【カルト歌謡カルタ】「老人と子供の
ポルカ」左卜全とひまわりキティーズ

いつまでも人々の心の片隅に残り続ける珍曲や迷曲たち。売れることを考えて作られたとは思えない破天荒な作品に、その時代の心の豊かさと歌謡界の度量の大きさを感じる。いまこそ、その真髄を継承すべく、魔法のカルタで拡散!

「老人と子供のポルカ」

1970年発表 歌:左卜全とひまわりキティーズ/作詞・作曲・編曲:早川博二

メインボーカルの左卜全が「♪ズビズバー」と歌えば、幼稚園児の5人組によるコーラスグループ“ひまわりキティーズ”が「♪パパパヤー」と応える。呪術的とも感じる掛け合いで始まるこの曲は、その曲名どおり、当時76歳の老人であったト全と幼稚園児による前代未聞のユニットによる作品である。

左卜全と言えば、世界の巨匠、黒澤明監督が手を焼きながらも重用した怪優。身なりは、いつもボロボロでまるで浮浪者のようで、時に、晴天にも関わらず雨靴雨合羽雨傘という姿だったので、「なぜ?」と訪ねられ、「夢のお告げがあったから」と答えたという。その奇行エピソードには枚挙にいとまがない。

そんなト全が、「♪やめてケレ、やめてケレ」とほとんど泣きそうな顔で歌う。何を「やめてケレ」と言っているのか? その答えは、歌詞の中の「ゲバゲバ」、「ジコジコ」、「ストスト」という言葉にある。「ゲバ」とは学生運動による「ゲバルト」のことで、「ジコ」とは「交通事故(交通戦争)」、「スト」とは「ストライキ」のこと。当時の日本は、高度経済成長期にあって、様々な社会問題がうずまいていた。“その犠牲になるのは、いつも、社会的弱者である老人と子供だ”という痛切なメッセージが込められているのだ。

この曲こそが、伝説的カルト俳優が歌う、カルト歌謡の金字塔といえよう。ト全は、発売の翌年、1971年に死去した。

卜全は、友人も持たず、生涯、妻だけを愛し続けたという。

解説:卯村
イラスト:はらめがね

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