1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(MUCC)

1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(MUCC)

MUCC、ミオヤマザキら出演の
『DREAM × PARADE vol.1』が大盛況

前者からの世界観を一変させたミオヤマザキのステージは、まさに、今、勢いに乗っていることを感じさせる自信に満ちたライヴであったと言えるだろう。デジタル色の強いSEでtaka(Gu)、Shunkichi(Ba)、Hang-Chang(Dr)が登場すると、フロアからは自然発生的にクラップが起こった。それぞれが定位置に着くと、最後にずるずると大きなぬいぐるみを引きずってヴォーカルのmio(Vo)がステージに気だるく登場した。mioが中央に立った瞬間、“ミオラー”なる信者が生まれるだけのカリスマ性に納得した。彼女が宿すオーラに一瞬空気が止まったのを感じたからだ。私自身、ミオヤマザキのライヴを観たのは初めてであったが、正直、今、とても気になっていたバンドであったこともあり、その個性的な始まりに対してもとても興味をそそられた。

暗めな照明の中、臨終音を示す様な機械音が流れると、mioが歌詞というよりも心の中の鬱憤を詰まった言葉に変え一気に吐き出していった。

“ミオヤマザキ、始めます”

mioの号令のような一言から、taka、Shunkichi、Hang-Changが音を放つと、mioはシニカルな歌い方で歌い進めていった。《あんたの正義は誰かを救えんの?》という台詞的な歌詞が差し込まれる「正義の歌」は中盤でジャジーにサウンドが変化しつつも、4つ打ちのリズムに押し上げられていく。センスのいいリズミックな楽曲「女子高生」を間髪入れずに届け、完全にオーディエンスを虜にしていく。現代社会の闇へのアンチテーゼを感じさせる女子高生の現状をリアル過ぎるほどリアルに描いた歌詞からは、胸の痛くなる現実を突き付けられる。メッセージ性の強い歌詞、というものではない。しかし、目を背けることなく現実を直視して描かれたその丸裸な言葉(歌詞)にこそ、聴き手は共感するのだろう。捉え方によっては、直視するには辛過ぎるとさえ感じるその歌詞も、デジタルロックを取り入れたインダストリアルなロックに体を委ねながら聴けることで、不思議な浄化作用を生み出すのである。それこそがミオヤマザキのロックなのだろう。

“不倫は犯罪です”という言葉がフロアで大合唱になっていた、これまで観たことのない光景を魅せてくれた「民法第709条」やインダストリアルなメタルサウンドを押し出した「CinDie」を間髪入れずに届けていった後半戦も疾うに限界を超えたシニカルさで驀進し、MUCCへと繋げたのだった。

ラスト。さすがの風格を漂わせての登場となったMUCCは、イベントを締めくくる説得力あるライヴでオーディエンスを惹きつけた。『SUMMER SONIC』や『OZZFEST』、『KNOTFEST JAPAN』など大規模なフェスへの出演や、昨年行われた『Vans Warped Tour Japan 2018 presented by XFLAG』でKORNや Limp Bizkitと名を連ねた経験を持つ彼らのライヴは、どっしりと構えた安定感が漂う。しかしながら、決して型に嵌まることなく、ライヴ毎に変化する体温を感じさせながら、それをその日の正解とする瑕疵のないMUCCらしいライヴは、この日もこの日だけの熱を放ち、集まったオーディエンスを沸かせた。

そんなラスボスMUCCが1曲目に選んでいた楽曲は「メディアの銃声」。今から13年前にシングル「ガーベラ」のカップリング曲としてリリースされたこの曲は、ドラムのSATOち作曲・ヴォーカルの逹瑯の作詞によって生み出されたMUCCを象徴するいい意味での暗さと、歌詞を重んじるロックバンドである彼ららしいメッセージが込められた1曲だ。マスメディアと人間の業を逹瑯らしい言葉で皮肉ったこの歌詞の中で、逹瑯は綺麗事だけでは生きられない人間の醜い業を恨む葛藤を絶叫に変えて差し込んだ。会場中が静まり返るほどに切迫したその叫びには狂気を感じた。それは、13年前に、もうここまでしっかりとMUCCというカラーが確立させていた素晴らしさに、今更ながら驚いた瞬間でもあった。

YUKKEの重厚なベースフレーズから始まる煽り曲「大嫌い」を2曲目に置いてオーディエンスを挑発していった流れから、古めな曲で構成されたセットリストで挑むのかと思いきや、3曲目から「ENDER ENDER」で、過去の“ムック”時代から進化時代への“MUCC”へと舵をきった。ムック時代のヘヴィさとは異なるキレのある重低音とメタル要素を強く感じるスピード感を宿した「ENDER ENDER」から繋がれたのは最新曲「アイリス」。それは、MUCC色を色濃く感じさせる質感でありながらも、更なる進化を感じさせる、ロックという言葉には収まりきらない新たな表情だった。

“最近は、ライヴハウスで何バンドも集まる対バン形式のライヴがなかったんで、昔を思い出すっちゅうか。テンション上がってます。ウチらが楽しんでるところを見て、一緒に楽しんでもらえたらと思います”逹瑯のラフなMCを挟み、「自己嫌悪」へ。ミヤのセリフが印象的なムックらしいMUCCはフロアを大きく揺らす。後半戦に「娼婦」「蘭鋳」という過去曲を再度差し込み、「蘭鋳」ではお決まりとなった全員座らせての一斉ジャンプで圧巻のノリの見せ付け、最後は“今”のMUCCで締め括った。

ラスト曲はリーダーであるミヤ作詞作曲による「生と死と君」。深く体に染み込む感覚に陥るこの曲は、愛する人との別れを想像させる歌詞の中に、死生観だけではない生きる上での大切な何かを教えてくれる。腹の底から大きく吐き出される逹瑯のヴォーカルは、言葉を大事にするMUCCというバンドの要。聴き手を惹きつけ、その存在と共に胸の奥にその声ごと言葉を印象付ける唯一無二のヴォーカリストだ。「生と死と君」は、そんな逹瑯の魅力を引き出す力を持った偉大な楽曲だと思う。MUCCはこの日、他を凌駕する確固たるロックバンドの確立を証明して魅せたと言ってもいいだろう。

最高のライヴを繰り広げたMUCC、ミオヤマザキ、首振りDollsBroken By The ScreamMajestiCという5バンドが繰り広げた最高の幕開けとなった『BARKUP FUKUOKA Presents DREAM × PARADE』が、この先も末長く続いてくれることを切に願う。

Text by 武市尚子
Photo by HBK! (FUKCREC)
1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(MUCC)
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1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(MajestiC)
1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(MajestiC)
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1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(Broken By The Scream)
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1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(Broken By The Scream)
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1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(首振りDolls)
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1月5日(土)@福岡・BARKUP FUKUOKA(ミオヤマザキ)
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OKMusic編集部

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