6月30日(土)@千葉・柏PALOOZA photo by 緒車寿一(OGURUMA TOSHIKAZU)

6月30日(土)@千葉・柏PALOOZA photo by 緒車寿一(OGURUMA TOSHIKAZU)
“いや、いつも通りっすよ。毎度のことですけど” 今やすっかり休みなく動き続ける事が定番化しつつあるOBLIVION DUSTの、このツアーへの取り組みに対して意気込みを聞くと、なんとも素っ気ないRIKIJI(Ba)の返事には“常に日々全身全霊が当たり前”という主張が込められている。彼ららしいと言えばそうなのだが、淡々というわけでもなく、かといって決して浮き足立つこともなくピリピリした空気でもない。どうやって自分たちのベスト・パフォーマンスをステージで出すかということに関しては、もう彼らなりのルーティンがあるということなのだろう。ならば先ほどから見え隠れする、この些細な変化は本番のステージで答えが見えてくるのだろうか?

「In Motion」「Under My Skin」と最新作『DIRT』の定番曲でショーがスタート。相変わらず演奏は、まるで凶暴な野獣性を抜群のコントロールで操りながら、リミットギリギリのところを的確に突いてくるような緻密さだ。ある関係者が呆れながら“よくあの演奏の中で引っ張られずに歌えるよね”と、前回のワンマン後にKEN(Vo)に告げて来たという。ショーの中盤には「Again」「Bed of Roses」「Baby It’s All Good」とここ最近では、ほとんどセットに入らなかった楽曲群が次々と披露される。“ここ2回のツアーでは、セットリスト全体の完成度を求めてたからなんだけど、ちょっとパターン化されたみたいになってたというか。ここらでもう一度見直してみようかなって” 今回のセットリストはKEN LLOYD(Vo)が監修することになり、リストを考えているうちに、色んな発見があったという。

“オブリは絶望的な気分で暴れてなんぼというか、野生と知性っていうか、そういう逆の要素を組み合わせる事が魅力だと思ってるけど、『DIRT』では特にその面を強烈に出したかったっていうのはあって。でもその圧力を出すことに集中しすぎて、異様に肩の力が入り過ぎちゃって、これはこれで自分らしくないというか” 確かにこの一年の彼のステージでの姿は、まるで全てを振り絞って、身体の中の感情を全て肉声として出し切るかのような、ある意味苛烈な歌い方をしていた。このバンドはクリーントーンも歌いながら、時として強烈に叫び、その直後にはファルセットで締めるなどという、おおよそ喉を使う仕事としては、基本原理に反するようなことを強いている。その上でステージ上では常に飛び跳ね回っているのがKEN LLOYDなのだ。普通は“これじゃあ歌えないかも”とか、上手くやろうというバランス感覚が働きそうなものなのだが、それが一切なく、ただひたすら仕上がりの完成度だけにフォーカスしており、ここに緻密極まりないK.A.Z(Gu&Pro)の作曲・アレンジが組み合わさることが、このバンドの異質な魅力と言える。

ショーもいよいよ後半戦かという頃、80’sっぽい特徴的なシーケンスのイントロが流れ始める。怪しくもアップテンポな雰囲気に若干観客も戸惑い気味かと思いきや、実際は固唾を飲んで次の展開を見守っているようだ。それは扇情的で伸びやかな、非常にOBLIVION DUSTっぽいコーラスを聞いた途端に、一気に場内が飛び跳ね出したことで確証となる。その軽妙なシーケンスからは想像が付きにくいアレンジで、コロコロと表情を変えながら、サビにたどり着く頃にはすっかりOBLIVION DUSTらしいアッパーな曲になっており、最終的には締めの“サテライト”という言葉の響きばかりがやたら頭に残る、なんとも不思議な魅力を放つ曲だ。これがツアー直前に予告されていた新曲の「Satellite」だと言う。

“ツアー中にさらに追加で披露できる曲があると思います”というKENのMCを受けて、さらに新作について突っ込んで聞いてみた。“あの「Satellite」は自分が書いてストックしていた曲で、ちょっとだけ未完成のままだったのね。それをK.A.Zが“これはすぐにまとめられる”って言うから、バックトラックをやってもらう間に、こっちは急いで歌詞を仕上げようってことになって。そしたらRIKIJIも細かいアイディア出してくれて” 作り始めたらあっという間ですよと言わんばかりのドヤ顔で語るKENだが、続く新曲も観客の予測を気持ち良く裏切る展開を企んでいるのだろう。

“今回はライヴで一曲ずつ確かめながら、微調整しようって言ってるんですよ” すでに「Satellite」では、曲のスピードを幾パターンも試してみた上で決定したというRIKIJI。最終的にアンサンブル面で、彼の意見は常に重要視される。曲を仕上げていく過程で、他の二人が見えていないポイントを指摘し、新たな視点を提案しながらも、時としては大きく差し替えるようなアイディアも出すのがRIKIJIの役目だという。

“次の作品は『DIRT』と並べると、より引き立つようなものになると思う。全然違うようで、統一されているところもあったり、でもライヴでやると一体感が生まれたりするような” こう展望を語るのは再びKENだ。彼らは2018年になってから完全に次作の制作モードに入っており、同時にKENも自分の歌声に対する、新たな挑戦に繋がっているという。“伸びやかに歌う時と、強く歌うときは使う筋肉の場所を変えていて、それを瞬間でスイッチ出来るようにしながら、身体全体を振動させるようにしてるんだよね” 全て感性のみで突っ走ってきたかのように見える総天然男子のKENが、まさかの理論的なアプローチに一瞬耳を疑ってしまったが、しかしよく聞くとこれも実際は非常に皮膚感覚に根ざした話である。バンドの圧倒的な演奏力に対して、単なる肉体的なパワーだけではなく、身体的な共鳴を如何に響かせるか?それは爆音の中で、自分の声をさらに響かせるために自然と出て来た進化なのだ。

「You」「Evidence」「Designer Fetus」と代表曲を畳み掛けてショーを締め括った時に残る残響感が、これまでのOBLIVION DUSTと一味違う印象を大きくしている。同じ曲で同じメンバーが演奏しているにも関わらず、まだ何か奥の手を隠しているかのような、このバンド特有の悪巧みの匂いと言ったらいいのか。全国17カ所のツアーはまさに始まったばかりで、その奥の手はこれからどこかで徐々に明かされるということなのだろうか? これはますます目が離せないツアーになりそうだ。
photo by 緒車寿一(OGURUMA TOSHIKAZU)

『OBLIVION DUST Tour 2018 Adrenaline - Come Get Your Fix』

7月07日(土) 埼玉・HEAVEN'S ROCK熊谷VJ-1
7月08日(日) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA
7月14日(土) 山梨・甲府KAZOO HALL
7月15日(日) 栃木・HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2
7月21日(土) 岡山・YEBISU YA PRO
7月22日(日) 山口・RISING HALL SHUNAN
7月28日(土) 長崎・DRUM Be-7
7月29日(日) 福岡・DRUM Be-1
8月04日(土) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
8月10日(金) 愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
8月11日(土) 静岡・ LIVE HOUSE浜松窓枠
8月12日(日) 広島・CLUB QUATTRO
8月18日(土) 宮城・仙台darwin
8月25日(土) 兵庫・神戸VARIT.
8月26日(日) 大阪・梅田CLUB QUATTRO

6月30日(土)@千葉・柏PALOOZA photo by 緒車寿一(OGURUMA TOSHIKAZU)
6月30日(土)@千葉・柏PALOOZA photo by 緒車寿一(OGURUMA TOSHIKAZU)
6月30日(土)@千葉・柏PALOOZA photo by 緒車寿一(OGURUMA TOSHIKAZU)
6月30日(土)@千葉・柏PALOOZA photo by 緒車寿一(OGURUMA TOSHIKAZU)

photo by 緒車寿一(OGURUMA TOSHIKAZU)

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着