『中学聖日記』と『プロローグ』。物
語を紡ぐ女性クリエイターたち

Uru『プロローグ』が遂に20万ダウンロ
ード突破。ヒットの陰には女性クリエイ
ターの存在があった。

中学校教師とその生徒が禁断の恋に落ち、葛藤を抱きながらも純愛を貫こうとするストーリーが話題を呼んでいるドラマ『中学聖日記』。主人公・末永聖(有村架純)と黒岩晶(岡田健史)の揺れる想いを乗せて進む物語は、放送開始こそ賛否両論あったものの、ドラマのオリジナルストーリーとして展開される後半に進むにつれ、急激にファンを増やしている。

実は、その背景には敏腕女性クリエイターたちの存在がある。プロデュース・新井順子 × 演出・塚原あゆ子という、『夜行観覧車』(2013年)、『Nのために』(2014年)、『リバース』(2017年)、そして『アンナチュラル』などを手がけてきた強力タッグが本作でも実現。また脚本も『となりの怪物くん』『羊と鋼の森』といった2018年の話題映画を手がける金子ありさが担当しているのだ。ストーリー構成はもちろん、女性ならではの感性で彩られた繊細な映像美は放送初期から好評を博しており、漫画の原作でありながら10~20代の女性を中心としたお茶の間の幅広い年齢層のドラマファンの支持を獲得した理由もうなずける。
火曜ドラマ『中学聖日記』× Uru「プロローグ」スペシャルダイジェスト

さらにドラマの世界へと視聴者を引き込むストーリーテラーの役割を果たしてきたのが主題歌『プロローグ』を歌うUru(ウル)。憂いを帯びた柔らかな歌声でピュアな恋心を歌う同曲に「ドラマの世界観とマッチしている」との声が続出。各回ごとのクライマックスに絶妙なタイミングで流れ出すことが視聴者の感情を昂ぶらせ、ネットでは「『プロローグ』が流れるとドラマのあのシーンを思い出す」といった感想も多く聞かれる。波紋を呼ぶ設定に初回から視聴率は伸び悩んだ一方で、音楽配信サービスでのダウンロードは伸び続け、遂に20万を突破した。

そんな『プロローグ』もまた、女性クリエイターたちの仕事がロングヒットを後押ししているという。一体どんな人物たちが関わったのか? 本記事では制作に携わったクリエイターたちを紹介すると共に、ドラマと楽曲にまつわるクリエイティブを包み込むその繊細で美しい世界観が如何にしてうまれていったのかを分析する。


Uru『プロローグ』制作クリエイター

アーティスト写真:アミタマリ

アーティスト写真を手がけたのはアミタマリ。Mr.Childrenサザンオールスターズ木村カエラなどを撮影してきた故・野村浩司に師事し、現在はミュージシャンのCDジャケットやポートレートを手掛けるほか、広告、カルチャー、ファッションを中心に活躍している。
Uru アーティスト写真

日が暮れる間際の儚く美しい僅かな瞬間。 (中略) 終始和やかで暖かな空気で撮影させていただきました。(インスタグラムより)

Uruの穏やかでありながら真っ直ぐな眼差しと、夕暮れの太陽が一つになる刹那をとらえた作品だ。ドラマでも重要な局面を夕暮れで描くシーンがいくつか登場し、オレンジの陽の光が印象を残すのだが(ダイジェスト動画参照)、この作品もまたそんなシーンを連想させる。

ミュージシャンの魅力を引き出すのは得意としているところ。自身もモデルとして活動した経験を生かし、被写体と感覚を共にしながら写真を撮る。また、インスタグラムでは頻繁に空の写真を更新しており、自然な空気と被写体が共鳴する瞬間を逃さない。

アルバムジャケット写真:岩倉しおり

『プロローグ』のアルバムジャケット写真は岩倉しおりによるもの。ツイッターのフォロワーは13万人、インスタグラムのフォロワー数は26万人にものぼり、今人気を集める香川県在住の写真家だ。フィルムカメラから写真を撮り始め、自然や人物を被写体とすることが多い。
haruka nakamura × 岩倉しおり『アイル』

これまでに青葉市子、井上苑子など女性ミュージシャンの撮影を手がけ、haruka nakamuraとは映像で共演。音楽との親和性の高さも評価されている。

Uruとの共演は今回が2度目。映画『劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』の主題歌『remember』のCDジャケットも彼女の写真が使用されている。
Uru『プロローグ』ジャケット写真

『プロローグ』のジャケットに使用された作品は、夜更けに手のひらの中で小さく強く輝く星の写真。まるでキラキラと瞬く音が聞こえてきそうな、幻想的な1枚だ。

岩倉の作品では、光が実際に手に取れるような形を宿すことが特徴とも言えるだろう。手を伸ばせば触れられそうな光。触れたいけれど触れられない、そんな聖の気持ちを暗に表現しているようにも取れる。

ミュージックビデオ監督:稲垣理美

ミュージックビデオの監督は稲垣理美。コマーシャルフィルム、ミュージックビデオ、ドキュメンタリーなどを中心に映像演出を手がけている。Mr.Children、RADWIMPS、ACIDMANなどのミュージックビデオを制作した柿本ケンサクに師事したのち、2017年に独立。言語化できない被写体の体温や熱量、周辺に漂う空気や気温、時間といった柿本の映像作品の特徴を継承しながら、そこに女性ならではの繊細な表現を入れ込んでゆく。
END ALS “I’m still…”

ASL(筋萎縮性側索硬化症)という慎重なテーマにも向き合う稲垣。「ALS患者が絵画のモデルに挑戦する」というシニカルなアプローチを試みたこの映像では、ALS患者であるフジタ・ヒロと絵を描く人々、それを眺める観衆たち、それぞれの対照的な眼差しに釘付けになる。表情を失い、反応としてしか目を動かせなくなってしまったヒロと、その姿を描こうと必死にキャンバスに向かう絵描きたち、そして絵を見たときの観衆の変化。一般人のリアルな視線を巧みに切り取り、キーポイントとして描き出した。

そのことを念頭に置きながら『プロローグ』のミュージックビデオを見てみると、こちらも「眼差し」が際立って見える。
Uru『プロローグ』

あなたをさがしている 隠した瞳の奥で(『プロローグ』より)

Uruの紡ぐ歌詞ともリンクさせながら、淡い恋心を仕草以上に「目」で語らせている。

「あってはならない恋愛」という題材とのタイアップとなると、いくら主題歌のミュージックビデオといっても取扱いは難しかっただろう。しかし、そのシチュエーションの核にある「純粋な恋心」にフォーカスすることで、ドラマとのシンクロはもちろんのこと、多くの視聴者の共感を得ることとなった。

ミュージックビデオ出演:箭内夢菜

そして、稲垣監督のディレクションに演技で応えたのが女優・モデルの箭内夢菜(やないゆめな)だ。福島県出身、ミスセブンティーン2017ではグランプリを獲得。2019年1月号のPOPEYEガールフレンド特集でも表紙を務め、さらなる注目を集めている。
また、土屋太鳳主演のTBS金曜ドラマ『チア☆ダン』、菅田将暉・永野芽郁主演の日本テレビ系日曜ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』にも出演。映画『雪の華』でも登坂晴臣演じる主人公の妹役として登場することが決定しており、2019年のブレイクが予想される女優の一人だ。

ミュージックビデオでは歌詞に描かれた主人公の視線を至極自然に表現した目の演技が素晴らしい。現在18歳の現役高校生。等身大のあどけなさと共存する大人っぽい表情には、性別を問わずドキリとさせられるはずだ。2分足らずの映像の中で終始この澄んだ瞳に釘付けになってしまい、何度も何度も見返してしまう。


『中学聖日記』は設定こそ現実的ではない内容だが、誰もが持っている一途に人を想う気持ちを描いたドラマだ。ミュージックビデオでもそれを代弁しているからこそ、ドラマと共に主題歌がヒットできたのではないだろうか。

ドラマ制作陣と息の合ったクリエイティブで、今後も広がりを見せていくことが予想されるUruの『プロローグ』。米津玄師の『Lemon』やあいみょんの『今夜このまま』に続き、大ヒットドラマ主題歌として多くの人々の記憶に残る作品となるに違いない。


〈リリース情報〉

7th Single『プロローグ』
2018年12月5日発売

初回限定盤[CD+DVD]
AICL-3611~2
1,800円(税込)
初回盤三方背BOX仕様
初回プレス特典 カラートレイ仕様

CD
1.プロローグ
2.PUZZLE
3.雪の華
4.奇蹟 Self-cover ver.
5. プロローグ -instrumental-
6. PUZZLE -instrumental-

DVD
Uru Live「monochrome~吹き沁む頬に熱いザフサス~」
2018.3.4 昭和女子大学人見記念講堂
1.Sunny day hometown
2.ハッピーエンド
3.フリージア
通常盤[CD]
AICL-3613
1,200円(税込)
初回プレス特典 カラートレイ仕様


〈Uru〉

オフィシャルサイト
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『中学聖日記』と『プロローグ』。物語を紡ぐ女性クリエイターたちはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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