DIR EN GREYのShinya(Dr) ソロプロジ
ェクト・SERAPHがライブ初披露

DIR EN GREYShinya(Dr)が、自身の誕生日である2月24日(日)、渋谷Mt.RANIER HALLにてソロプロジェクト・SERAPHのプレミアムショーケースを開催。当日のオフィシャルレポートが到着した。

2月24日、Shinya(DIR EN GREY / SERAPH)が自身の誕生日であるこの日、渋谷Mt. RAINIER HALLにて『Shinya 2019 Birthday Event & SERAPH Premium Showcase』を開催。2017年にシングルをリリースして以後、謎に包まれていたソロプロジェクト・SERAPHが、ついに神秘のベールを脱いだ。
Shinyaのバースデーイベントは昨年に引き続き2年目。昨年はNoGoDの団長をMCに招いてのトークイベントであったが、今年はSERAPHのショーケースライブとトークショーの二本立て。バースデーに加え、待望のSERAPH初披露ということで、幸運にもプレミアムチケットを引き当てたファンが早くから列を成していた。2017年にシングルをリリースして以降、一切音沙汰の無かったSERAPH。この日のステージは一体どの様なものになるのか、そもそもどの様なパフォーマンスを行うのか。誰もが胸が高鳴る気持ちを抱きながら会場に集まっていたことであろう。
会場に入りまず目を惹いたのは、純白の織物が包むステージに浮かび上がる、ゴールドがあしらわれたクリアのドラムセット。第一の位階の天使を意味するSERAPHの名の通り、幻想的な世界の始まりを想像させる。6人編成のストリングスが板付き暗転したステージには、天上世界の朝ぼらけをイメージさせる映像が投影される。美しく重なり合うストリングスによる序曲が激しさを増すにつれ、これから披露される未知のステージへの期待感、緊張感が会場を染め上げていく。楽曲の盛り上がりのピークに併せて、真っ白のライトに照らされたステージ中央には、純白の衣装を身に纏ったShinyaとMoa(Piano/Vocal)が悠然と立つ。SERAPHの文字を背に光に包まれた二人の姿は、まさに現世に降り立った天使のようであった。そのまま二人がドラムとピアノに座り、映画「霊眼探偵カルテット」オープニング曲ともなったイタリア語で“運命”を意味する楽曲「Destino」を披露。荘厳なオーケストラサウンドの中で、Shinyaのドラムが空気を切り裂くようにホール中に響き渡る。DIR EN GREYの重厚で轟音なバンドサウンドの中でも、埋もれることなくヌケて聴こえてくる、独特で手数の多いリズムカルなフレーズ感が更に研ぎ澄まされ、リズムパートと言うよりはメロディアスに主旋律を奏でているかの様に聴こえる。まさに“Shinyaのドラム”を一つ上の位階に昇華させているのではないだろうか。続けて披露されたのは「Abyss」。英語で“深淵”を意味するこの楽曲は「海底のみんなが忘れてしまった街の意識がまだ残っている、という話がテーマ」とのこと。激しいドラミングと徐々に煽るようなストリングスのイントロから始まるこの曲は、激しさの裏に、どこか切なさを感じさせながら、ドラム、ピアノ、そしてストリングスがせめぎ合い、一つの物語のように劇的に展開していく。その確立された世界観に、ホール全体は固唾を呑んで見入ってしまったのではないだろうか。
「Abyss」の激しく繰り広げられたアウトロの残響が、暗闇と静寂に飲み込まれていく中、突然「こんばんわ」とマイクを持ちMCを始めるShinya。普段のステージでは一切声を発することの無いShinyaだけに、ここまで張り詰めていた緊張感が一気に緩み、会場からは微笑みも。「次の曲はSauveurという曲で、フランス語で“救世主”という意味です。これもMoaさんがフランスにいる時に作ったそうです。ワルツな曲で、ヴェルサイユ宮殿とかそういう優雅な感じがテーマな曲です。」と本人による楽曲紹介から一転して優々たる三拍子の調べへ。ステージの背景のみならず、ストリングスの譜面台、Moaのピアノ、ドラムライザーには白の布が被せられ、さらに全員の衣装にいたるまでが徹底して白に統一されており、プロジェクターによって優雅な宮殿の映像が投影されれば、まるでその空間に浮遊し奏でる宮廷楽団のようなエレガントな世界に。Moaのボーカルがきらびやかに、そして麗しげに輝き、さらにその世界に華を添える。
「次の曲は、アイルランド語で“水”という意味なのですが、アイルランドをテーマにした物語があってそれをもとにして作りました。この曲は海岸沿いの人たちのお話で、静かな波とか荒れ狂う波とかを一曲にギュッと表現して作った曲です。」と「Uisce」を披露。ゆったりとしたMoaのピアノのリフとストリングスによる心地よい曲調だった幕開けも、一転して雷鳴のようなShinyaのドラムが轟く。さらにMoaのフルートがそれに応じるように激しく絡み合う。そんな荒々しいシーンも落ち着けば、Shinyaが優しくウィンドチャイムを鳴らし、再び美しい光景が広がる。そして最後はまた激しく、と組曲のように次々とドラマチックに展開する迫真の楽曲に、またホールは息を呑む。
Shinya(DIR EN GREY / SERAPH) 撮影=Lestat C&M Project
「ドラムの時は普段全く緊張しないのですが。今日はMCがあるせいでドラム叩いている間ずっと“次MCか……”と緊張してあたふたしています」「せっかく曲で世界観を作っても、MCでぶち壊しになるっていうね。どうしたものかと」と普段のライブとは異なり、曲終わり毎に1曲ずつ解説をいれる難しさに戸惑いつつも、会場はその都度アットホームな温かい空気に包まれる。本人の持つ柔和な空気感が成すものであろうが、先程までドラマチックにドラムを叩いていた人とはにわかに信じがたいほどのギャップである。「次の曲は皆さんが唯一知っているGénesiという曲で、これはギリシャ語で“創世記”という意味です。シングルでこれを出しているのですけど、はるか昔の一昨年の話で、やっと今日が初お披露目です。というわけで聴いてください、Génesi」と全てが初お披露目なSERAPHとその楽曲たちを丁寧に説明していく。タイトルの通り、SERAPHの始まりとして2017年の7月にリリースされたデビューシングルは、映画「霊眼探偵カルテット」の主題歌としても採用され、二階健監督のリリックビデオも同時にリリース。この日のショーケースではそのリリックビデオ映像も用いられ、幻想的な森の中に迷い込み、彷徨う天使の羽根を背負ったShinyaの姿が象徴的であった。MCで作られた温かい空気も、一度楽曲を演奏し始めれば、ShinyaとMoaの一音一音の深い説得力によって一変し、SERAPHの世界が創り上げられていく。
「次の曲で最後になるのですが、最後の曲は、Kreisという曲で、ドイツ語で“輪”とか“サークル”を意味しています。自然の摂理とか楽園を汚さないでね、というメッセージが込められています」と曲紹介の後、「Kreis」を披露。ラストにふさわしく、眩しいほどの明るい曲調が、どこまでも広がる青空のように雄大に広がっていく。一曲を通して、優しさを持ち、協調や調和を感じさせてくれる楽曲。Génesiに続いて透き通るような音色が、映画のエンディングのようにこの日のステージを締めくくった。
DIR EN GREYのステージのような、剥き出しの感情や圧倒的な熱量を感じられるステージとは対極で、着席スタイルが求められ、じっくりと楽曲を聴き込むSERAPHのステージ。しかしながらそれは、極上の芸術体験であり、エッジの効いたクラシックコンサートの様に豊かな時間であった。この日披露された6曲全てが、もちろん初披露の楽曲。それぞれが抽象度の高いテーマを持ちながら、共通して美しさや高潔さ、毅然さを感じさせ、同時に繊細さと激しさが共存するSERAPHのスケールの大きさと世界観を感じさせてくれる6曲であった。「本当はもっとたくさん曲があるのですが、ショーケースということでこのあたりで許してもらえたらなと」Shinyaが語る通り、これはあくまでSERAPHの一部。それでもその壮麗さの片鱗を遺憾なく魅せてくれたこの日のステージは、ここに集まった者の期待値を最大限まで拡張させてくれたことであろう。第一の位階の天使=<SERAPH>が、再びこの地上に舞い降りてくれる夜を心から期待したい。

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