ロックの進化に貢献した
ムーディー・ブルースの
絶頂期の作品のひとつ『童夢』
コンセプトアルバム
アルバムに収録されるのはだいたい10〜12曲だから、シングルヒットが見込まれるアーティストの場合には2、3曲のヒット性がある曲(ラジオで紹介しえもらうため、3分から長くても4分程度にしておく)をアルバム内に適度に分散させておく。シングルヒットを考慮しなくてもいいアーティストの場合は一曲一曲が長くても支障はなく、アドリブ演奏が多いアーティストの場合には、LP片面で1曲のみという場合もある。いずれにしても多くのアルバムにおいて曲と曲の間に関連はなく、それぞれ独立した内容を持っていた。
ところが、この『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』は収められた7曲が全て“ある人の1日”をテーマにした内容が歌われており、ひとつのコンセプトをもとに収録曲は書かれているのである。この作品はクラシックとロックを融合させることと、それに加えて全体のテーマに沿って曲同士が相互に関係し合うという、ふたつの重要な要素を持っていたのである。当時、ロック界では非常に珍しい手法でこのアルバムは制作されており、それは画期的なことであった。
独自の音楽表現を獲得する時期
68年にリリースした3作目『失われたコードを求めて(原題:In Search Of The Lost Chord)』(全英チャート5位)から、アルバムジャケットのアートワークはフィル・トラバースが手がけ、トニー・クラークがプロデュースすることになった。これは4作目の『夢幻(原題:On The Threshold Of A Dream)』(‘69)(全英チャート1位)、5作目『子供たちの子供たちの子供たちへ(原題:To Our Children’s Children’s Children)』(’69)(全英チャート2位)、6作目『クエスチョン・オブ・バランス(原題:A Question Of Balance)』(‘70)(全英チャート1位)、本作『童夢』(’71)(全英チャート1位)、8作目の『セヴンス・ソジャーン(原題:Seventh Sojourn)』(‘72)(全英チャート5位)まで変わらず、この時期にリリースされたアルバムはどれも甲乙付け難い秀作で、ムーディーズの絶頂期にあたる。ソングライティングは全員が担当しているものの、最終調整はメンバー全員で行なっているのだろう、ひとりで書いているような統一感がある。