の色合いも強くなってきている。クラシカルな真一ジェットのピアノソロからつないだ「怪人一面相」のあとの「火花」もまた、悲しみの奥にある未来を高らかに歌い上げる歌だった。
LACCO TOWER
「やばい……気絶するぐらい楽しい!」。ラスト1曲を残して、そんなふうに喜びを爆発させた松川。「もともとI ROCKSを立ち上げたときに、身の丈以上のことをしたくなかった。自分たちが最高だと思えるバンドを呼んで、自分たちの地元で一緒に安心し合える居場所を作りたかった。だから、飛び級もドーピングもせずに実直にやってきたつもりです」。さらに、「たまたま同じような音楽が好きで、たまたまギター、ベースを好きなやつがいて、たまたまピアノを弾けるやつがいて、たまたま行き場のない力をドラムにぶつけるやつがいて(笑)、たまたま歌える俺がいて。そんな5人がたまたま同じ時代に生まれて、その音楽をたまたま好きになったみんながいて、こんな天文学的な数字は奇跡以外何でもないと思います。そんな奇跡をみんなと一緒に歩いていけているのが本当にうれしいです」「I ROCKSを愛してくれてありがとう!」と伝えると、会場は長い長い拍手に包まれた。そして、本編のラストを飾ったのは「遥」。ひとつの“さよなら”を再会の約束へと変える切なくも強い意志を込めたミディアムテンポは、まだ幕を開けたばかりの2019年のI ROCKS初日を締めくくるのに相応しい曲だった。
LACCO TOWER
LACCO TOWER

 アンコールでは、メンバー全員が一言ずつ挨拶をした。「今日は今日しかなかったでしょ?」(重田)、「今日僕らが言いたいことは、フェスを感じたことで全部伝わったと思います」(細川)、「本当におかえり! ビーバーもおかえり!」(真一ジェット)、「毎回これ以上ないって思うけど、越えましたね。今日は泣かないで、笑顔で帰ろうと思います」(塩崎)と、それぞれが“らしい言葉”で感謝の気持ちを伝えると、最後はI ROCKSのテーマでもある「星空」で終演。SUPER BEAVERのメンバー全員もステージに立ち、ゆっくりと左右に揺れながらシンガロングを巻き起こしたフィナーレは、“最後は笑顔で帰ってほしい”と、開会宣言で伝えていた塩崎の願いが予想を超える純度で実現した瞬間だった。
LACCO TOWER
LACCO TOWER
 なお、アンコールではLACCO TOWERは今年の8月21日にフルアルバムをリリースすることを発表した。「いまの僕らを詰め込めたアルバムになっています」と期待感を煽った最新アルバムには、この日披露された最新ナンバー「夜明前」も収録されるという。そして、引き続きI ROCKSは6月7日(金)、8日(土)、9日(日)に、同じく群馬音楽センターでフェス編を開催する。LACCO TOWERが心から一緒にライブをしたいと思う仲間たちが集結する3日間は、ビーバーと迎えた初日と同じように、それぞれのバンドが貫く信念と、LACCO TOWERとの絆が浮き彫りになる熱い3日間になるだろう。
LACCO TOWER

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