【ONE OK ROCK リコメンド】
美メロに磨きを掛け、スケール感を
帯びた曲調が並ぶ大傑作!
世界中のファンが待っている!と言っても過言ではないニューアルバム『Eye of the Storm』がついにその全貌を露にした。昨年は東京ドーム公演2デイズを含む全国ドームツアーを大成功させ、さらにアメリカ、ヨーロッパ、アジアなどのワールドツアーを敢行し、より一層逞しくなったONE OK ROCKが作り上げた新作は、早くも2019年を代表する一枚になった。
そして、ここに届いたニューアルバムを聴き、身体中の震えが止まらない状態だ。前作は海外に視野を向け、洋楽路線をさらに押し進めた作風で多くのリスナーの度肝を抜いた。今作はその路線をキープしたまま、より一層洗練された楽曲が並んでいる。基本は英語詞をメインに据えつつ、数ラインの日本語を挟むリリックは前作を踏襲したスタイルだ。ただ、サウンド面に関してはデジタルな質感が増した印象で、Taka(Vo)のエモーショナルな歌心を含めて、メロディアスな側面に磨きを掛けた作品に仕上がっている。ご存知の通り、アメリカの音楽業界はヒップホップ/R&Bのシェアがすでにロックを上回る人気ジャンルとなっていて、そうした世界の時流に沿ったサウンドアプローチをとったのかどうかはメンバーに訊いてみないと判別できない。しかし、ONE OK ROCKなりに今の音楽シーンをサバイブするために、もっとも効果的かつ多くのリスナーの心を掴むテクスチャーを手に入れたと言ってもいいだろう。HondaのCM『Go,Vantage Point.』第二弾に起用された「Change」に《この声で響かす SOSのサイン 道なき道を進み 目指す場所へ》という力強い歌詞がある。まさに前人未到の道を切り開こうとする彼らの揺ぎない意志を感じずにはいられない。また、「Change」と同様に、すでにMVが公開&先行配信されているHondaのCM『Go,Vantage Point.』第三弾に使用されている「Stand Out Fit In」は、今作の方向性を暗示する曲調と言えるかもしれない。作品全体を通してもバンドサウンドとデジタル音の蜜月関係を深め、一曲一曲の色合いや世界観を高めた楽曲が多い。耳を傾けていると、情景が脳裏に浮かび、雄大なスケールを帯びた音色が特徴的だ。
歌とコーラスで幕を開ける「Push Back」は、中盤にQUEENの「We Will Rock You」風のハンドクラップを用いたアッパーな高揚感に満ち、聴く者を内側から焚き付けるナンバー。冬にマッチしそうな明るくも切ないエモーショナルなメロディーを配した「Wasted Nights」も絶品だ。そして、映画『フォルトゥナの瞳』主題歌に抜擢された「In the Stars (feat Kiiara)」は女性シンガーKiiaraとTakaによるヴォーカル、ハーモニーの掛け合いが素晴らしく、珠玉のバラードソングで聴かせてくれる。前作を経てアリーナやスタジアムで抜群に映えそうな強靭な楽曲ばかりが揃った今作は、再び音楽シーンに革命を起こす大傑作と呼んで差し支えないだろう。
文:荒金良介