L→R 楢原英介(Gu&Syn&Violin)、アヒト・イナザワ(Vo&Gu)、有江嘉典(Ba)、中畑大樹(Dr)

L→R 楢原英介(Gu&Syn&Violin)、アヒト・イナザワ(Vo&Gu)、有江嘉典(Ba)、中畑大樹(Dr)

【VOLA & THE ORIENTAL MACHINE
インタビュー】
場所を問わず、ここではない
どこかへと誘う間口の広い一枚

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE(以下、VOLA)のニューアルバム『Transducer』をまずは何の先入観も持たずに聴いてほしい。きっと驚くだろうから。5年振りの今作は、良い意味で分かりやすく伝わりやすく、幅広い人に共有と共存感を与えてくれる一枚。これまでとは種の違う高揚感や至福感を与えてくれる8曲だ。そんな今作についてアヒト・イナザワ(Vo&Gu)と楢原英介(Gu& Syn&Violin)に話を訊いた。

より聴き手に同じ景色や想いを
共有してほしかった

これまでのVOLAのライヴを観ている方はどことなく予想ができていたんでしょうが、前作ミニアルバム『Regalecus russelii』(2014年10月発表)以降いきなり今作に触れた方はかなり驚きそうな一枚になりましたね。

アヒト
かもしれません。ある意味かなり変化しましたから(笑)。でも、これが自分的には自然な流れで。実は前作を出す辺りから落ち着き出してはいたんです。それ以降さらに落ち着いて。今となっては現在の環境にすごく馴染んだ自分がいたり。

かなり分かりやすく、伝わりやすくなった印象を持ちました。

アヒト
当初は特にコンセプトもなかったんです。歌詞の内容も自分の気持ちだったし。気付けばあのような感じになっていたという。

そこに至ったのは何が要因だったんですか?

アヒト
福岡に戻って、音楽とはまったく関係のない仕事をして生活を送っていたことが大きいです。今まで音楽しかやってこなかった人生だったんで、ジョブチェンジしていくのもなかなか大変で。歳も40歳直前からでしたし。

今はドライバーをしながら音楽活動をされていらっしゃるんですもんね。

アヒト
そうなんです。その中で自分が感じたことを少しずつ少しずつ曲にしていったらアルバムができるぐらいの曲数できたんで、まずはそれをメンバーに聴いてもらったんです。そこで楢原くんが“もうちょっとボリュームを増やしたい”と提案して、新たに4曲作ってくれたんです。

アヒトさんに関しては向こうに帰られて音楽以外の仕事をやられ、そこで何か見えたことがあったり?

アヒト
発見というよりかは、むしろ逆で。それこそ削ぎ落としていく生活でした。音楽だけをやっていた頃は変にポーズや恰好ばかりを気にしていて。背伸びをしたり、心に鎧を付けていたり…。向こうで暮らすうちに、それらが段々薄らいでいったんです。変に自分を作ったり飾ったりの必要がなくなり、“もう、素のまんまで充分じゃん”って。それが大きいです。

でも、それって結構勇気がいったのでは? そのカッコ付けたVOLAが好きなファンもおられたでしょうに。もしかするとその方々が離れていく懸念もありますし

アヒト
その辺りはまったく心配なかったですね。VOLAのライヴのペースも年間5~6本でしたが、毎回来てくれるお客さんとかは、その変化を承知してくれてる信頼もあったし。明らかにそっちに向かったほうがいい顔をしてくれてましたから。逆に新しいお客さんは今作から好きになってもらえば良かったし。この変化に対して違和感を覚えて離れていくんなら仕方ないことですから。いわゆる“来るもの拒まず去る者追わず”でした。

その辺りは、ある種自分たちの信念や確固たる自信がないと踏み切れなかったでしよう。“俺はこれがやりたいんだから、これを発信していくんだ!”的な。

アヒト
もう、それすら考えてませんでした。まさに素の状態で。

そんな中、アヒトさんが送ってきたデモ群に対して、楢原さんはどのようなリアクションをされたんですか?

楢原
とりあえず何でも受け入れて、本人がやりたいことを具現化してあげました。なので、アヒトさんから来たものに関しては、まずはほぼその再現をして返しましたね。で、これが面白い話で。デモで“まぁ、これでいいか”と思っていても、いざレコーディングの際になると、指定したことだけやっていても物足りなくなってきちゃうんですよね。

その結果?

楢原
結局レコーディングの最中に僕ひとりだったことをいいことに、ガンガン自分のギターを足しちゃって(笑)。もし意図と違ってたら、そこはミュートしてもらえばいいぐらいの気持ちで返したんです。指定されたものに対して“これじゃヤベェぞ”“これじゃ盛り上がらねぇぞ”と足していったというか。

逆に楢原さんが作った曲も4曲ありますが、その辺りはいかがでしたか?

楢原
逆に僕の曲はアヒトさんと考えもコンセプトも違うものにしようと。もちろんバンドサウンドありきではあるんですが、4人の集合体ってスタイルではなく、いわゆるヴォーカルをきちんと楽曲の中心に添えて、それを演奏で引き立てる。各曲そんなイメージがありました。メロディーや歌をより活かす演奏。いわゆる杉山清貴&オメガトライブなら、オメガトライブみたいなバックバンド的な意識でいいかなって。ヴォーカルをフォーカスしてなんぼみたいな。僕だと今のモードはJ-POPだったりするので、そのようなJ-POP的アプローチをあえてVOLAでやってみる。そんな感覚でした。なので、実はアイドルに提供しようと思って作っていたストック曲を、あえてアヒトさん用にアレンジをし直して歌ってもらった曲もありましたから。“オルタナティブでニューウェイブなこの人に、こんなタイプを歌ってもらったらどうなるんだろう?”みたいな。それこそ今回はかなりアヒトさんを使って遊ばせてもらいました (笑)。
アヒト
もう、いいおもちゃですよ(笑)。

でも、それがゆえの新境地も多数見受けられます。以前は歌やメロディーも楽器の一部や記号的だったものが、今作ではより歌として成立してますもんね。

アヒト
これに関しては、今作において作り方を変えたのが大きかったです。今までは浮かんできたメロディーに対してエセ英語みたいなものを乗っけて、あとからそこに近い日本語を当てはめていってたんですが、対して今回は歌詞も字面で見て。そこで意味が分かったり伝わったりとか、自分が書いた意図とは違うかもしれないけど、こうも読み取れるよね…みたいにきちんと歌詞の内容として伝わるものにしたい気持ちは一番にありました。メロディーはメロディーでこれまでよりも良いメロディーができたんで、そこにしっかりとはまる日本語を意識したんです。

その歌詞を伝える重要性に至ったのには何かあったんですか?

アヒト
より聴き手に同じ景色や想いを共有してほしかったからです。なので、これまではわりとフワッとした感じで書いていた歌詞も、キュッと明確化させました。いわゆる“解釈はお任せしますが、自分が伝えたい本質はこうなんですよ”みたいな。

確かに今回は歌詞もよりビジュアル化されているものが多いです。光景的なものもそうですが、視覚的にも歌詞カードの漢字の当てはめ方による、より明確にビジョンを浮かばせる感じとか。

アヒト
今は福岡に帰って普段はトラックを運転しているんで、そこから見える景色や、それを通して浮かんでくること…車って密室だけど、窓の外には景色が広がっていて、ある意味オープンな気分になれるスペースでもあって。そこにひとりでいるといろいろなことも考えられて。あと、移動しているからいろいろな風景も目に入ってくる。季節の移り変わりや景色の変化、その辺りの機微をより感じ取れて、それを上手く言葉や歌にしたい気持ちはありました。
L→R 楢原英介(Gu&Syn&Violin)、アヒト・イナザワ(Vo&Gu)、有江嘉典(Ba)、中畑大樹(Dr)
アルバム『Transducer』

OKMusic編集部

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