【勝手にしやがれ】勝手にしやがれ
ebisu LIQUID ROOM 2007年12月21日

text:石田博嗣

バンド結成10周年を記念して始まったこのイベントはこれまで、小島麻由美やThe Birthdayなど、ジャンルレスにアーティストを集め、それぞれのアーティストはそれぞれのアイデンティティを見せてきた。そのイベントも遂にファイナル。ステージに上るアーティストは勝手にしやがれとSUEMITSU & THE SUEMITHが相見えた。ジャンルは違えど、ジャズ、クラシックという母体とする音楽から自らの音楽へと昇華させてきた両者はこのファイナルで一体どんなライヴを見せるのか。開演前から期待感が募る。 まずはSUEMITSU & THE SUEMITHのライヴがスタートする。前回観た彼のワンマンではグランドピアノをステージに置き、観客を横に見ながらの演奏であったが、この日はキーボードで観客と向き合うセットとなっていた。その分、彼の鍵盤を叩き鳴らす姿がよりはっきり見え、オーディエンスもそのパフォーマンスに見入っていた。1曲1曲演奏に入る前に曲の紹介をするクラシックの演奏会さながらの彼のスタイルはそのままに代表曲である「Sherbet Snow and the Airplane」や「Astaire」を中心に、新曲「Boyz, Boy Don’t Cry」も披露し、盛り上がる観客をキーボード越しに満足そうに眺めていた。そして袖に控える勝手にしやがれを意識してか、沢田研二の「勝手にしやがれ」のカバーを演奏し、喝采の中、ステージを降りた。 ポップで和やかな先程までの様子は一変し、スーツでキメた伊達男たちがステージに現れる。1曲目の「ビッチ」が始まり、その光景に僕は昔、映画で観たワンシーンの記憶を思い起こすこととなる。それはクラシカルなジャズが鳴り渡る社交場で、そこで陽気に踊る男女。まさにそんな光景を目の当たりにしていた。ある時は武藤がその艶のあるヴォーカルでオーディエンスを酔わせ、ある時はインストゥルメンタルで聴く者にその楽曲の感情ごと委ねる。SUEMITSU & THE SUEMITHとは対照的にMCはなく、口を開いたかと思うと“じゃあ、新曲”と、ただそれだけ。しびれるような大人のカッコ良さに釘付けになるのみだった。ファンはというと、絶えず押し寄せる最高のグルーヴに体を揺らし、歓声を上げる。「ラグタイム」ではポップなダンスナンバーに観客を踊らせ、「CAKEEES THEME」では観る者を惹き付け離さないデンジャラスな空気を放ち、「IS YOU IS,OR IS YOU AIN’T MY BABY?」ではドラムから武藤がステージの前へ歩み、ボイスパーカッションとしゃがれた声で歌い、会場は自然とクラップの音で満ちていた。さまざまな手法でファンを沸かせる術にはライヴバンドとしての力量を感じずにはいられない。そして最後にもうひとこと、“That’s all”。カッコいいの言葉しか見つからなかった。
勝手にしやがれ プロフィール

カッテニシヤガレ:ジャズやスウィングをパンクの精神で男気あふれる唯一無二の音楽に昇華させ、ギターレスでドラムスがヴォーカルをとる独特のスタイルで圧倒的な存在感を醸し出す7人組。今年4月にteabridge records/avexに移籍、ますます精力的に活動中。勝手にしやがれ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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