CHAIの発想力の飛び方が尋常じゃない
という事が顕著に表れた2ndアルバム
『PUNK』

一昨年10月に1stアルバム『PINK』をリリースして、今年2月に2ndアルバム『PUNK』をリリースしたCHAI。初インタビューとなった昨年5月リリースの3rdEP「わがまマニア」の時以来、二度目のインタビュー。東京を中心に既にたくさんのインタビューを受けた後なので、まずはインタビューそのものについて話してみた。後、CHAIは洋楽の香りがして、明るく自由に楽しく活動してるイメージが大半な気がするが、個人的にはしっかりと悩みや悲しみ怒りと向き合った上で、ポップな表現に消化してる誠実な人たちというイメージが強い。自然な流れで自問自答という話題になったので、改めて、その意味合いについても掘り下げてみている。収録楽曲「カーリー・アドベンチャー」に顕著に表れているが、今まで以上にコンプレックスの肯定からの飛んだ発想が凄すぎる。前述の流れではないが、もちろん能天気な訳でも無く、しっかりと自分たちの中で消化した上での事である。個人的には、CHAIの未来予想図についても気になっていたので、そのあたりの話が聴けたのも興味深かった。是非とも読んで頂きたい。
CHAI 撮影=渡邉一生
――アルバムがリリースされると、こういうインタビューが本当に多くなりますよね。たくさん東京でインタビューを受けてきたと思いますけど、今日は大阪でたくさん取材を受けますよね。僕が言うのも変ですけど、大変じゃないですか?
マナ・ユウキ:ありがたや~(笑)。
ユウキ:でも、大阪の人はキャラが濃いいから、明るくておもしろい!
――ハハハ(笑)。ただ、どうしても、同じ質問が多くなるじゃないですか? それは仕方ない事ですけど、こちらも同じ質問を受けてきただろうなって思いながら、質問してるんですよ。
ユウキ:「同じ質問になるよね~」と思いながら答える(笑)。こっちも段々、答えるのが上手になる。
マナ:うんうん、一緒だね。
ユウキ:予想外の質問は特にないよね。
マナ:だから、インタビューを受けていく内に、ちょっとずつ自分の中でまとまってくる。
――これを言っちゃお終いですが、伝えたい事はアルバムに全て詰まってるわけじゃないですか。
マナ・ユウキ:そうだよ(笑)。
ユウキ:全部詰まってるよ。
マナ:今でも、そんなに取材に慣れてないしね。
ユウキ:(取材は)得意ではない。(アルバムを)聴いてもらって、わかってもらえるなら、それが一番かな。
――そうですよね。でも、直接会って聞けるなら、聞きたい事は、やはりあるんですよ。例えば、1stアルバムは『PINK』で、今回の2ndアルバムは『PUNK』ですよね。「I」が「U」に変わったとか思うんですよ、もしかしたら深読みかも知れないし、インタビュアーはみんな感じたと想うんですけど。
マナ:「I」と「U」! 今回、インタビューの人が凄く言ってくれた! みんな頭いい~!
ユウキ:凄い~! 感激した! でも、そこまでは考えてない(笑)。
CHAI 撮影=渡邉一生
――やっぱり(笑)。「I」=私、「U」=YOU=あなたみたいな事も我々インタビューする側は考える訳ですよ。
マナ:私からあなたへみたいなね! それも言われた(笑)。
ユウキ:凄いよね! でも、そこまでは考えてない(笑)。
――そこまで言われたら気持ちいいです(笑)。『PUNK』も音楽性ではなく、精神性での『PUNK』ですもんね。
マナ:そうそう、マインドのパンク。生き方をパンクにするのが、2019年の目標だから。もっとわがままに生きて、なりたい自分になりたいなって。
ユウキ:SUPERORGANISMの海外ツアーの前座をした時に、そう思ったんだよね。
――『PUNK』と決まるまでの、アルバムタイトル案ってありましたか?
マナ:正直、韻を踏む事しか考えてなかった。
ユウキ:『PINK』の後だから、『FUNK』とか『WINK』とか。
マナ:いっぱい案は出たけどね。まぁ、いつも絶対最後に(アルバム)タイトルを付ける。(メンバーで)よく喋ってからね。
――結果、『PUNK』って良いタイトルになりましたよね。
マナ:『PUNK』というタイトルって事より、パンクな生き方をするって事がかっこいいね~ってなって。人間らしいしね。
ユウキ:海外のインタビューの人に「CHAIはパンクバンド」と言われて。やっぱ、インタビューの人は凄い! で、それを(アルバムタイトルに)もらった! 吸収して吐き出す(笑)。
――SUPERORGANISMとの海外ツアーは、色々と考える本当に良い機会になったんですね。
マナ:(SUPERORGANISMの)オロノを観て、凄く想った、そういう事を。その感じは音楽にも出ているし、かっこいい。
――でも、僕は、そういうパンクでわがままな生き方をCHAIは出来てると思ってたんですよ。
ユウキ:うん、確かにちゃんと出来てると思ってたけど、まだ足りてない。ありのままで生きてるのがオロノ。実現できてるというか、そのままで生きてるのがかっこよすぎる。叶わない。
マナ:そんな事を人を観て感じたのは初めてだった。
ユウキ:SUPERORGANISMは、生活の中から(音楽を)自然に表現しているから。CHAIはステージでは衣装だったり、真逆なんだよね。
CHAI 撮影=渡邉一生
――確かにSUPERORGANISMと比べると、CHAIは生活と音楽の切り替えはあるかもですね。
マナ:私たちは音楽をする時に一番したい事がライブだから。でも、SUPERORGANISMは朝ごはんを食べたりとかっていう、生活の流れに自然に音楽が、ライブがある。
ユウキ:ツアーの最中でも、ツアーバスの中で音楽を作り始めたりするから。今思いついた事は、今やるみたいな。CHAIだと、そうはならないから。スタジオも取らないといけないしね。
――そら、そうですよね。実際にライブを一緒にやってみて、前座とは言え、勝ち負けは意識しますよね?
ユウキ:(勝ち負けは)両方あるかな。
マナ:悔しいと想った方が(自分たちも)影響を受けられるしね。
ユウキ:悔しいくらいに(相手を)好きって良い事だから。
マナ:その感情はあった方がいい。凄い悔しかったしね。でも、落ち込んでもしょうがないよね。
ユウキ:そんな時は食べるよね! 「焼肉だ!!」って。で、寝る(笑)。そしたら、次の日から「よし!」ってなる。
マナ:食べながら、4人で凄い状態の愚痴を言うよね(笑)。
ユウキ:ストレスというか、悔しさを吐き出す!
マナ:その消化力は凄い! ひとりで抱え込むと崩れるから。
ユウキ:「めっちゃわかる!」、「だよね~!」とか言いながらね。4人で良かった!
マナ:最初、東京に住んだ頃は深夜に松屋でお持ち帰りしたのを、泣きながら食べたりしてから(笑)。
ユウキ:誰にも聴かせられない内容だよね(笑)。
――4人で悔しさ悲しさを共有できるって素晴らしいですよね。喧嘩も無いって事ですもんね。
マナ:喧嘩は本当に無い。
ユウキ:思ってる事は言い合うけど、「そうだね~」って受け入れられるから。
マナ:言い合っても、あっさりしてる。
――自分たちの表現を作品にして、その上、人の前に立つって凄い事だと想うんです、本当に。そりゃストレスだって、たくさんあるでしょうし。
マナ:人の前に立つって事は凄い良い経験だけど、色々あるよね。みんな、どうしてるのかな?
――CHAIみたいに吐き出して消化して前へ向けなかったら、休止したり、解散をするんでしょうね。
マナ:CHAIは解散する事は無い。表現していく事が今は音楽だけど、例えば遊園地を建てたいとか、そういう経営者的な事になったりはするかもだけど、このチームとしてやるから。
ユウキ:動物の愛護団体とかね。
マナ:ファッションの事とかね。ユウキは絵も描けるから!
――今回のアルバムもケースを開けて、中を見たら、ハートがあったりとか、本当に可愛くて。
マナ:可愛いよね!
――メンバーに相談したりしますか?
ユウキ:終わってから見せる。そしたら、みんな「可愛い!」と言ってくれて、満足する(笑)。
マナ:自問自答を繰り返している。
ユウキ:研究熱心なのかな?
――さっきの悔しさや悲しさの話もそうですけど、CHAIって良い意味で、そういう悩んだりして自問自答してるところが、こちらには見えないじゃないですか。
マナ:(悩んだり、自問自答する事が)無い訳ないから。でも、自然な流れだし、そういう事は。
ユウキ:やっぱりダークに見られるよりはポップに見らるれ方が良いから。でも、ポップに見られるためには自問自答をする。だけど、わざわざ言う事でもないから。
CHAI 撮影=渡邉一生
――曲単位の話もしたいのですが、僕は8曲目の「カーリー・アドベンチャー」が大好きでした。このかっこいいサウンドに、くせ毛がテーマの歌詞が載るというのも凄くて……。
ユウキ:CHAIは全部曲が先なんだけど、この曲は凄くCHAIの中で新しいし、クールだし洋楽チックでかっこいい曲だと思っていて。だから、かっこつけやすい壮大な曲だけど、歌詞はピンポイントの事を広めたくて。私の言いたいテーマにくせ毛があったんだけど、メンバーの中では私だけくせ毛じゃないので、そのコンプレックスに憧れてた。私からしたら、そのクネクネや湿気をキャッチ出来る事がかっこいいから! だから、トレジャーハンターじゃんって! あっけらかんとしてる! 歌詞に「すごい」って入れるのも、他には無いなって(笑)。
――確かに、そんな歌詞は無いですね(笑)。僕もくせ毛ですが、梅雨の時期にクネクネになる事をすごいと思った事ないし、何もキャッチした覚えも無いし、トレジャーハンター扱いされる事に正直驚きましたね(笑)。
マナ:くせ毛チームからしたら、「よく言ってくれた!」って! 私たちハンターなんだなって。アドベンチャーも広がっているんだなって(笑)。一番励まされたかな!
ユウキ:誰も思いつかない目線にしたくて。「ここまでのポジティブな解釈は無いだろ?!」と。「ドヤ!」みたいな。
マナ:果てしない世界にビックリした!!
ユウキ:一番笑いながら書いた。
マナ:主人公になった気分だよ!
――今までコンプレックスを肯定する楽曲はあったけど、ここま飛ばす楽曲は無かったんですよ。こんな応援歌は聴いた事ないですから。
ユウキ:応援はしたくないと思ってるから。聴いて、感じたままでいいから。後は、自分で選択して欲しい。ぶっきらぼうなんだよね。でも、押し付けたくないから。
――押し付けない応援歌だから、聴く側も信用できるんですよ。今日も本当にたくさん話が出来て嬉しかったです。ありがとうございました。
マナ・ユウキ:ありがとう!!
取材・文=鈴木淳史 撮影=渡邉一生

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