【eastern youth】eastern youth Sh
ibuya O-EAST 2008年2月22日

撮影:平山秀朋/取材:高木智史

なんだろう、この圧倒感。eastern youthの3人から放たれる轟音、叫ばれる吉野 寿のボイス、激情、焦燥感、孤独感、無常感が込められた日本語で綴られた歌詞。いつもライヴを観終わった後、それらの全てに圧倒され、しばらくその場を離れられないのだ。 まず、彼らのライヴを観たことのない方にお知らせしたい。音を感じてほしい。ギター、ベース、ドラムのバンド構成は現在の音楽シーンにおいては簡素すぎると言ってもいいだろう。だが、そこから放たれる音量、日本情緒あふれた、わびさびを感じる豊かなメロディーは彼らでなければ絶対に表現できない代物なのだ。そして、吉野は歌詞に込めたあらゆる思いを裸の精神の如く歌い叫び、ギターの弦が切れそうな程の激しいストロークを見せる。 MCでは吉野は決して自分たちのライヴで“楽しんでください”とか“踊ってください”と要求しない。それは自分たちは渾身の思いで歌を届けるだけで、そこから先は聴衆に全てを委ねるだけと認識しているからだ。事実、そんなライヴを繰り広げられたオーディエンスは始めは圧倒されたように聴き入っているのだが、徐々に精神が解放したかのように体を揺らし、踊り出し、その光景に吉野は“ありがとう”とだけ告げる。 ライヴが終わった後のメンバー、観客の表情には清々しさだけがあり、それはeastern youthのライヴは常に闇の先の光が存在することを証明している。誰もいなくなった後の無機質なステージと、そこのアンプの上に置かれた一輪の花。それが彼らのライヴの全てを物語っているのではないだろうか。
eastern youth プロフィール

88年に札幌で結成。丸坊主にメガネというロッカーらしからぬ風貌をもつ吉野 寿(vo&g)、田森篤哉(dr)、二宮友和(b)から成るスリーピース・ロック・バンド、eastern youth。結成当初はUK及びUSのパンク、ハードコアから影響を受けた硬質なサウンドを持ち、また吉野寿のヴォーカルも所謂ハードコア・スタイルが取られていたが、その後は激しいながらもパンクの概念に捕われない、「真心の籠った歌を紡ぐバンド」としての境地を確立。以降、志の高い優れた作品を創り続けており、国内のみならず海外からの評価も高い。

『孤立無援の花』(97年)『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』(98年)『雲抜射ケ声』(99年)——作品タイトルを並べただけでも、彼らが現在の音楽シーンにおいて異質な存在であることは窺い知れるだろう。内なる激情——憤り、焦燥、孤独、やるせなさ——を徹底して日本語で綴った詞作。しかし、それは意図的に作り上げられたスタイルではなく、赤裸々なまでの自己描写を模索する吉野 寿(vo&g)にとって必然だ。また歌詞だけでなく、寂寥として骨太なラウド・ギター・サウンド、「わびさび」に通じる詩情をたたえたメロディ、渾身のヴォーカリゼーション(それは時に叫びであり、時に呟きである)——全てがエモーショナルの極致であり、圧倒的説得力で聴く者の心を捉えている。
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OKMusic編集部

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