【ライヴレポート】SUGIZO、9.11公演
で「祈りを込めて今日ここに立ってい
ます」

SUGIZOが全国ツアー<SUGIZO TOUR 2018 “Do Phoenixes Dream of Electronic Music?”>の東京公演を9月11日、Zepp DiverCityで開催した。
同時多発テロで世界中が衝撃と悲しみに襲われた9月11日のことをSUGIZOはツイッターにて、“9.11。世界が音を立てて変貌したあの日から17年。あれからずっと我々は混迷の中にいる。紛争。啀み合い。そして辛辣な災害の数々。絶望は連鎖を続ける。今はただ心からの祈りを持って生きるしかない。”と記していたが、この日にライヴを開催することの意義をSUGIZO自身はもちろん、集結したオーディエンスも噛み締めていただろう。
本ツアーは9月5日にリリースされた映像作品『Unity for Universal Truth』を携えて行われたもの。と同時に西日本豪雨の被災地であり、SUGIZO自身がボランティアに従事した岡山でのライヴがセミファイナル、9月17日のファイナルが2011年の東日本大震災で余震の続く中、現地入りして自ら汗を流し、その後も何度も訪れている石巻公演という日程が物語るように、SUGIZOのアティテュード、祈りが込められたものだ。

いつにも増してSUGIZOが発信し続けている音楽と、彼がアンコールで発した言葉でのメッセージが高い次元で融合し、刺さってきたのがZepp DiverCityでのライヴだった。

開演前のステージにはモジュラーシンセを駆使するHATAKENがスピリチュアルなサウンドで場内を神秘的な世界に導き、やがてSUGIZOのライヴは幕を開けた。
SEはリミックスアルバム『SWITCHED–ON OTO』に収録されている「Replicant Decaying」(Remix by 藤井 麻輝 [minus(-) / 睡蓮])。暗いステージに強く白い光が点滅し、エッジーなサウンドとVJ ZAKROCKによる映像が緊張感を高める中、SUGIZOがフライングVタイプのECLIPSE V-IXをかまえ、ステージに登場すると待ちわびたファンの大歓声。

現代音楽とクラブミュージックをかけあわせた“怒れる電子音楽”がモチーフになった画期的なアルバム『音』、そこに収録された「禊」からライヴはスタートした。まばゆい光の中、SUGIZOの力強いストロークが響き、パーカションのよしうらけんじがジャンベを叩いて、ステージ前方に出てくると歓声が上がった。センターでSUGIZOと向かい合い、のっけから刺激的なセッション。恍惚へと導かれるサイケデリックトランスナンバー「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?」ではSUGIZOのエナジーが爆発するようなトリッキーなギターソロに「うぉぉぉ~!」という声が上がる。

「東京! お待たせしました。SUGIZO、帰ってまいりました。今日、9.11にみんなと昇天できることを心から楽しみにしていました」──SUGIZO

音に魂が宿っていること、その音の中に身を委ねる快感を感じさせてくれるのがSUGIZOのライヴだ。高揚感溢れるビートとSUGIZOの鋭く小気味いいストローク、印象的な美しいフレーズが癖になる中毒性のあるナンバー「FINAL OF THE MESSIAH」ではハンドクラップで一体に。komaki (Dr)、MaZDA (Mani& Syn)、よしうらけんじ (Per)とのアンサンブルは見るたびに強力になっていき、ひとつの生命体のごとく感じる場面もしばしばだ。時にリボンコントローラーを操るSUGIZOのギターの集中力にはすさまじいものがあり、一音にこめる気合い、根底にある熱いロックスピリッツに圧倒された。
エレクトリックダンスグルーヴと美しいオーケストレーションのコントラストが身も心も揺らす「FOLLY」では平和に尽力し、戦った偉人たち、チェ・ゲバラやマザー・テレサ、ガンジーらの写真が映し出され、静寂のエンディングではSUGIZOが祈りを捧げているように見えた。

宇宙の彼方へとぶっ飛べるSGZミュージックは五感を刺激し続ける。“SAVE SYRIA”の文字が記されたNavigator製メインギターに持ち替えた「NEO COSMOCAPE」ではハンドクラップで盛り上がる中、よしうらがジャンベで煽り、SUGIZOがパーカッションを担当するというおなじみの熱い競演が繰り広げられ、フロアもトランス状態に。時間の感覚も溶け出していく中、スクリーンには宇宙の惑星の映像が広がり、SUGIZOがヴァイオリンを奏でる「Proxima Centauri」は映画音楽のような音像。慈愛に満ちた音に癒され、浄化される感覚を覚えた。

そして最新オリジナルアルバム『ONENESS M』に収録されている「絶彩」はひときわ衝撃的だった。オリジナルではDIR EN GREYの京がフィーチャリングされているが、ボーカルパートをSUGIZOがヴァイオリンで奏で、ゲストパフォーマーのYUSURAとのコラボレーションに釘付けになった。ステージ上手に置かれた透明な半球体の中に入ったり、その上に立ちあがって心の叫びを全身で表現するYUSURAのパフォーマンスは絶望と希望が入り混ざった楽曲の世界観を視覚的に浮き彫りにさせ、場内からは歓声と惜しみない拍手が。YUSURAのアクロバティックなパフォーマンスは前回のツアーでも強烈な印象を残したが、いくつもの舞台音楽を手がけ、自身も出演しているせいか、近年のSUGIZOのライヴはシアトリカルという視点でもより楽しめるものとなっている。

再びECLIPSE V-IXに持ち替えての「Lux Aeterna」から「ENORA GAY RELOADED」、「Decaying」へと移行したセクションでは争い、災害がやまない不穏な世界へのSUGIZOの怒り、やりきれない想い、祈りがブーストするアクトが最強。特に上手下手へと動きながらプレイする「Decaying」の衝動性の高いギターサウンドはますますキレとスピード感を増しているように思えた。

そして『ONENESS M』でToshIがボーカルをとったサイケデリック・トランス・ラウドなナンバー「PHOENIX -HINOTORI-」は本ツアータイトルのメッセージと直結する楽曲。ToshIの声がバックに流れ、YUSURAが和太鼓を力強く叩き、音楽の根源的なパワーを喚起させる演奏で惹きつけた。ラストは喜怒哀楽の全てを昇華させる至福のファンクダンスナンバー「DO –FUNK DANCE」だ。ミラーボールの光が回り、今度はYUSURAはギタリストとして参戦。SUGIZOと背中合わせでギターを弾きパフォーマンスする姿は性別を超越し、フロアを昇天させ、本編が終了。SUGIZOは「東京! ありがとう! 最高でした!」と告げ、メンバーを紹介。5人並んで挨拶をして拍手が降り注がれる中、ステージを去った。
アンコールを求める声が上がり、ベストアルバム『COSMOSCAPE II』が12月にリリースされる告知がスクリーンに映されると歓声が。さらに、地球平和と難民問題を提起したメッセージが込められた衣装“ガイア”(今年のLUNA SEAの日本武道館公演で初披露)を着たSUGIZOが本ツアーへの想いを語った。

「9月11日にこうやってみんなと一緒に大切な時間を過ごせたことは本当に最高に光栄です。とてもとても大きなスピリチュアルな意味を感じています」──SUGIZO

そして9月6日に北海道を襲った震度7の大地震を受け、ツアー開催への迷いがあったことが明かされた。

「台風21号の被害、4月の大豪雨、俺もボランティアに行ってきた岡山もそうだけど、本当に多くの被災地に苦しんでいる人がいて、先日、北海道でもああいうことが起きてしまって、正直、ツアーもやりたくなかった……。“こんな時にのんきに音楽やってていいのか?”、“こんな時にみんなとハッピーで気持ちいい時間を過ごして罰当たりじゃないか?”って。できることなら全てをキャンセルして被災地に飛び込みたかった。……でも、試行錯誤の末、今の自分の役目は泥まみれになることではなく、音楽を奏でてみんなと感動を共有することだって。全員に生きている意味があって、大事なことは全員にハッピーになる資格があること」──SUGIZO

日本の被災地で身を粉にして困っている人たちのために泥だらけになって働き、ヨルダンのシリア難民キャンプを訪問し、音楽を通して現地の人たちと触れ合ってきたSUGIZOのメッセージは体験を伴っているからこそグサグサ突き刺さる。痛みを知っている人間ゆえの愛がある。

「本当に思う。被災者、紛争の中で生命をギリギリで繋いでいる人、怪我で苦しんでいる人、全ての困難な状況にある人に手を差し伸べたいし、心を寄り添わせたいし、できれば共に生きたいと。でも、不幸な人につられて自分が不幸になる必要はない。俺たちには幸福や気持ちよさをいただいていい権限がある。最高にハッピーになって最高の宇宙を感じて、その感動を苦しんでいる人に送ってあげたい。そういう自分なりの祈りを込めて今日ここに立っています。みんなもそういう感覚だと思います。なにげない日常がすごく大切で、普通のことが奇跡の積み重ねなんだと今は強く思います。みんなとここで会っているのも奇跡、音楽で一緒に感動できるのも奇跡。その当たり前の奇跡をとてもありがたいと思って、感謝の念を持って、これからも一緒に生きていきたいと思います」──SUGIZO
そのメッセージはまさにSGZミュージックとイコールであった。続いて、リリースされるベスト第二弾『COSMOSCAPE II』はこの10年の集大成であること、初音源化の曲も収録されること、リミックスアルバム『SWITCHED–ON OTO』が全世界で配信されることを報告。改めてメンバーを呼び寄せる最中に足元の携帯電話が鳴り、スタッフに「今、鳴らすなよ」とダメ出しして場内を沸かせたのもSUGIZOらしく、アンコールへと突入。

「TELL ME WHY?」で力強い叫びを響かせ、「今だからこそ、とても大切な曲をみんなに届けたい」とMAIKO (P)とHATAKEN (Syn)を呼び寄せ、ヴァイオリンに持ち替えて演奏されたのはピースフルなヴァイブレーションに包まれる「The Voyage Home」だった。スクリーンに映る寄せては返す波と子供たちの無邪気な笑顔。最高で最強で最狂で最幸のSGZミュージック。そのエナジーを全身に浴びた後は身体が軽くなったような気がした。

取材・文◎山本弘子
撮影◎Keiko Tanabe/Yusuke Okada

■<SUGIZO TOUR 2018 Do Phoenixes Dream of Electronic Music?>9月11日(火)@Zepp DiverCityTOKYOセットリスト

SE. Replicant Decaying
01. 禊
02. TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?
03. FINAL OF THE MESSIAH
04. FOLLY
05. NEO COSMOSCAPE
06. Proxima Centauri
07. 絶彩
08. Lux Aeterna
09. ENOLA GAY RELOADED
10. Decaying
11. PHOENIX -HINOTORI-
12. DO-FUNK DANCE
encore
en1. TELL ME WHY?
en2. The Voyage Home

■ベストアルバム『COSMOSCAPE II』

2018年12月リリース予定

※『SWITCHED-ON OTO』世界配信決定

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