【BUGY CRAXONE インタビュー】
バンドの静かなる闘志が結実した一枚
結成20周年イヤーを駆け抜けたBUGY CRAXONEの新たな一歩は思っていた以上に大きな跳躍に! バンドを代表して、すずきゆきこ(Vo&Gu)が14thアルバム『ふぁいとSONGS』に結実したバンドの静かなる闘志を語る。
『ふぁいとSONGS』はタフな現状をしっかりと見据えながら前向きなヴァイブが感じられる作品になりました。
去年11月に渋谷CLUB QUATTROで20周年記念のワンマンがあって、そのあとにそこでやらなかった曲を中心に、ワンマンをもう1回やろうということで今年の2月に渋谷TAKE OFF 7でやったんですけど、それをやるにあたって、これまでの13枚のアルバムを全部振り返ってコピーしたんですよ。“これ、絶対ライヴでやらないだろう”という曲も含め1曲もこぼさず、全曲やろうってやってみたら、いろいろ気付きがあって。2月のワンマンが終わってからそろそろ曲出ししようかって曲を出してみたら、いろいろなタイプの…それこそ13枚全部振り返ったことがプラスに働いた曲作りをそれぞれにしてきて、こういう曲がまたできるんだったらバンドを楽しくやれるなって思いましたね。21年目に突入するにあたって、みんな口には出さないけど、やるからにはより充実したバンド活動をやっていこう、作品も残していこうっていうのがあったと思うんですよ。そういう気合いも含めて静かなる闘志が結実した一枚になっていると思います。
今回、バンドが大きく跳躍した印象を受けて、それが驚きでもあり、嬉しくもあったんですけど、それはそういうバックグラウンドがあったからなのですね。
曲のバラエティーがすごく増えたのは、さっき言ったおさらいがあったからですね。それが大きかった。自然な流れでむちゃしない曲を書くようになると思うんですよ。体が付いていく付いていかないもあるし…服装も一応は年相応の格好ってあるでしょ?(笑) それと同じように曲もそうなっているところが、きっとあったと思うんですけど、自分が若い時に作った曲をおさらいしたことで、いい意味で弾みがついた。そこと無駄なことはしないといういいバランスを、今回ひとつ掴んだというのはあります。
ギターのファンキーなリフが印象的な「ぼくらはみんなで生きている」は、バンドに加わった新たな要素を象徴していると思うのですが、80年代のプリンスっぽいところがちょっとあると思いました。
ところで、前作では上下の世代に挟まれた人たちの気晴らしになるような作品にしたいとおっしゃっていましたが、今回は1曲目の「わたしは怒っている」に顕著なように、今の世の中に対して抗議しているようなところもありますね。
今に始まったことじゃないけど、今年は特に自然災害も多くて、町の雰囲気も、みんなの顔つきもちょっと変だなって日々生活しながら思うから、その中で自分にもみんなにも問い掛けているというか、“大丈夫なの? ちょっとおかしくなってない?”と思うことが多いこの何年かなので、自然とそういう気持ちは出ているかもしれないですね。いつも以上に。もしかしたら“無責任なバンドマンが何を言ってるんだ!”って思う人もいるかもしれない。でも、私も社会の一員として生きてるし、そもそも納税してるわけだから(笑)、“好きなことだけやってていいよね”って言われるのは心外だし、嫌なことだって、得意じゃないことももちろんやっているってことは踏まえた上で、こんなにもみんなの表情が暗いのかと思うと、もっと元気になってほしいと素直に思いますよね。
歌詞カードを見ると「ぼくらはみんなで生きている」と「めんどくさい」はほぼ平仮名で書いていますが、これはあえてなんですよね。
平仮名が多いと読みづらいので、漢字を極力入れようと思うんですけど、例えば「ぼくらはみんなで生きている」の《あたまをつかって》の《あたま》を漢字にしちゃうとイメージが1個に限定されちゃう。でも、もっと幅広く考えてほしいから平仮名にしました。平仮名が持っている余白は結構大きいと思います。歌詞カードを見ながら聴いてもらうのも音楽の楽しみ方のひとつだと思うので、そこでもできるだけ自分の気持ちに合った表記にするようにしているんです。
改めて、どんなアルバムになったと思いますか?
“言葉が届く音楽=歌”ってところで考えたら、やっぱり頑張ろうという気持ちになったりすることが私たちの音楽のひとつの役割だと思うから、それがより色濃くできた一枚だと思いますね。たぶん、今の日本で私たちと同世代の人ってしんどいことが多いと思うんですよ。手放しに楽しいって言える人ってよっぽどしっかり何か準備しているか、ほんとに何も考えていないかどっちか。大体の人は、なんだか分からないけど、ここまで来ちゃって、その中で怖くなることって多いと思うんですけど、そこで頼りにしなきゃいけないのは自分なんだっていう。そこで誰かに何かをしてもらおうとか、国に助けてもらおうとかっていう心持ちで私はいたくないと思っているんですけど、そういう人たちもきっと多いと思うんですよ。そういうことを前提として、大人として生きている人に“分かる! その気持ち”って言えるアルバムが作れて満足しています。
最初におっしゃっていたバンドの静かなる闘志ですが、ここからどこに向かっていくのでしょうか?
ひとまずはアルバムをリリースして、10月21日の発売記念ライヴと、そのあとにあるだろうツアーを成功させたいですね。ロックバンドの在り方もどんどん変わっていると思うんですけど、大人になれない人の集まりにしたくないというか、大人が健全に楽しめる場所にしたいんです。少なくともBUGY CRAXONEに関しては。そもそも若者カルチャーのものだから、私たちと同世代のファンにとってライヴハウスも来づらい場所にはなっていると思うんですけど、私たちらしいやり方で大人が楽しめる場所をしっかり作っていきたいと思っています。
取材:山口智男
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アルバム『ふぁいとSONGS』2018年10月17日発売
テイチクエンタテインメント
ワンマンライブ『「ふぁいとSONGS」発売記念“みんなでがんばろうぜ”』
10/21(日) 東京・渋谷TSUTAYA O-Crest
『BUGYのナイスな生き様ツアー』
[ 2019年 ]
2/01(金) 北海道・札幌COLONY ※ワンマン
2/07(木) 大阪・Live House Pangea ※いろいろ未定
2/08(金) 愛知・名古屋HUCK FINN ※いろいろ未定
2/14(木) 東京・新宿red cloth ※対バン有
2/15(金) 東京・下北沢SHELTER ※ワンマン
ブージー クラクション:1997年5月に札幌にて結成。99年3月にビクターエンターテインメントよりメジャーデビュー。2003年4月にレーベルとマネージメントを兼ねた『ZubRockA RECORDS』を設立。以降、多彩なアイテムのリリース&ツアーをコンスタントに重ね、07年に増子直純(怒髪天)主宰のレーベル『Northern Blossom Records』での活動を開始。17年、『Imperial Records』に移籍。同年1月に結成20周年記念ベストアルバム『ミラクル』をリリース。BUGY CRAXONE オフィシャルHP
「ふぁいとSONG」MV