コブクロが創る秀でた旋律と歌詞を、
路上の空気を損なうことなく構成した
『NAMELESS WORLD』
“THE コブクロ”と言える旋律
だからと言って、何もコブクロがエピゴーネンなどと言うつもりはさらさらない。どんな優れたアーティストでも、その作品には何かしらの影響は残るものだ。音楽に限らず、アーティストと呼ばれる人たちは、模倣によりアートを理解し、その中から己の独自性を見出すのだと思う。突然、才能が降って沸くようなことはないと断言してもいい。
ミスチルだ尾崎だと指摘したが、無論それだけでなく、『NAMELESS WORLD』には、彼ら自らが確立した“THE コブクロ”がしっかりと刻まれている。それがM2「桜」とM4「ここにしか咲かない花」というシングル曲であることには意見を待たないのではないかと個人的には思う。サビで響かせる叙情的で劇的な旋律は誰も創り得なかったものであり、その圧倒的な自負もあったのだろう。メロディーに過度なサウンド装飾がないのがその証拠ではなかろうか。M2「桜」のアウトロは前述の通りだが、M4「ここにしか咲かない花」はサビの熱い歌唱からすると、その背後ではさぞかしアコギをジャンジャカとストロークするのだろうと思いきや、そうではないし、ギター以外の音も実はそれほど温度が高くはない。これはメロディー優先…いや、歌最優先の姿勢の表れと考えることができる。いずれにしても、先人の磁場から逃れ、彼らがビヨンドに到達していたことが分かるナンバーであることは間違いなく、今となってみれば、それまでの自身の売上記録を更新して、大ブレイクのきっかけとなったことも、“そりゃあ当然だよな”といった感じである。