『南から来た十字軍』はルーラルで
骨太のフュージョンを提示した
クルセイダーズの傑作

ソウルやファンクをバックボーンに持つ
ジャズ・クルセイダーズの音楽

クリード・テイラーは、クラシック、ポップス、ロックなどをジャズ側からアレンジするというスタンスであったが、61年にテキサスから登場したジャズ・クルセイダーズは、黒人らしいファンキージャズを中心にしたジャズグループであった。60年代中頃からはレイ・チャールズやジェームス・ブラウンらのグルーブ感覚も取り入れ、より泥臭くアーシーなサウンドに変化していく。不変のメンバーはトロンボーンのウェイン・ヘンダーソン、サックスのウィルトン・フェルダー、ドラムのスティックス・フーパー、ピアノのジョー・サンプルの4人で、パーマネントなベーシストは当初からいなかった。ただ、ジャズ・クルセイダーズ時代は各パートで抜きん出たミュージシャンはおらず、気心の知れたメンバーのアンサンブルの妙が売りのグループであった。

クリード・テイラーが生み出す音楽は、白人ならではの洗練されたものであり、クルセイダーズはそれとは対照的に黒人音楽をベースにしたところに、ファン層の違いがあると思う。70年代半ばの日本の音楽嗜好で言えば、ポップスファンの多い関東ではCTI系が好まれ、ブルースやR&Bファンの多い関西ではクルセイダーズやスタッフの音楽が好まれていた。

70年にリリースされたジャズ・クルセイダーズ名義では最後となるアルバム『Old Socks, New Shoes』は、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「サンキュー!」やブルック・ベントンの「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」、ビートルズの「ゴールデン・スランバー」、クルセイダーズのライヴでは定番の「ハード・タイムス」「ウェイ・バック・ホーム」を取り上げるなど、すでに彼らの雑食性が表れた佳作となっている。この頃からジョー・サンプルは、彼のトレードマークとなったエレクトリックピアノを弾いている。

ジャズ・クルセイダーズから
クルセイダーズへ

71年にはジャズ・クルセイダーズからクルセイダーズに名義変更し、新たなスタートを切る。転機はブルー・サム・レコードに移籍してからだ。ブルー・サムは、ボブ・クラスナウ(ロックンロールの殿堂を設立したことで知られる)と敏腕プロデューサーのトミー・リプーマによって設立されたレコード会社で、CTIと双璧をなすフュージョンの新興レーベル。特にトミー・リプーマは70年代においてはクリード・テイラーのライバルであり、ニック・デカロ、ジョージ・ベンソン、アル・ジャロウ、マイケル・フランクス等々、素晴らしい作品を数多く残している名プロデューサーだ。

ブルー・サムに移籍したクルセイダーズは、これといった決定打を出せなかったが、それはベーシストのパーマネントメンバーがいなかったからかもしれない。クルセイダーズには、なぜずっとパーマネントのベーシストがいないのか? それはサックスのウィルトン・フェルダーが誰よりもベースが上手かったからだと僕は思う。彼がセッションで参加する時はサックスよりもベースのほうが多く、特にロックのアルバムが多いが、どれも素晴らしいベースを披露している。ロン・デイヴィーズの『UFO』、スティーブ・ファーガソンの『スティーブ・ファーガソン』、アル・ジャロウ『グロウ』などでのベースプレイは、ヴォーカルを際立たせるいぶし銀のような名演奏だ。

OKMusic編集部

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