『音楽旅団』は宝石の原石のような
BEGINの確かな才能を
感じることができる逸品

聴き手を選ばない親しみやすい歌声

まず、比嘉栄昇(Vo&Gu)の歌声である。聴き手を選ばない、とてもいい声だ。ブルースシンガーはハスキー(“しゃがれた”と表現した方がいいか)であったり、喉の奥から絞り出すようであったり、わりとアクの強い声を持つミュージシャンが多いのだが、彼の声はいい意味で特徴がない。強いて言えば、どちらかと言えば細い声だと思う。また、歌が上手いのは間違いないが、それを殊更に誇示するようなところもない。少なくともアルバム『音楽旅団』では派手にフェイクを利かせているような箇所は確認できない。生真面目というよりも、朴訥な印象を受けるヴォーカルである。

昨年末、BEGINがラジオ番組に出演した際、初めて買ったCDがシングル「恋しくて」だったという番組の女性アシスタントが、『三宅裕司のいかすバンド天国』(以下、“イカ天”)での彼らの演奏に触れて、“それまでブルースというものを聴いたことがなかったので衝撃だった”と仰っていた。仮に比嘉の声がB.B. KingやAlbert King、あるいは憂歌団の木村充揮のようであったら、彼女はBEGINに興味を持ったであろうか。比嘉の声の汎用性の高さというか、その親しみやすさは初期BEGINの推進力となったことは議論を待たないであろう。

もちろん、M8「恋しくて」は問答無用に素晴らしいし、アルバム『音楽旅団』収録曲はどの曲でもいい歌声を聴くことができるのだが、個人的にはM4「白い魚と青い魚」を推したい。のちのシングル「笑顔のまんま」や、本作で言えばM3「SLIDIN' SLIPPIN' ROAD」、M6「いつものように」、M10「星の流れに」のようなポップな楽曲も悪くはない。だが、先ほど、“どちらかと言えば細い声”と評させてもらったが、この感じはマイナー調に合うと思う。切ない系のラブソングならなおいい。M4「白い魚と青い魚」は歌詞内の物語が誰にでも分かるものではないので、切ない系のラブソングではないのかもしれないが、そうとしか感じられない綺麗な歌声である。物悲しさを助長していているかのような上地等(Key)の鍵盤の絶妙な絡み具合も素晴らしく、そこも聴きどころだと言える。

OKMusic編集部

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