ロイヤル・バレエ『ドン・キホーテ』
出演の金子扶生にインタビュー~英国
ロイヤル・オペラ・ハウス シネマ シ
ーズンにて5月17日より公開

英国ロイヤル・バレエ団ファーストソリスト金子扶生は近年数々の作品に主演して躍進中だ。金子がソリスト役のドリアードの女王を踊った『ドン・キホーテ』全幕が2019年5月17日(金)~24日(木)「英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン 2018/19」の一環としてTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開される。なお、2019年6月に同バレエ団が来日し、この『ドン・キホーテ』を上演する(下記「公演情報」参照)ので予習にもうってつけだ。「SPICE」では、4月末、金子に国際電話で単独取材を実施し、入団後の軌跡や『ドン・キホーテ』の印象、今後の展望を聞いた。
Fumi Kaneko in rehearsal for Don Quixote, The Royal Ballet   (c) 2019 ROH. Photograph by Andrej Uspenski
■物語に惹きこむ力の凄み
――ヴァルナ国際バレエコンクールで金賞(2008年)、モスクワ国際バレエコンクール(2009年)とジャクソン国際バレエコンクール(2010年)で銀賞を受賞し、大阪の地主薫バレエ団を経て2010/11シーズンに英国ロイヤル・バレエ団に入られました。入団の経緯を教えてください。
ジャクソンの時に当時の芸術監督モニカ・メイスンの友人の方から「ロイヤル・バレエに映像を送ってください」と言われ、それがきっかけで入ることになりました。ロイヤル・バレエは(吉田)都さんの『くるみ割り人形』などDVDをたくさん見ていて大好きだったので、夢の中にいるような気分になりました。すごくラッキーでした。
――実際にロイヤル・バレエに入られての印象はいかがでしたか?
「私、バレエを知らなかったのかな?」(笑)と思うくらい全然違う世界で、カルチャーショックを受けました。日本にいた時から“演劇の国”らしく演劇面に力を入れているのが特徴だと思っていましたが物語に惹きこむ力が凄い。カンパニーのすべてが物語に入りこんで皆が俳優・女優みたいです。
――本拠地のあるコヴェント・ガーデンはやはり特別な場所ですか?
もちろんです。私たちは夏のツアー以外一年間丸々ロイヤル・オペラ・ハウスで踊っているので、やっぱり「家」のような感覚ですね。
DON QUIXOTE. Artists of The Royal Ballet in Don Quixote (c) ROH Johan Persson (2013)
■つらい辛抱の時期を乗り越えて
――ファーストアーティスト(2012年)、ソリスト(2013年)、ファーストソリスト(2018年)と昇進されました。しかし一時期怪我が重なって全幕作品主演が決まっていても降板されるなど苦しかったかと思います。その時はどのような気持ちでしたか?
2回怪我をしてしまいました。膝を怪我して1年間リハビリをして還ってきて、やっと良いシーズンになったと思ったら反対側の膝を痛めて、また1年間リハビリをしました。精神的に本当にきつかったのですが、自分のモチベーションを上げてポジティブにいくことが支えでした。みんな凄くがんばっているダンサーが周りにいて、自分は踊ることができないのがつらかったです。
――『くるみ割り人形』のシュガープラムフェアリーを皮切りに古典全幕や現代作品で主演する機会も増えています。なかでも『冬物語』の王妃ハーマイオニー役は大抜擢だったのではないでしょうか。踊られていかがでしたか?
深い物語ですがつらいです。夫(シチリア王リオンティーズ)がお腹の中にいる子供を彼の子ではないと言って正気を失ってしまうのですが、それはやはりハーマイオニーにとってつらいと思います。でも音楽(ジョビー・タルボット)と振付(クリストファー・ウィールドン)が全部持って行ってくれるので、演じているというよりも生きているという感覚で踊りました。
――シェイクスピア原作、スタッフもイギリス勢を軸に固めたバレエで、ローレン・カスバートソン、クレア・カルバートら英国のバレリーナが主に踊っている役を金子さんが任されたのは高評価の証ですね。芸術監督(ケヴィン・オヘア)や指導にあたる先生方から日頃どういった点を褒められますか?
最近はミュージカリティつまり音楽性がいいと言われます。あとテクニックもあるけれど上半身の動きがいいと褒めていただけることが多いですね。
Don Quixote. Artists of The Royal Ballet  (c) ROH, Johan Persson, 2013
■バレエ団が一丸となる『ドン・キホーテ』
――5月17日(金)より日本で「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19」で『ドン・キホーテ』が上演されます。元プリンシパルでキューバ出身のカルロス・アコスタによる追加振付による版です。金子さんは主役のキトリ、キトリの友人、ドリアードの女王を踊った経験をお持ちです。アコスタ版の魅力をお話しください。
ロイヤル・バレエはケネス・マクミランやフレデリック・アシュトンの作品を再演することが多いのですが、これはカルロス自身のすぐ側で創りあげた作品です。カルロスの愛情がこもっていて、彼がどういう『ドン・キホーテ』を創りたいのかをダンサーたちはしみじみ分かっています。バレエ団が一つになって創り上げる舞台です。
――今回の収録舞台では第2幕の森の場面に登場するドリアードの女王を踊られています。
凄く難しいんですよ! たった2分間舞台にいるだけなので見た目には分からないかもしれませんが、急に出てきて難しい踊りをしなければいけません。キトリだと登場してから物語に入っていきますが、ドリアードの女王はいきなり踊らなければいけないんです。だから緊張しましたが、何回も踊るうちにどんどん楽しめるようになりました。
■演劇的で感情表現のある役を踊りたい
――5月にはシディ・ラルビ・シェルカウイの新作『メデューサ』を控えています。
ギリシア神話を基にしていて美の神アテナを踊ります(セカンドキャスト)。クラシック・バレエではなく、私が見たこともないようなパ・ド・ド・ドゥがあったりするカッコいい作品です。
――今後踊ってみたい役はありますか?
たくさんありますが、ロイヤル・バレエにいるので演劇的な感情表現のあるバレエを踊りたいです。『マノン』(マクミラン振付)や『オネーギン』(ジョン・クランコ振付)の主役のような役柄です。特にマクミラン作品を踊ってみたいです。
Don Quixote. Artists of The Royal Ballet  (c)ROH, Johan Persson, 2013
取材・文=高橋森彦

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