【Hilcrhyme】『Hilcrhyme TOUR 201
7 "SIDE BY SIDE"』2017年6月10日 a
t 豊洲PIT

 アルバム『SIDE BY SIDE』の発売が昨年12月だから、リリースからツアーまで約半年間も空いたことになる。アルバムが発売されたのが全国ツアー『Hilcrhyme 10th Anniversary TOUR 2016 BEST10』の只中であり、年が明けてからは『Hilcrhyme 10周年記念特別公演 「朱ノ鷺二〇一七」at 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター』という一大イベントがあったということで、今回のレコ発ツアーを開催するまでに時間がかかったわけだが、『SIDE BY SIDE』は“7枚目のアルバムにして、Hilcrhymeの最高傑作!”と豪語する超自信作だっただけに、誰よりもこのツアーを待っていたのは当のメンバーであろう。

 オープニングはアルバムの1曲目でもある「VESPER」。それまでのHilcrhymeとは趣の異なるトラックに挑発的なリリック。会場の雰囲気を『SIDE BY SIDE』に染めるにはやはりこの楽曲からだ。そこから、昨年の10周年イヤーを牽引したナンバー「パラレル・ワールド」、MCを挟んで「HINOTORI」「言えない 言えない」「クサイセリフ」「WARAE〜In The Mood〜」の流れはアルバムを踏襲。これはレコ発ツアーとしては正解だったと思うし、何よりも『SIDE BY SIDE』の世界観をライヴで披露したいというふたりの意気込みが伝わってくる構成だった。中盤のハイライトは、「DENDROBIUM Live Mix」「ドレス」「鼓動 -Magnificent Remix-」であったと思う。スペイシーなインスト「DENDROBIUM」は、DJ KATSU(DJ)のアーティストとしてのステージが確実にランクアップしたことを示す格好の材料。圧しの強いビートに支えられつつも独特の浮遊感があるという面白いバランスは、まさに最新Hilcrhymeサウンドであろう。

 その後、衣装を換えてステージに登場したTOCが歌い上げたバラード2曲もまた絶品。プロポーズを歌った「ドレス」から新しい生命の誕生を歌った「鼓動 -Magnificent Remix-」というのは、これまたアルバムと同じ流れだが、これはもうこれしかない!という黄金のマッチアップであり。特に、ピンスポット1本のみの照明というシンプルなステージ演出の中で披露された「鼓動 -Magnificent Remix-」は、まさに“熱唱”と呼ぶに相応しいものであり、TOC(MC)のヴォーカリストとしての圧倒的な自負を感じることができた。後半は「ソノママ」「光」から「Little Samba~情熱のRemix~」「トラヴェルマシン」「Summer Up」「TOKYO CITY」「ルーズリーフ」をメドレーで披露し、ダンスチューンでフロアー全体をアゲにアゲたあと、フィナーレは「LUCIFER-Interlude-」から「Side By Side」。締め括りはやはりこれしかない。“こんなタイトル、洒落で付けれない”とTOCは言ったが、確かに“(リスナー、オーディエンスと)寄り添う”なんてことは生半可な気持ちで使えるものではない。《どんな孤独に襲われても構わない/糧となり 術となる そんな歌 歌いたい/離れ途切れてもまた寄り添えるのなら/盾となり 矛となる そんな歌 歌いたい》。彼らは表現者としてリスナー、オーディエンスに向けて極めて力強い約束手形を切ったと言える。

 アンコールでは、「春夏秋冬」に続いて、6月10日から配信がスタートしたHilcrhymeの最新曲「アフターストーリー」が披露された。この「春夏秋冬」~「アフターストーリー」での締め括りもベストチョイスだっただろう。「アフターストーリー」は文字通り、「春夏秋冬」の物語のその後を描いた作品。メジャーデビューの年に発表された楽曲「春夏秋冬」から8年後、結成11年目を迎えた直後に、その続編とも言える楽曲が発表され、この2曲がアンコールの最後だったというのも、Hilcrhymeのスタンスを象徴していたように思う。ひとつの楽曲がそれだけで完結することなく、時を超えて連なっていく。今回、彼らはそれを示すことで、暗に自らの活動が半永久に続いていくことを示唆したと言える。『Hilcrhyme 10th Anniversary TOUR 2016 BEST10』『Hilcrhyme 10周年記念特別公演 「朱ノ鷺二〇一七」』以上に貫禄を増したHilcrhymeを実感させられたライヴであった。

取材:帆苅智之


セットリスト

  1. 1.VESPER
  2. 2.パラレル・ワールド
  3. 3.HINOTORI
  4. 4.言えない 言えない
  5. 5.クサイセリフ
  6. 6.WARAE〜In The Mood〜
  7. 7.NOISE
  8. 8.LAMP LIGHT
  9. 9.DENDROBIUM Live Mix
  10. 10.ドレス
  11. 11.鼓動 -Magnificent Remix-
  12. 12.大丈夫
  13. 13.ソノママ
  14. 14.光
  15. 15.Little Samba〜情熱のRemix〜 〜 トラヴェルマシン 〜Summer Up 〜 TOKYO CITY 〜 ルーズリーフ
  16. 16.LUCIFER-Interlude-
  17. 17.Side By Side
  18. <ENCORE>
  19. 1.内容の無い手紙
  20. 2.ジグソーパズル
  21. 3.エール
  22. 4.春夏秋冬
  23. 5.アフターストーリー
Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

OKMusic編集部

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