【ライブレポート】新たな時を刻み始
めた、Mari & Bux Bunny シーズン2

日本のロック史にその名を深く刻むレジェンド・シンガー、金子マリ率いるMari & Bux Bunny シーズン2が、3月5、6日に下北沢GARDENで新作リリース記念ライブを行った。
今回は、初日3月5日のライブをレポートする。

40年振りのオリジナル・アルバム『Mari & Bux Bunny シーズン2』に参加したのは、1974年の結成メンバーである金子マリ(Vo)、鳴瀬喜博(B)、難波弘之(Key)に、新たに土屋昌巳(G)、古田たかし(Dr)、玲里(Cho)、開発千恵(Cho)を加えた7人。豊富なキャリア、スキル、センスを備えた最高級ミュージシャンをずらりと揃えたライブは、新作から「The Haze And Tide」「幸せの足音」などを立て続けに披露し、序盤からヒート・アップしてゆく。
鳴瀬はトレードマークの強烈なスラップ奏法で観客を湧かせ、MCでは軽妙なトークで笑いを誘う盛り上げ役。難波は76年のファースト・アルバムで使ったというキーボードを操り、変幻自在の音色で楽曲をカラフルに染め上げる。しなやかで堅実な古田のドラムと、見た目もプレーも艶やかでグラマラスな土屋の存在感も頼もしい。若い二人の女性コーラスは、息の合ったハーモニーと爽やかな笑顔でステージを輝かせる。そして金子マリの、全身を使ってソウルを震わせる圧巻の歌声。名手名演、贅沢としか言いようのない時間だ。

70年代の楽曲も、新しいスタイルで生き生きと蘇った。ファースト・アルバムに収められ、新作で再録音された「夕焼けの詩」は、あの頃の面影を残しつつも、より緻密でプログレッシヴなソウル・バラードへと進化している。Mari & Bux Bunny シーズン2は、過去の再現では決してない。
今回のライブは二部構成に分かれ、第二部でも新曲をたっぷりと披露する。とりわけ、ミュージック・ビデオが作られた「Tic Tac Toe」の引き締まったリズムには、ダンス・ミュージックを聴く若いリスナーにもアピールする、普遍的な魅力がある。シンガーソングライターである玲里の楽曲をカバーした「インスタント・パーティー」の、レトロなファンク/ディスコ調の強烈なサウンドもとてもエキサイティング。70年代のBux Bunnyは、ロック、ソウル、ファンク、フュージョンなどを自由に取り込んだミクスチャー・バンドの先駆けだったが、現代のMari & Bux Bunny シーズン2の表現力は、幅と深みを更に増している。

もちろん、長年のファンが聴きたい代表曲も出し惜しみはしない。往年のBux Bunnyのライブを象徴するエモーショナルなバラード「それはスポットライトではない」を、言葉の一つ一つを慈しむように歌いあげる、ソウルフルな歌声が胸に沁みる。先にこの曲をレパートリーにしていた故・浅川マキが、金子マリの歌に感銘を受け、「この歌はマリのもの」と言ってその後は決して歌わなかったという、秘めたエピソードを語るMCに客席から感動の声が上がった。故・ジョニー吉長に捧げた新曲「Still Stands」も含め、このバンドに関わった全ての人々への思いを乗せ、バンドは今を生きている。
休憩、アンコールも含め、ほぼ3時間近くに及ぶロング・ステージだったが、後半になるにつれどんどん声のパワーが増してくる、金子マリの底知れぬエネルギーは驚異的と言うしかない。アルバム発売記念ライブはもう1本、3月22日に神戸・THE LIVE HOUSE CHICKEN GEORGEで行われる。それぞれに多忙なスーパー・バンドゆえ、その次はいつどこで見られるかわからないが、“シーズン2”は始まったばかりだ。再結成と言うより“新しいバンド”と語る金子マリの言葉通り、新たな時を刻み始めたMari & Bux Bunny シーズン2をぜひチェックして欲しい。

文◎宮本英夫
撮影◎キセキミチコ

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