今や海外でも活躍するFLOWの
バンドとして本質が詰まった『GAME』

ツインヴォーカルとギターの多彩さ

さて、『GAME』である。今回、それこそほぼ15年振りに聴いたのだが、どの楽曲にも前述したメロディーの抑揚とメリハリの効いた構成を見出せる作品であることが確認できた。

アニメ『NARUTO -ナルト-』第4期オープニングテーマとなったM1「GO!!!」は、《険しい修羅の道の中》や《失うモノなんてないさ いざ参ろう!》、あるいは《音を立てず忍び寄る影》や《かざした鋭い刀》という歌詞からすると、おそらくアニメのテーマ曲となる前提で作られたものではあろうが、そのキャッチーさは仮にタイアップがなくとも十分に受け入れられたと思わせる秀逸さ。この他にもM3「流星」とM5「太陽」がテレビ番組のエンディングテーマとなったそうだが、今聴いてもそのポピュラリティーの高さはテレビ向きと思える。

随所でラップが聴けるのは2000年代のバンドらしいというか、KOHSHI(Vo)とKEIGO(Vo)とのツインヴォーカルであるFLOWらしさなのかもしれないが、この辺も楽曲のメリハリ──楽曲のポップさと言い換えてもいいと思う──を際立たせていると思われる。メジャーデビューシングルでもあるM2「ブラスター」はAもサビも清涼感すら感じさせるメロディーで、それをマイナーで攻撃な印象もあるBメロのラップで挟むことで、サビに到着した時にそのさわやかさを増大させているかのようでもある。スイカに塩をかけるような感じというか、チョコミント的というか、どちらも比喩としては間違っているような気もするが、何となくニュアンスは分かってもらえると思う。

ラップはこの他にもM1「GO!!! 」をはじめ、M4「Without you」、M5「太陽」、M9「集中治療室 -I.C.U-」などにもあり、いずれもM2「ブラスター」同様の効果を生んでいるが、この辺から察するにFLOWはポップさを作ることに関しては器用なバンドだと言える。それはギターサウンドにも表れていると思う。時に歌を下支えしながらも、時に前面に出るような自己主張も忘れない、ギターの多彩さも随所で確認できる。

まず、ギターによるメロディーが際立ったものから挙げると、これも多々あるが、個人的にはその最たるものとしてM11「その先には…」のイントロを推したい。BOØWY辺りから続く正調なるビートロックのイントロと言った印象で、彼らが単なるパンクバンドでも流行のミクスチャーに飛び付いたバンドでもないことを示す好材料と言える。開放感と疾走感を併せ持ったコード感がとてもいい。M11「その先には…」ほどには目立たないかもしれないが、M7「ノスタルジア」もいい。間奏のギターは流麗でありつつ、しっかりとブルースフィーリングを感じさせる素晴らしいテイクで、堅実なイメージのギターリフと併せて、TAKE(Gu)のギタリストとしての確かな手腕を確認できるナンバーだと思う。

イントロやギターソロだけでなく、バッキングを務める所謂サイドギターにおいても──いや、むしろそこにおいてこそ、FLOWのギターの多彩さが発揮されていると思う。M5「太陽」のセカンドライン。M6「Surprise」やM12「ドリームエクスプレス」のスカ。M8「シャリララ」でのボサノヴァ。さらには(これはギターで出しているものかどうか確証がないが)M3「流星」の全編に重なる電子音みたいな音であったり、M9「集中治療室 -I.C.U-」で聴こえるスクラッチノイズ風の音であったりも、楽曲の十分すぎるアクセントとなっており、このバンドの確かなクオリティーを発揮していると感じるところではある。無論こうした多彩なサウンドは確かなリズム隊が備わっているからできることであるのは言うまでもなく、GOT'S(Ba)、IWASAKI(Dr)の存在感がこのバンドにおいてかなりのウエイトを占めていることも補足しておきたい。

OKMusic編集部

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