【ストレイテナー インタビュー】
より自由に解放された
21年目のストレイテナー
アニバーサリーイヤー真っ只中のストレイテナーが秦 基博とのコラボシングル「灯り」も含むニューアルバム『Future Soundtrack』をリリース。結成から21年目を迎え、成熟とともに新しい音像を打ち出した新作についてホリエアツシ(Vo&Gu&Pf)に訊いた。
今の4人になってからの10年で
ストレイテナーとしてひとつ確立できた
もちろん、まだまだこれからだという気持ちだとは思うのですが、結成20周年及びメジャーデビュー15周年を迎え、今、どんなことを感じていらっしゃいますか?
改めてふり返ってみると、今の4人になってからの10年で、やっとストレイテナーとしてひとつ確立できたんだなって思います。今、すごく満足しているかと言ったら、まだまだという気持ちはあるんですけど、本当の意味で自由に作りたいものを作れてるし、ライヴもかなり完成されたものになってきてると思います。楽しかったからなのか、この10年があっと言う間に感じられて、逆にバンドを始めてからの10年間は長かったなって(笑)。“こうなりたい”という理想になかなか近付けなかったんですよ。そういう時期のほうがやっぱり長く感じるものじゃないですか。ナカヤマとふたりでやっていた時は、とにかく闘っているという意識でしたからね。自分たちを認めてくれる人に対しても、“いや、そうじゃないんだよね”ってみたいなところがありましたから(苦笑)。決め付けられたくないというか、自分たちでも分からないけど、自分たちの可能性を信じてたんですよ。
決め付けられたくないという気持ちは今もあるのではないでしょうか?
だいぶ薄れましたね。っていうのも、外から見たバンド像としても、ある意味確立できたというふうに思えているんで。自分たちから“こうありたいんだ”“こうなりたいんだ”ってアピールする必要はもうないのかな。
これからはそれをさらに磨いていけばいいと?
そうですね。だから、以前よりも解放されている感じはありますね。もっと自由になってきている。
それは新しいアルバムからも感じられますが、その新作は結成20周年という節目に新しい音像を打ち出しているところが良かったです。
常に新鮮な空気をバンドの中に取り入れていきたいと思ってるし、今、作りたいものって、自分たちが想像し得ないところにも届いていくような音楽なんです。昔はね、自分が思うカッコ良い音楽に気付いてくれるというか、共感してくれる人に届けたいという気持ちが強かったんですけど、今はそれよりももっと広く浸透していったらいいと思っていて。自分たちが大人になったっていうのもあるし、自分たちの音楽の聴き方も変わってきて、昔はすごく掘り下げながら聴いてたけど、今はいいものはいいというか…掴まれるものがある音楽っていっぱいあると思ってるから、自然と音の作り方とか言葉の選び方とか、ハッとするようなフレーズを目指すようになりましたね。
その“ハッとするようなフレーズ”ということがひとつあると思うのですが、今回のアルバムの全体像としては、まずどんな作品を作ろうと考えたのでしょうか?
ポップな作品にしようと意識した前作『COLD DISC』の作り方を、さらに推し進めるのか、逆に反動でマニアックになるのか、全然決めずに曲作りに入ったら、最初は反動っぽい感じになりかけたんですけど、曲を作ってバンドでアレンジしていく中で、段々とシンプルになっていきました。メンバー全員が歌の重要さに想いを寄せるようになって、かつ、その途中に秦 基博くんと「灯り」ってコラボシングルを作ったので、そこからさらに歌の重要さにシフトしていきました。だから、全体の作り方が歌っていうものに向かっていた感じはします。各々の演奏に説得力だったり、キャラクターがあって、ストレイテナーってバンドのイメージっていうよりは、曲ごとのサウンドのイメージが作れていると思います。
フレーズを厳選しているという印象を受けました。そのせいか、音の塊がガツンとくるよりは、音全体に包み込まれるような音像になったところが新しいんじゃないかと。
あぁ、やわらかくなりました? 僕たちはそんなに意図したわけではないけど、聴いた人から“全然違うね。新しいテナーだね”って言われたりもして、“そうなんだ!?”と思うんですけど、そう言われると確かにそうかもしれない。“厳選”という言葉がぴったりなんじゃないかなって思うんですけど、押し引きみたいなものもすごく丁寧にやっているんですよ。だから、アッパーな曲も衝動のままに作るというよりも、音色やフレーズを選んでいったっていう印象はあります。
音像がやわらかくなったという意味では、アコースティックギターの音色が以前よりも目立っていることも大きいかもしれないですね。
歪んだギターを両サイドで鳴らすみたいなことを、圧を出す時に決まってやっていたところがあったんですけど、今回はあまりやってないんですよ。エレキギターはOJ(大山純の愛称)に任せて、僕はアコギで、あとはシンセの音で広がりを作るっていうアレンジが多いですね。
バンドのこれからをアピールしながら同時に成熟も感じられて、“20周年を迎えたけど、バンドはまだまだいくぜ。うおー!”というテンションではなく(笑)、20年やってきたバンドならではの円熟味も新作の聴きどころだと思います。
(笑)。若い頃は大人になりたいと思っていて、作品ごとにそこを目指すんだけど、やっぱりエモーショナルなところも出していきたくなるし、まだ早いんじゃないかって思い止まったりもしてたんですけどね。そういうことが自然とできるようになったってことなのかな。