第13回 フランスへのリベンジ〈後編
〉最終回
ただし、前回触れたようにそのフランスでフィリップ・コーエンと意気投合、すっかり気を良くしたのもつかの間、ホテルにもどるとちゅう悪寒が背中を走る。わるい予感は実感になる確率が高い。夕食時、まわりの会話がどんどん遠くに聞こえ、ほとんど料理に箸をつけることもなく中座。部屋にもどるといっきにそこでだるくなり、脇の下からイヤな汗が吹き出てきた。完全なる風邪である。こんどこそ一泡吹かせるつもりじゃなかったのか……(苦笑)。
いうまでもないことだが、海外で病に冒されることほど最悪なことはない。なにより同行者に迷惑をかけてしまう。かつてニューヨークに行ったときもそうだった。むせかえるような夏の日、体の半分は汗じゃないかっていうくらい肌と服のあいだをべたべたにしながらひたすら寝たが、今回は冬である。おもうように発汗できない。もっとも、温かくして寝て汗をかくと治る、というむかしながらの知恵、療法はどうやらたしかな根拠がないらしいけど。
ロンドンは今日も曇りだった
いずれにせよ自力でなんとか持ちこたえ、取材後半となったイギリス、ロンドンへ移動。これが南国みたいな街だったらかえって圧倒され悪化していたのかもしれないが、そこは霧の街。寝ぼけ眼のような空が刺激にならずによかったらしい。幸いそのころには体調が回復、順調に仕事をこなす。さぁ気を取り直して!
ここでも、ジャズとクラブ系の二本立てで予定メニューを組む。まず前者。待ち合わせの場所となった名門〈ロニー・スコッツ〉に出向く。ブリティッシュ・ジャズ黄金期の60年代を牽引したレンデル=カー・クインテットで知られるトランペット奏者のイアン・カーが待ってくれていた。
あのころDJ修行とか、そういうのをやるためロンドンに行く若者がすくなくなかったけど、最近はどうなんだろう。なにもかもドメスティック志向になってるし。
ごあいさつ
さてさて、タイトルにもあるように今回をもって本連載はおわります。
この一年おつきあいしていただきありがとうございました。
またお会いできる日を願って……。
第13回 フランスへのリベンジ〈後編〉最終回はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
アーティスト
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。