阿部真央

阿部真央

【阿部真央 インタビュー】
阿部真央の人生の変遷が
色濃く表れたベスト盤

珠玉のポップチューンからバラード、ダークでヘヴィなナンバーまで、やさしさと包容力、ユーモアにアイロニーがたっぷりと詰まった、これぞ“ベリー・ベスト・オブ阿部真央”な作品集『阿部真央ベスト』。楽しくてカッコ良いぞ!

まず、アー写やジャケ写といった、今回のアートワークがカッコ良くて素敵だなと。

あー、嬉しい! デザイナーさんから“10周年なんだから十字斬りを真央さんがしているのはどうだろう”という提案があって。で、スリーブケースの表面が十字に切れているんですけど、そのスリーブを外すと私が刀を持っているという。あと、ギターを背負っているカットは“阿部真央にとっての武器はギター”という裏テーマが表現されているんです。

なるほど。そして、10周年が凝縮された2枚組のベスト盤ですが、これがまた濃くて(笑)。

10年、よく書いたなって思いました(笑)。収録曲の候補が50曲くらいになっちゃって泣く泣く削っての36曲なんですけど。私、10年も続くわけないと思っていて…契約もすぐに切られると思っていたから。でも、続けてこられたし、曲たちがいっぱいの人と出会わせてくれた。それって曲やライヴをずっと待っていてくれるファンの人たちのおかげですよね。ほんと、よく書けたと思うし…いい曲が多いなって。特に「いつの日も」は改めてマスタリングで聴いた時、他人事のように“すっごくいい曲だな”って思いました。自分が書いた曲なんだけど、もともと曲がどこかにあって、それが私を通して出てきただけっていう感覚が強い一曲ですね。でも、すごく遠いところにいるようで、昔のことのような感じはしない。ずっと俯瞰で見ているような気持ちではいるけど…あんまり連絡をとらないけど、隣の県に住んでいる息子や娘みたいな感じですね。

でも、物事を俯瞰で見るって大事ですよね。

それができるから続けられてるんだと思います。そういう思考って曲を作る段階でも活きてくるし。自分自身と曲って公私混合なのに乖離している部分があって。例えばプライベートでネガティブなことが起きた時、喧嘩している最中にも“あっ、これで1曲書ける”と思ったり(笑)。

すごい作家的ですね。経験値がものを言うというか。

ですね。残念です…いや、曲作りの楽しさを知ったんでしょうね。だからこそ、フィクションを交えることに抵抗がなくなったんだと思います。最初の頃は“身を削って全て実体験で書くことこそが美学”みたないものを自分に課していたところがあったので。

でも、その時期の作品も含めて、この時、この瞬間じゃないと書けない曲ばかりだと感じます。

正直に書いてきた証拠ですね、それは。嘘偽りなく。

そこは一貫してますね。そして、1曲目が「ふりぃ」なんですが、やっぱりすごい曲だし、当時の真央さんを象徴する曲ですよね。

本当にそう。“阿部真央の一番最初と言えば”という象徴的な感じが私自身にもあります。シングルではないんですけどね。

ちなみに、50曲から36曲に絞った、最終的な選曲ポイントというのは?

ファンの人が好きな曲ですね。ファンの人がベスト盤ならではの楽しみ方ができるというのは意識しました。あと、新たな入門編という意味でも、みんなが好きでポップネスがすごく強い曲を選びました。3分の2がそれで、あとの3分の1は自我というか、自分が好きな曲を選んでいます。

「モンロー」とか、そういうタイプの曲ですよね。ライヴでやるとファンの人たちがすごく盛り上がるっていう。

そうそう。で、意外性もあるし。いろんな側面を見せやすい曲ですよね、「モンロー」とか「じゃあ、何故」…「ストーカーの唄〜3丁目、貴方の家〜」もそうだし。リード曲じゃないけど、アルバムの中で好かれている曲でもあるし。

「ストーカーの唄〜3丁目、貴方の家〜」みたいな曲を作れるところが、阿部真央というシンガーソングライターの強みだと思います。

そう思ってます、私も。このユーモアは私のキャラクターあってのことだと思ってるから。ユーモアがあって、変で、笑えちゃうところ。それはすごく私らしいと思っているので。自信があります(笑)。

自我の部分はどのあたりに表れています?

曲で言うと「morning」ですね。私、この曲がすごく好きで。これは「19歳の唄」(2010年11月発表の5thシングル)のカップリングとして出した曲で、アルバムにも入ってないんですけど、非常に自分の中での愛情が深くて。あと、「這い上がれMY WAY」は自分が気に入ってて、良くできた曲だなと。それと「なんにもない今から」も。

「なんにもない今から」の歌詞はすごく勇気がもらえます。言葉自体も強いんだけど、強さだけじゃないんですよね。

そうなんですよ! 10年ないとこういうふうには歌えなかったし、こういう言葉の表現はできなかったと思います。そこが成長したところだと思う。素直に今を表現できる曲ですね。

そういう曲の次に「クソメンクソガールの唄」を入れちゃうという(笑)。

そこは発表順だから(笑)。曲を作ったのは2年前くらいで、おぎやはぎさんの番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)で披露したんですけど、やっぱり番組に対しての感謝があるので、ちゃんと注目してもらえるタイミングでリリースしたかったんです。だから、満を持してベストアルバムに入れました。私なりのクソメンクソガールへの愛と…私も遠からずのところにいると思うので、この方たちの思考と(笑)。そして、この曲に共感したら、あなたもクソメンクソガールの仲間入りという(笑)。

あと、個人的には「逝きそうなヒーローと糠に釘男」が選ばれているのが嬉しかったですね。

これ、入れたかったんです。大事な曲だし、ターニングポイントだったと思うし。「母である為に」と同列くらい…やっぱり“復活”っていうのがすごく大っきかったと思います。

「母である為に」、ジーンときましたよ。

年々大事になっている曲ですね。私が子供を産んだのが2015年なんですけど、ファンの人も時同じくだったり、それ以降に結婚したり、ママになった人が多くて、身に染みて共感してくれている人が多いみたいで。聴いてくれる人の感じ方が変わっていくことによって曲自身のパワーがまた強くなっているのを感じています。

ちょっとここのゾーンだけ違うんですよね、流れで聴いていくと。

そうなんですよ! それはすごく思います。

で、そんな10年の締め括りが、早口を治したいという「28歳の唄」で(笑)。

“28歳の私ってどうかな?”と思った時に、早口を治したいとすごく思っている時期だったから、それを歌にしようと。遊び心でオペラ的な要素も入れたりして。私らしく終わりたかったんですよね、このアルバムを。

5年振りの日本武道館公演も間近に迫ってきましたね。

もう1回、あそこに立ちたいと思っていたので、それが10周年で叶う喜びはひとしおですね。最大の感謝を伝えたいから、みんなが好きな曲をいっぱいやりたいと思います。

取材:竹内美保

アルバム『阿部真央ベスト』2019年1月23日発売 PONY CANYON
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • PCCA.04741 ¥4,500(税込)
    • 【通常盤】
    • PCCA.04742 ¥3,000(税込)

【ライヴ情報】

『阿部真央 らいぶNo.8 ~ Road to 10th Anniversary ~』
1/20(日) 宮城・仙台電力ホール

『阿部真央 らいぶNo.8 〜 10th Anniversary Special 〜』
1/22(火) 東京・日本武道館
1/27(日) 兵庫・神戸ワールド記念ホール

阿部真央 プロフィール

アベマオ:1990年1月24日生まれ、大分県出身。06年、高校2年生の時に『YAMAHA TEENS' MUSIC FESTIVAL』の全国大会で奨励賞を受賞。09年1月にアルバム『ふりぃ』でデビュー。感情的なアコギで押し出す、等身大でリアルな歌詞、表現力豊かなヴォーカル、バラエティーに富んだ楽曲、同世代の女性を中心に、幅広い層から注目と共感を集める。14年10月にデビュー5周年を記念して初の日本武道館公演を開催。16年5月、産休明け第一弾シングル「Don’t let me down」で完全復活を果たし、デビュー10周年となる19年1月にはベストアルバム『阿部真央ベスト』を発表し、2度目の日本武道館公演を成功させた。阿部真央 オフィシャルHP

阿部真央
アルバム『阿部真央ベスト』【初回限定盤(DVD付)】
アルバム『阿部真央ベスト』【通常盤】

アルバム『阿部真央ベスト』トレーラー

OKMusic編集部

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