YUKIの最新作『forme』に見る“音楽
界のリヴァイヴァル”
音楽界の“リヴァイヴァル”
…と、まぁコレがここ数年間の状況であったように思います。ところが、この細分化したシーンを最近またポジティブに捉えている動きがありませんか?「基準がない?じゃあ作ろうぜ」と言わんばかり。D.A.N.やyahyelは相変わらず我が道を行っているし、King Gnuはメジャーにフィールドを移してもエッジの効いた音楽を作り続けています。Charaのような長くシーンで活躍するアーティストも、以前にも増して輝いています。新譜『Baby Bump』は笑っちゃうほどカッコよかった。音楽人たちが、「良い音楽」を再定義しているように見えます。
この動きが緩やかに始まったのが2017年ぐらいではないかと思うのです。Suchmosの『Stay Tune』がアンセム化し、YUKIやRADWIMPSのようなポップスターがフジロックに初出演したんですね。一様にエポックメイキングな出来事でありました。特にYUKIはギターやベースなどの基本的なバンドセットのほか、ホーンセクション、ストリングセクションを引き連れたビッグバンド仕様でありました。当時出ていたアルバムは『まばたき』だったのですが、本作のコンセプトが「思春期」であったと記憶しています。十分にキャリアを重ねた彼女が、苗場の山奥で「はじめまして、フジロック!」と言い放つわけです。それがすごく印象的で、編成の豪華さも相まって、「メランコリニスタ」や「JOY」がすごく新鮮に聴こえました。
今までに幾度となく聴いてきたこの曲ですが、その都度明確に内容が違う。文字通り、死ぬまでワクワクできる曲だと思いますね。
自分のための2回目のソロデビューのよ
うな
『forme』は自分のための2回目のソロデビューのような、フレッシュなアルバムになりました。
先行シングル「トロイメライ」のビートひとつ取っても、限りなく“今”なのであります。2度目のソロデビューに嘘はない。J-PopにもJ-Rockの方法論とは逸脱した、『HERE』(2016年)以降のアリシア・キーズあたりと共振するようなグルーヴ感ですね。特に「Pawn It All」なんかとはかなり近いところに位置付けられるのではと思います。やはりこの曲も、J-Pop的な基準が消失した今だからこそ、成立しうるのではないでしょうか。
個人的にはCharaと共作した「24hours」が一番好きですね。冒頭で引き合いに出したCharaの最新作『Baby Bump』ですが、かなり内容がハウシーなんです。それに対して、こちらはかなりアコースティックで流麗。途中からシューゲイザーっぽくもなり、展開も多彩です。YUKIの壊れそうなヴォーカルも相まって、非常に危うさを感じる楽曲です。
そして最後に申し上げますが、本作はやはり“アルバム”なのであります。曲と曲が連結した作品として考えていなければ、最後に作詞作曲を自分ひとりで行った全編弾き語りの「美しいわ」を持ってこないはず。サブスクリプション全盛の今だからこそ、アルバムで聴かせる新しさを感じたのかもしれません。YUKI本人の考えは別のところにある可能性もありますが、筆者にはとてもフレッシュに聴こえたのでした。
2019年。エッジーなアイデアや価値観を持つ新星も、かつて指標を作ってきた精鋭たちも、「良い音楽」を再構築し、新機軸を展開しようと試みる。本作『forme』は、初っ端から特大ホームランになり得る可能性があります。
■YUKI 9th Original Album 『forme』
「forme」
EPIC Records
通常盤(CD):ESCL-5182 ¥3,000+税
初回生産限定盤:(CD+DVD) ESCL-5180 ~ ESCL-5181 ¥3,800+税
完全生産限定/アナログ盤(アナログ盤2枚組) ESJL-3115 ~ ESJL-3116 ¥3,500+税
★通常盤&初回生産限定盤
YUKI concert tour “trance/forme” 2019 チケット先行抽選チラシ封入[2019年2月11日(月)応募締切]
(収録曲)
DISC 1
1. チャイム
2. トロイメライ
3. やたらとシンクロニシティ
4. 魔法はまだ
5. しのびこみたい
6. ただいま
7. 口実にして
8. 風来坊
9. 転校生になれたら
10. Sunday Girl
11. 百日紅
12. 24hours
13. 美しいわ
DISC 2
1. チャイム(Lyric Video)
2. トロイメライ(Music Video)
YUKIの最新作『forme』に見る“音楽界のリヴァイヴァル”はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
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ミーティア
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