MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』
第十回ゲストは渋谷龍太(SUPER BEA
VER) 結果を求める31歳の男たち

MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』記念すべき第十回目のゲストはSUPER BEAVERの渋谷龍太。アフロと渋谷は同い年で、音楽のキャリアもほぼ一緒。さらに、今年MOROHAが単独ライブを開催する12月16日のZEPPTOKYOは、去年の12月16日にSUPER BEAVERが『真ん中のこと』のリリースツアー・ファイナル公演を行ったというドラマがある。今回の対談では、初期衝動を武器に音楽を表現する10代ではなく、エナジーを滾らせて猛然と夢に向かっていく20代ではなく、30代の今だからこそ見える音楽=仕事としての壁に向き合っている2人の話が繰り広げられている。音楽で生活をしていくとは、どういうことなのか……それが今回のハイライトだ。――仕事ってなんだろう、食べていくってなんだろう、音楽を作ってお金をもらうってなんだろう。もしかしたら、表現という世界に身を置いている人がこんなことを話すのは野暮なのかもしれない。だけど、その問題に対して真摯に語ってくれた2人のボーカリストを僕は尊敬する。音楽で結果を求める31歳の男たち。だからこそ、MOROHAとSUPER BEAVERの歌にはリアルがあるのだと、僕らは再確認するはずだ。
●あなたが感じたこと以外に答えはないでしょ●
アフロ:今日は何してたの?
渋谷:1日中、取材デーだったね。
アフロ:何本、取材を受けてきたの?
渋谷:4本。
アフロ:4本!?  うわー、すごいね。
渋谷:取材ってさ、くたびれるよね。あれって何なんだろう。
アフロ:くたびれるね。しかも、楽しいかどうかは聞き手によるじゃん。
渋谷:わかるわかる。あの…………いや、まぁ(笑)。
アフロ:はい、渋谷くん黙りました。今日のライターは核心に迫ってこなかった? 「今回のアルバムはどんな作品ですか?」みたいな、大雑把の極みっていう。
渋谷:ああいう質問はすごいよね。「どんな作品ですか」って、CDを聴いたあなたが感じたこと以外に答えはないでしょ、と思っちゃう。
アフロ:それは相手に面と向かって言うの?
渋谷:最近は言ってる。「作品に込めた思いはないです」って。「どういう気持ちで歌っているんですか」とか聞かれたら「ここに込めたものだけですね」って。
アフロ:「聴きどころはどこですか?」って言われたら?
渋谷:何となくはぐらかすようになった。
アフロ:そういう質問の模範解答っていうのは、何なんだろう。大喜利的なさ、「うまい!」という答えを見つけたいよね。事情がわかっている同業者サイドも、読み手もみんながハッとするような。
渋谷:こっちからすると「うまいことかわしたな」と思いつつ、聞いてくださる方は普通の意見として受け止めるような言葉がね。
アフロ:最近は「モテるでしょ?」と言われた時の、俺なりの模範解答を見つけた。
渋谷:教えてもらってもいい?
アフロ:「モテるかどうかわからないけど、あんまり女性といる時間が少ないから。今日はみなさんと居られて楽しいです」と。
渋谷:……はっ、なにそれ! うわぁー、やらしくない!?
アフロ:だって「モテないですよ」「またまた~」ってお決まりの感じも恥ずかしいじゃん。
渋谷:逆に、相談しちゃうけどね。「そんなことないっすよ。むしろ、どうしたら良いんですかね?」って。
アフロ:カァーー! お前もそれは恥ずかしいよ!
渋谷:アフロが言った「またまた~」にならないじゃん。
アフロ:なるよ! 俺が今なってんじゃん!
渋谷:こっちから質問を投げかけるから、相手も頭を働かせないとダメじゃん。
アフロ:……確かに、そっちの方が良い切り返しか。
渋谷:さっきの質問もう一回言ってみて。
アフロ:モテるでしょ?
渋谷:そんなことないっすよ。どうしたら良いんですかね?
アフロ:そもそもモテない奴は音楽を辞めた方が良いですよ!
渋谷:どうしたんだよ急に(笑)! 怖えよ! そのライターの情緒ヤバイじゃん。
アフロ:思ったんだけどさ、それも真実だよね。だってどんな容姿であれ、ちゃんと自分を表現出来てる歌い手はきっとモテてるよ。いや、絶対にモテてるよ。
渋谷:だってシンガーとして魅力的だもん。
アフロ:そうそう。だから「モテないような奴は音楽を辞めた方が良いです」というのも1つの解答かもね。
渋谷:そうだな。モテてるもん絶対に。
●1人だけしか理解者がいないけど、その1人こそが自分の好きな人だった●
アフロ:そういえば、ドラマの主題歌(『僕らは奇跡でできている』)をビーバー(SUPER BEAVER)がやるってニュースサイトで見てさ。これはビーバーにとって良い話だと思ったから読むのをすぐ止めた。
渋谷:なんでだよ! 一緒に喜んでくれよ。火曜よる21時のドラマだよ。
アフロ:『踊る大捜査線』の枠じゃん。ということは「Love Somebody」の枠ってこと?
渋谷:そうだね。「Love Somebody」と同じ枠。
アフロ:そう思ったらスゴイね!
渋谷:『踊る大捜査線』の「Love Somebody」の枠。
アフロ:それこそ、ウチのマネージャーは織田裕二さんの元担当だった。
渋谷:そうなんですか! 俺、織田裕二さんのドラマは結構観てて。『振り返れば奴がいる』『お金がない!』『踊る大捜査線』は大好き! 特にね、『振り返れば奴がいる』は大好きでした。
MOROHAマネージャー:石黒賢さんもすごく良くて。
渋谷:西村雅彦さんも良い役どころで。
MOROHAマネージャー:あっ……今さらですけど、今日は連載の10回目になりまして。
アフロ:今日の対談は、俺らが『Bowline 2018 curated by SUPER BEAVER』に呼ばれなかったことをひたすら喋りたいと思ってるよ。俺は自分の連載の記念すべき10回目は、渋谷くんを呼びたいと思った。矢部さん(マネージャー)も反対した、SPICEも止めましょうと言った。だけど俺は、どうしても渋谷くんが良いと。そう! 今日、この場所はアフロのBowline! それなのに! お前らこの野郎!
渋谷:俺らは散々やってるじゃない。ここでお願いしたら「またMOROHA?」って絶対になるわけ。俺のラジオ(『渋谷龍太のオールナイトニッポン0(ZERO)』)にも最多出演だよ。そこで、またお前らを呼んだら「こいつら他に友達がいないんだ」となるじゃん。
アフロ:お前の言い訳はわかった。
渋谷:言い訳じゃねえよ(笑)!
アフロ:アハハハハ。Bowlineの話だけど、誰を呼ぶか考えるのは楽しかったでしょ。
渋谷:楽しかったね。結局、俺の意見を9割叶えてくれた。
アフロ:残りの1割はメンバーの意見?
渋谷:そう。4人共通で呼びたいと思ったのはBRAHMANと(Nakamura)Emiさん。もちろん4人の意思があってだけど、あとの面子は全部俺だね。eastern youth、Azami、錯乱前線も……。
アフロ:錯乱前線って俺は観たことないんだけど、やっぱり良いの?
渋谷:PVを観てカッコ良かったから、その週のうちにライブも行った。新宿Marbleでお客さん8人の中に紛れて観たよ。それでメンバーに話しかけず物販でCDだけ買って帰った。
アフロ:向こうは気づいてないの?
渋谷:多分、気づいてないんじゃないかな。
アフロ:じゃあ、Bowlineに呼ばれてビックリしただろうね。
渋谷:俺らのことを知ってたかは分からないけどね。オファーを喜んでくれてると良いな。
アフロ:俺も最近、自分よりも若いバンドのライブを観に行ったんだ。「これからもっと良くなるだろうな」と思ったけど、まだ良くなる余地があるならベストな時に対バンしたいと思った。
渋谷:今のうちにフックアップしてあげよう、という気持ちはなかった?
アフロ:一切ないね。そういう気持ちはあるの?
渋谷:良いものはみんなにも知ってほしいな。自分たち自身が芽の出なかった経緯があるから、おこがましくも俺たちで与えられるチャンスがあるなら好きなバンドは観てもらいたいと思う。
アフロ:俺たちにとっての曽我部(恵一)さんがその感じだったよ。俺らがお客のスカスカなライブハウスで歌ってる時に、たった1人だけしか理解者がいないけど、その1人こそが自分の好きな人だった。だから、若いバンドを観に行った時に、今、俺があの時の曽我部さんだと思ったの。
渋谷:フラッシュバックしてね。
アフロ:結果は「今は一緒にやりたいと全然思わないな」っていう。
渋谷:実際にライブで観たら、あんまり良くないと思うことはあるよね。
アフロ:だけど自分が若い頃の音源を聴くと、もう鬼ダサい。地獄のようなカッコ悪さなわけよ。若いバンドから音源をもらってダサいと思うこともあるけど、あの頃の俺の方が全然ダサい。そう思うと全員油断できないと思っちゃうね。
渋谷:俺もその時の自分を投影させるのは、すごくやっちゃう。その当時の自分と比べたら「こっちの方がカッコイイわ」と思う。全員がライバルに見えるのは分かるな。
アフロ:渋谷はライバルと思いつつ、フックアップしてあげる気持ちもあるんだよね?
渋谷:フックアップという言葉自体はおこがましいからあまり好きじゃないけど、あくまで俺たちを観に来てるお客さんの前で、ライブをやる機会をプレゼントする気持ちだよ。
アフロ:どう言い換えても、フックアップに変わりないよ。「自分の持ってる力を自覚した上でフックアップしてる」という言葉は潔くてカッコイイと思うんだよね。それで相手がフックアップされて嫌なら断ればいいし。それをわかった上でステージに立って、気分が悪いならそう言えばいい。
渋谷:そういうからには、今後MOROHAがフックアップした若い奴らは超注目されると思うよ。
●「俺はポップスを歌う」と胸を張った姿勢は悔しいけど俺がSUPER BEAVERの好きなところだね●
アフロ:でも、俺は好きなバンドが少ないのよ。良いと思えるものが少ないのは、鋭いわけじゃなくて逆に鈍いんだと思う。カッコよく言えば「俺は本物しか認めない」という言い方もできるじゃん。でもさ、カッコ悪く言えば「良いと思える感性が著しくない」ということなわけ。
渋谷:それは自分が良いと思って削ったものじゃん。最初からないの?
アフロ:どっちとも言えるかも。そういう姿勢はしょうもないと思わない? アングラって、そういうところあるじゃん。こだわりの強い男が“簡単に良いと言わない美学”というか。そこに疑いを持つね。
渋谷:確かに固執しているのと、こだわっているのは違う気がする。行き過ぎて固執している部分が見えると、それって本末転倒だと思う。
アフロ:そうだよね。しかも、それはお客をたぶらかすためのまやかしに使えるじゃん。「分かる人だけが分かれば良い」って歌う本人が言っちゃうと「俺は分かる側の人間なんだ」と聴き手に優越感を与えることになって、それはしょうもないよね。
渋谷:そういうプライドの高そうな人は鼻持ちならないな。
アフロ:好きなものが少ないということは、そこに属しそうな自分がいるわけ。その中でハードコアを好きなお客さんがバーッといるHAWAIIAN6主催の『ECHOES 2018』で、ビーバーはポップスの看板を背負って歌った。言ったらさ、ハードコアの人たちは(ポップスを)一番認めたくないはずなんだよ
渋谷:ジャンルで括っちゃうのは良くないけど、そうだよね。
アフロ:ただ、HAWAIIAN6がビーバーに声をかけた時点で物語っているけど、本当の本物は貫いている人に対して敬意があるじゃない。だけど、そうじゃないアングラ・ミーハーの「誰も知らないものを知ってる俺が偉い」「みんなと違うものを好きだと言ってる自分が偉い」みたいな人は、ポップスという響きにものすごいアレルギーがある。そこに向かって「俺はポップスを歌う」と胸を張った姿勢は、悔しいけど俺がビーバーの好きなところだね。
渋谷:それは「感性が鈍い」って話と別じゃん。その人たちの「俺はこれしか聴かない」という固執してる姿勢とは違って、アフロはこだわっているから狭いわけじゃん。それって、鈍いと言うよりも敏感だからこその線引きだと思うけどね。
アフロ:その線は少しずつ拡げていかなきゃいけないと思う。みんなと同じ教科書を与えられて、その中で自分だけの感想を持って描かないと己のキャパがでかくならない。そう思うと、嫌いって言うと教科書を閉じることになるじゃん。それは気をつけないとなって。
渋谷:でもさ、教科書は日頃から開いていたわけじゃん。与えられたものを「読みません」じゃなくて、一度目を通したものを「読まない」という決断をしてきたんじゃないの?
アフロ:「全然良くねえなぁ」と思いながら読んでたよ。
渋谷:一回、目を通すかどうかは違うんじゃない?
アフロ:渋谷は相変わらず優しいね。だって俺はケチをつける気満々で開いてたんだよ。
渋谷:斜に構えて読んでいたのね。その思考は恐らく直らないよ。アフロはそういう人だから。
●結果が出たとは言いたくないけど、お互いに景色は変えてきてる●
アフロ:俺は好きなものが本当に少ないから、逆に好きな人にはとことん愛情表現をしようとツアーを組んできた。そもそもバンドマン同士の愛情表現なんてさ、自分たちの企画に呼ぶ以外にないよ。「良かったです」とか「今度、一緒にやりましょうね」とかじゃなくて、オファーをくれたバンドは本当に自分たちを好きなんだなと思う。Twitterで「あのバンドがカッコ良かった」じゃなくて、オファーをして「ギャラを払うから出てください!」ということが愛情の伝え方だから。
渋谷:それは本当に大事だよね、行動に移すってことだから。それで言えば俺たちもMOROHAをライブに誘ってるじゃん。
アフロ:ちょっと待ってくださいよ、最初にオファーしたのは俺らだから。
渋谷:思えば最初に会ったのは、2014年の『京都大作戦』でさ。あの時は本当に目も合わせてくれなかったよね……どういうつもりだったの?
アフロ:多分、『京都大作戦』の時にビーバーのライブは観てない。その次に静岡で一緒にやった時は全然良いと思わなかった。で、その後に観たライブがすごい良かったんだよな。
渋谷:「最初は感じなかったけど、次に観た時は良かった」そういうのはあるよね。
アフロ:今後、お互いに「あれ、全然良くないな」って思うことあるのかな? でも、関係が長くなると余計に言葉が響いてくるのか。
渋谷:どうだろうな。とあるバンドだけど「こいつらは変わったな」と感じたことはあるな。それは周りの環境や、仕事するスタッフが変わったり、社会の渦に巻き込まれたら仕方ないと思うけど。
アフロ:良いバンドはヘソを曲げる前に結果が出たら良いよね。
渋谷:そうだね、マジで思う。
アフロ:結局、ヘソを曲げたら戻ってこれないもん。(渋谷は)ギリギリセーフだったんじゃない?
渋谷:本当にそうだよ。結果が出たとは言いたくないけど、お互いに景色は変えてきてるじゃん。だって2人の話をこんな良い店で、ご飯を食べながら喋って仕事になる。こんなのマジで考えられないよ。昔は金がなくてヒーヒー言ってたじゃん。「全然お金ないから、今日は酒を飲めても2杯までが限界かな」って。
アフロ:アハハハハ、あったね。
渋谷:今が売れているとは思わないけど、あの時代から考えたら景色は確実に変わってる。特に俺たちの年齢は、そう思える状況に自分たちを持ってこれたかどうかは、やっぱりデカイよね。変なことは言えないけど、俺はこの歳でアルバイトを出来なかったと思うもん。
アフロ:バイトを出来る人間と、出来ない人間はいて。苦じゃない人もいるんだよ。そういう人の方が社会人としてはすごく向いていて、人間の能力は抜群に高い。周りにもいるんだけど、働き始めたらすぐにバイトリーダーのポジションになって、メキメキと頭角をあらわす人。そういうタイプは「バンドでどうにかしよう」というたった1点の意欲が、俺たちよりも低いのかもと思う。
渋谷:そうだね。バンドじゃなくても、他で食い扶持を確保できるわけだからな。
アフロ:フラワーカンパニーズの(鈴木)圭介さんも言ってた。「バイトをしたらお釣りとか間違えるし、めちゃくちゃ怒られる。もう歌う以外の仕事がないから、必死にしがみついてやるしかない。その結果、今も歌えてるんだ」って。
渋谷:しがみつくことの大切さだな。
アフロ:仮にさ、ビーバーの渋谷以外が悪いことをして逮捕された。そしたら、1人で弾き語りをせざるえない。それでも音楽はやれる?
渋谷:やっちゃうね。悲しいかな「フロントマンだから」というのはあると思う。バンドメンバーは信頼してるし、他の人と音楽をやりたくないと思う反面、「俺1人でも出来なきゃダメだろ」と思ってるんだよね。今、弾き語りを始めたら最初のうちは注目されるチャンスがあるかもしれない。だけどチャンスが1つもなくなって、自分が周りから「なんか、可哀想だな」って同情されていると思った瞬間「もう無理かも……」ってなるかな。
アフロ:結果って周りにすごく作用するじゃない? 俺たちのことを好きで「MOROHAの物販をやりたいです」と言ってくれる人がいても、お客が来なかったらそいつのモチベーションが下がるわけで。そしたら、自然と人が離れていくと思うんだよ。やっぱり人がいなくなるのは寂しいし、好きな人には側にいてほしいじゃん。そういう意味でも結果を出すことは大事よね。
●自分の不甲斐なさを常々感じてないといけない。だって目をそらすのはズルいじゃん●
渋谷:今の年齢も含めて、この状況で結果を意識しなかったら嘘かなと思っちゃう。俺は天才とか、カリスマと言われている人たちと違う部類に入るから、実は堅実だと思うんだよね。ロマンチストな面もあるけど、もっとリアリストだと思ってる。ただ、全部数字で求める超リアリストというよりも、数字じゃない結果を求めるリアリストなんだよね。
アフロ:数字じゃない結果って何?
渋谷:バンドの評価、交友関係、自分の音楽に対する充足感と……難しいな。あくまでメインじゃないけど、やっぱり数字も切り離せないかも。
アフロ:その充足感は今どうなの? どのくらい満たされてる?
渋谷:楽しいな、とは思ってる。悩むこともあるけど、悲観的な悩みじゃない。
アフロ:それは今までと違う?
渋谷:3年前とは違うかな。俺らお互いに水商売なわけじゃん。今だって、食えなくなったらどうしようっていう不安は抱えつつも、3年前は「現時点で食えないぞ」という状況だった。現状は音楽でご飯が食べられているし、そうなってきた経緯も自分で知ってる。例えば、ドラマのタイアップをさせてもらう話もそうだけど。それは、ふっと湧いて出た話じゃなくて、その話をくれた人と2年くらいの付き合いがあるんだよね。普段からご飯を食べに行って「自分の音楽はこうだ」と話をしたり、相手も「俺はSUPER BEAVERの音楽をこういう形で世に広めたい」みたいなことを散々話した上で決まったことで。メジャーというものが渦巻いている中、火曜よる21時のタイアップを取ることがどれだけ大変かも何となく分かるわけ。今まで不透明だった部分がなくなってきてるから、楽しいという感情がピュアなのかなって思う。集客、物販の分配、原価率、どのフェスで何がどのくらい売れた、というのも全部把握してる。
アフロ:なるほど。地に足が付いていて、結果と原因が自分で把握してるから反省もしやすいんだね。
渋谷:だから不透明な不安はない。具体的な不安と具体的な楽しさしかないな。
アフロ:そういう意味ではメジャーのシステムは具体的なものを霧の中に隠してしまうよね。お
金の話でいうと、ライブ1本のギャラはいくらか?みたいな話にもなってくるじゃない。明らかに客の入りが微妙だった時に「この人が、自分のポケットマネーで補填するんだろうな」とよぎったりするでしょ。そこに応えられなかった場合は、自分の不甲斐なさを常々感じてないといけない。だって目をそらすのはズルいじゃん。自分たちの力を把握して、どれだけの集客があるのか、今の結果は誰のおかげなのか。そういうのをちゃんと意識しないといけない、と思っている。それを考えると俺らも「もっと頑張りたい」と思うよね。
渋谷:メジャーは、露骨にお金が降りてこなくなる瞬間が見えるよね(笑)。
アフロ:ビーバーもそんな瞬間があった?
渋谷:俺らがメジャー行ったときは、3枚目シングル(『シアワセ』)で色々あって資金不足になった。その当時はワケわからなかったよ。「なんでお金がないんですか?」と聞いたら「使っちゃったから」「え、何に!?」って。その内訳を聞いたら、全く意図してないプロモーション料だったりして……なんか生々しい話だね。
アフロ:そう思うと、どうしても結果が必要だよね。
渋谷:まあな。
アフロ:そう考えたら、今のSUPER BEAVERは純粋に眩しいよ。
渋谷:そんな対象じゃねえけどなぁ。
アフロ:眩しいと言われて、ちょっとダサくなったら面白い(笑)。
渋谷:アハハハハ、負けないぞぉ!
アフロ:いやいや、渋谷さん……今、モテるでしょ?
渋谷:そんなことないっすよ。むしろ、どうしたら良いんですかね?
アフロ・渋谷:アハハハハハ! 
取材撮影協力=propeller 東京都渋谷区恵比寿3-28-12OAKビル 1~2F
文=真貝聡 撮影=高田梓

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