ロバート・プラント&
アリソン・クラウスの
『レイジング・サンド』は、
スーパースターふたりによる
アメリカーナの傑作盤

本作『レイジング・サンド』について

そして、剛のプラントと柔のクラウスがタッグを組んだ本作『レイジング・サンド』のレコーディングがはじまる。プロデュースはアメリカーナ音楽専門のT・ボーン・バーネット、バックを務めるのはギターのマーク・リーボウをはじめ、バーネット人脈で占められている。サウンドはゴシック感覚のあるアメリカーナで、重厚で暗めの曲が並んでいる。バンジョーやマンドリンが使われているナンバーもあるがブルーグラスは1曲もなく、オルタナティヴ・ゴシック・オールドタイムとでも呼べそうなサウンドだ。

収録されたナンバーは全部で13曲、ジミー・ペイジとプラントの共作1曲を除いては、全てバーネットが用意したカバー曲で、元バーズのジーン・クラーク、マッド・エイカーズのロリー・サリー、テキサスのフォークシンガー、タウンズ・ヴァン・ザント、エヴァリー・ブラザーズ、トム・ウェイツ、アラン・トゥーサンなど、アメリカーナ的な統一感を図った選曲となっている。

どの曲もポップな要素は極力抑えられ、バックの演奏はプラントとクラウスの渋さ溢れるデュエットを引き立てるために存在している。どの楽器も音数は少ないが、魂のこもった演奏が詰まっていると思う。特にクラウスのフィドルとマーク・リーボウのギターは秀逸である。アルバム最後の「Your Long Journey」はオートハープに重鎮マイク・シーガーも参加し、本作中最高の名演となっている。

余談だが、プラントは本作の仕上がりに満足したのか、この後もパティ・グリフィン、バディ・ミラー、ダレル・スコット、バイロン・ハウスら、カントリー系の超が付く凄腕メンバーたちと新グループ「バンド・オブ・ジョイ」を結成、アルバム『バンド・オブ・ジョイ』(‘10)をリリース、ブルーグラスフェスなどにも出演していた。偶然かどうかは不明だが、ツェッペリンの盟友ジョン・ポール・ジョーンズも、2004年にブルーグラス系のアーティストたちとグループ『Mutual Admiration Society』を結成しツアーを行なっている。また、ブルーグラス系のグループのプロデュースもいくつか手掛けるなど、プラントと似た足跡を残しているのは面白いところ。

閑話休題。本作を聴いて気に入ったなら、ダニエル・ラノア、ジョー・ヘンリー、ギリアン・ウェルチの諸作品や『ザ・ニュー・ベースメント・テープス』(‘14)あたりも聴いてみてほしい。映画なら『ソング・キャッチャー』(’00)とか『オー・ブラザー』(‘01)が本作と似た感覚かもしれない。

TEXT:河崎直人

アルバム『Raising Sand』2007年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. リッチ・ウーマン/Rich Woman
    • 2. キリング・ザ・ブルース/Killing the Blues
    • 3. シスター・ロゼッタ・ゴーズ・ビフォア・アス/Sister Rosetta Goes Before Us
    • 4. ポリー・カム・ホーム/Polly Come Home
    • 5. ゴーン・ゴーン・ゴーン/Gone Gone Gone (Done Moved On)
    • 6. スルー・ザ・モーニング、スルー・ザ・ナイト/Through the Morning, Through the Night
    • 7. プリーズ・リード・ザ・レター/Please Read the Letter
    • 8. トランプルド・ローズ/Trampled Rose
    • 9. フォーチュン・テラー/Fortune Teller
    • 10. スティック・ウィズ・ミー・ベイビー/Stick with Me Baby
    • 11. ナッシン/Nothin'
    • 12. レット・ユア・ロス・ビー・ユア・レッスン/Let Your Loss Be Your Lesson
    • 13. ユア・ロング・ジャーニー/Your Long Journey
『Raising Sand』(’07)/Robert Plant & Alison Krauss

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着