『レイルウェイ』鷲尾修斗、遊馬晃祐
インタビュー「誰が見てもおもしろい
舞台」

2019年2月22日(金)から3月2日(土)まで東京・全労済ホール/スペース・ゼロで上演する舞台『レイルウェイ』。本作は、就活がうまくいかない中、唯一採用が決まった関東のローカル鉄道「関西(せきにし)電鉄」に就職した音無歌五郎の物語。入社したはいいものの、関西電鉄は廃線寸前。危機を乗り越えるため、音無は、起死回生のために、アイドルグループを作る作戦を考え出すが……。
5人組アイドルを演じるのは、鷲尾修斗、遊馬晃祐、滝澤諒、佐藤信長、宇佐卓真といった2.5次舞台を中心に活躍する俳優たち。劇中には、芝居のパートとアイドルのライブのパートがあり、歌とダンスが盛りだくさんのコメディー作品となる。
脚本・演出は、舞台『戦国無双』脚本や、舞台『宇宙戦艦ティラミス』演出など多岐にわたる作品を手掛けてきた米山和仁(劇団ホチキス主宰)。今回は稽古にのぞむ鷲尾と遊馬に、本作について話を聞いた。
——『レイルウェイ』への出演が決まった時はどんな気持ちでしたか?
鷲尾:大きい劇場での主演は初めてなので、緊張しています。でも、幅広い年齢層の出演者と共演ができるのは、素直に嬉しかったですね。
遊馬:キャストに修斗さんがいたので「よかった! 引っ張っていってもらおう!」と安心して稽古場に入りました!
鷲尾:晃祐は軽いんだよなぁ(笑)
遊馬:ちゃんと考えてますよ!(笑) 今回、課題がたくさんあるんです。まず、2.5次元じゃないオリジナル作品は初めてなので、自分で一からキャラクターを作らなきゃいけないこと。5人組のアイドルなので、それぞれの個性を強く出していかなければいけないこと。あと、会話劇がすごく難しいですね。相手に言葉が届いてなくて、ちゃんと会話が成立していないなと思うことがあります。
鷲尾:大丈夫だよ、普段会話してるじゃん。まぁたまにちょっと通じない時もあるけど……(笑)
遊馬:そうなんですよね! 僕、会話ができてないことがあるんですよね!
鷲尾:なんだよその自覚(笑)
遊馬:不器用なんですよ。歌とダンスもどっちかしかできない。踊っていると、どこで息を吸ったらいいのかわからないんです。この舞台でも成長したいです!
——役者としてはお互いにどんな印象ですか?
遊馬:舞台『BRAVE10』で共演した修斗くんは、すごく動けるし、アクションもカッコ良くて、器用で、存在感もあって、笑いもつくれる人。当時はあまり絡みがなかったので、今回ガッツリとお芝居して、違う面が見られるので嬉しいです。
鷲尾:僕の晃祐のイメージは「元気にジャンプしてるなー」って(笑)舞台上を飛び跳ねて、一生懸命で、すごく真面目で、稽古場に早く入ってアクションの練習をしていたりと頑張っているのを知っているので、良い印象のまま共演できています。ただ、ちょっとうるさい(笑)
遊馬:うるさい!? マジですか! そんなことないですよ!
鷲尾:そういうところな(笑)
鷲尾修斗
——楽しい舞台になりそうですね
鷲尾:この作品は、難しいことは考えずに気軽に観れる舞台です。グッズでオリジナルのペンライトがあるので、歌って踊るライブシーンでは一緒に盛り上がれますよ。
遊馬:稽古からすでにおもしろいよね! 稽古中も、出番じゃない時には台詞を覚えたいんだけど、みなさんの演技がおもしろいから見ちゃうんですよ。勉強にもなる。
鷲尾:先輩たちがすでに完成度が高いんですよね。とくに劇団ホチキスの皆様のことを、演出の米山さんがすごく信頼しているのがわかります。
——米山さんの演出はどうですか?
鷲尾:おもしろいです。米山さんの中にプランがあるのですごくわかりやすいです。そのうえで自由にやらせてくださり、役者の個性を見ながら「この人はこうした方がいいな」と取り入れてくれます。
2.5次元の舞台だと原作があるので簡単に変更できないですが『レイルウェイ』はオリジナル作品なのでいくらでも変えていける。こちらから出せば出すほど新しいものがうまれていくので、楽しいです。僕はとくに山﨑雅志さん(劇団ホチキス)との絡みが多いのですが、打ち合わせなく、思いついたことをやっているうちに、新しい芝居がどんどんうまれます。
遊馬:その場でどんどん変わるのには慣れないので、大変ですね。器用にこなせなくちゃとは思うんですけど、瞬発力が弱い。でも楽しんでいます。
鷲尾:あと、米山さんは、急に脱線して「僕、この前こんなことがあってね」とずっと話し続けているのがおもしろいです。
遊馬:みんなが注目しているからおもしろいこと言わないといけないと思ったらしいです(笑)話しやすい方ですし、僕と同じ岐阜県出身ということで親近感も湧いています。
遊馬晃祐
——もともと鉄道に興味はあったんですか?
遊馬:僕は全然興味なかったですね。だから『レイルウェイ』をきっかけに観察するようになりました。車内で運転席をのぞいたり、駅で職員さんを探したりしています。あと、ライブシーンの振付で「チャージ!」と言ってICカードを大きく振りかぶる動きがあるんですけど、駅で改札を通る時にその振付の動きをしちゃいます。
鷲尾:変な人だ(笑)
遊馬:そういえば、驚いたのが、電車のハンドルって回すタイプじゃないんだって気づきました。車のハンドルと違うのでびっくりしましたね。
鷲尾:前後か左右に倒すレバー式だよ! 『電車で GO!!』(ゲーム)やった方がいいよ!
遊馬:あっ、桃鉄(ゲーム『桃太郎電鉄』)もやってない! 修斗くんにおすすめされたのに!
鷲尾:桃鉄ってすごいからね! 駅の名産も出てくるから駅弁にも詳しくなるし、新作ゲームがでるたびに商品がアップデートされるし、全国の地理の勉強にもなるし。
——アイドル5人組はみんなが異なる“鉄道オタク”だそうですね。それぞれどんなポジションなんですか?
鷲尾:僕が演じる「音無(おとなし)」は、たぶん一番普通の人。2浪して就職するんですが、今時の、まっすぐで、素直で、純粋な男の子。みんなの言うことを「そうなんだ」とそのまま受け入れるから、巻き込まれていく。
遊馬:ずっと僕ら周りの人間に振り回されて、怒濤ですよね。音無はアイドルグループに入ることになるんですけど、僕の演じる「朝霧」はそのグループのリーダーかな。一歩引いてグループ全体を見ている人。駅弁をこよなく愛する“駅弁鉄”の役です。でもまだぼんやりとしているので、アイドル5人の個性をはっきりさせていきたいですね。
鷲尾:現段階だと、(滝澤)諒ちゃんの役はちょっとクールな“撮り鉄”で、(佐藤)信長くんの役は元気なツッコミ担当の“時刻表鉄”。宇佐(卓真)くんは弟系でとにかく可愛い。ほわほわしていてマシュマロみたいで癒されるし、もう、可愛いんです!
遊馬:まだ19歳ですしね。体力もあってダンスもキレがあるし、フレッシュですよね。
鷲尾:僕はアイドル初心者の役だから、多少下手くそでもフレッシュ感が出ていいかもしれない。晃祐やみんなは、歌とダンスがうまくないといけない役だから大変だよね。
遊馬:今必死です。がんばります!
鷲尾:むしろ僕が、若い人たちからフレッシュさを学んでます。歌って踊っている時のみんなはフレッシュだもん。アイドル5人グループの中で僕だけ30代ですが、役柄的にはもっとも新人アイドルなので、誰よりもフレッシュでいないといけないな、と。
——はじめからキャラクターができている2.5次元と、今回のようなオリジナル作品では、役作りはどう違うのでしょう。
遊馬:2.5次元の時は、まず漫画を読んで、アニメを見ます。そこが勉強する場所でした。でも今回は違う。共演者の先輩から言われたことは「この現場は主張していかないといけない」です。自分を正直に出せば、演出の米山さんがその人に合ったキャラクターで台本を書いてくれると聞いてから、できていなくても自分の思いを主張していこうとしています。
鷲尾:そうですね。2.5次元はいわゆる“教科書”があり“正解”があるので、それに自分を寄せていく作業です。一方、オリジナルの脚本にも“教科書”はあると思うんです。警察官役であれば警察官の情報を仕入れ、どんな動きをしているかと参考にします。でも、役の作り方は人それぞれですよね。自分を変えて役になりきる人もいれば、役を自分に寄せる人もいる。自分のスタイルを見つけていくのが大事かなと思います。
——今回は「鉄道職員」ということがひとつの“教科書”なんですね。お二人とも社会人経験があるので、イメージしやすいのでは?
鷲尾:そうですね。僕は音無の年齢の頃はまだこの世界に入っていなくて、工事現場で働いていました。でも音無が就職する「関西電鉄」は誰もしっかりしていないのに成立しているすごい会社(笑)優しい上司ばかりだし、おもしろいし、実在したら就職したいくらいです。
遊馬:楽しいですよね。アイドルは大変だけど。僕も引っ越しセンターで準社員として働いていた頃はムキムキだったけど、今は衰えてるからダンスがキツい……(笑)
鷲尾:まだ大丈夫だよ。30歳こえたら駅の階段登るのもきついよー?(笑)
(左から)遊馬晃祐、鷲尾修斗
——今回の稽古で一番の課題・目標は?
鷲尾:歌はうまくなりたいですね。僕は人前で歌うのがあまり得意じゃないので、カラオケでも歌わないんです。まず行かない。行かなきゃいけない時はだいたい受話器の近くの席に座ってデンモクを膝において自分の仕事を作っています(笑)ただ、不思議なことに、役に入ると歌えるんですよ。でも『レイルウェイ』は2.5次元ではないのでウィッグもつけないし、ビジュアルは自分のままなので新鮮だし楽しみ。お客さんも、素の姿の僕が歌っているところはなかなか見られないですよ。貴重です!
遊馬:僕も歌とダンスかな。僕は本当に要領が悪いので、自主稽古も効率が良くないし、なかなかうまくならない。でもやっぱり舞台上ではかっこよくいたいからがんばらないと。気持ちとしては「舞台では遊馬が一番だ!」と思ってやります。
鷲尾:それはいいけど、だからってどんどんセンターに行かないようにな(笑)
遊馬:いいですね、センターに行く役者!
鷲尾:みんな真ん中に行きたがるんですよ、一生懸命だから。オリジナル作品の舞台経験も少ないし、とにかく必死だからどんどん前に行っちゃう。晃祐の役なんて、一歩引いて見守るリーダーなのに(笑)
僕は30歳も過ぎて冷静に全体のバランスを考えがちなので、彼らの一生懸命さは見習いたいし、魅力的ですね。
遊馬:え、僕のことですか?
鷲尾:(無視して)その勢いや個性を米山さんがうまく舞台に乗せてくださるし、素敵な先輩たちの中で、僕たち自身もこれから稽古を重ねてもっと余裕が出てきたら、すごくおもしろくなりそうです。
——盛りだくさんの舞台ですが、ここぞという見どころを教えてください!
遊馬:僕ら5人はアイドルなので、お客様もペンライトを振ったりしてアイドルのライブを楽しんでもらえたら嬉しいです。アイドルのシーンはかっこよく、お芝居のシーンは面白く、とメリハリをつけて、お客さんと一緒に舞台を創れたらいいですね。個人的には、アイドルグループの中でもリーダーとして一歩引いて全体を見たり、修斗さんとも芝居できちんと関係をつくって、俳優としても成長したいです。
鷲尾:就活がうまくいかなかったり、職場での人間関係に悩んだり、仕事をがんばったりする話なので、どこかしら共感できるところがあるはず。ダンスも歌もあって盛りだくさんだけれどバランスのいい作品なので、2.5次元のキラキラした要素も、しっかりしたコメディー芝居もどちらも楽しめます。2.5次元が好きな方も、ストレートプレイが好きな方も、誰が見てもおもしろい舞台になると思いますので、ぜひいらしてください。
取材・文・撮影=河野桃子

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