MARCHOSIAS VAMPの
『乙姫鏡』に刻まれた
完成されたグラムロック・
バンドのスタイル
あらゆる面において完成していたバンド
《ちょっと気が強い QUEEN BEE/振り向くな UNDER THE MOONBEAM/俺ときたら まるでジョーカーみたいに/心は海の底》(M3「悲しみの略奪者」)。
《蜃気楼の迷路の中 はかない夢の跡/戯れるままに lonely,lonely cry…》《操られたピエロは 暗やみのなか/空回りする糸をはじくだけ/とてもつらい時の様に/眠り そして夢に落ちる》(M4「LONELY CRY」)。
《竪琴を抱いて ただ一人 world’s endを歩いてる/知りたい事を追い過ぎて 瞳は遠くをながめてる》《インディアンの秘境を荒らし 奇妙な部屋で過ごしていた/愚かなロマンスだけが残り いつだって上手く行くとは限らない》(M6「CRY OUT YOUR NAME」)。
これらのフレーズがキャッチーなメロディーに乗っているというのは、構造としては1990年代後半のビジュアル系に近いのではないかと思う。
アルバム『乙姫鏡』収録曲からザッとMARCHOSIAS VAMPのサウンドを分析してみたが、やはりこの時点でバンドはあらゆる面において完成したことは間違いない。いくらそれまでキングであった、たまが優秀だったとはいえ、彼らはそれに拮抗した存在であって、15代目イカ天キングとなり、そのまま5週勝ち抜いて4代目グランドイカ天キングになったことは、今、アルバム『乙姫鏡』を聴き直しても当然の帰結だったことが分かる。
その一方で──アルバム『乙姫鏡』はインディーズながら当時としては異例のチャート初登場59位を記録した上、1990年10月にはメジャー進出し、アルバム『IN KAZMIDITY』をチャートベスト10内に叩き込んだものの、その後はヒットに恵まれずに、残念ながらMARCHOSIAS VAMP は1996年に無期限活動停止を発表した。結成が1985年だったので、その時点で10年は経っており、インディーズも含めて9枚ものアルバムを制作しているから、もしかすると、やり尽くした感はあったのかもしれないけれど、今もいいバンドを失くした感は否めないし、もうひと花咲かせてほしかったという思いは拭えない。
TEXT:帆苅智之