『音楽旅団』は宝石の原石のような
BEGINの確かな才能を
感じることができる逸品
聴き手を選ばない親しみやすい歌声
昨年末、BEGINがラジオ番組に出演した際、初めて買ったCDがシングル「恋しくて」だったという番組の女性アシスタントが、『三宅裕司のいかすバンド天国』(以下、“イカ天”)での彼らの演奏に触れて、“それまでブルースというものを聴いたことがなかったので衝撃だった”と仰っていた。仮に比嘉の声がB.B. KingやAlbert King、あるいは憂歌団の木村充揮のようであったら、彼女はBEGINに興味を持ったであろうか。比嘉の声の汎用性の高さというか、その親しみやすさは初期BEGINの推進力となったことは議論を待たないであろう。
もちろん、M8「恋しくて」は問答無用に素晴らしいし、アルバム『音楽旅団』収録曲はどの曲でもいい歌声を聴くことができるのだが、個人的にはM4「白い魚と青い魚」を推したい。のちのシングル「笑顔のまんま」や、本作で言えばM3「SLIDIN' SLIPPIN' ROAD」、M6「いつものように」、M10「星の流れに」のようなポップな楽曲も悪くはない。だが、先ほど、“どちらかと言えば細い声”と評させてもらったが、この感じはマイナー調に合うと思う。切ない系のラブソングならなおいい。M4「白い魚と青い魚」は歌詞内の物語が誰にでも分かるものではないので、切ない系のラブソングではないのかもしれないが、そうとしか感じられない綺麗な歌声である。物悲しさを助長していているかのような上地等(Key)の鍵盤の絶妙な絡み具合も素晴らしく、そこも聴きどころだと言える。