取材:高橋美穂

ゆくゆくはバケモンみたいなバンドにな
りたい

まず、大山さんが加入した経緯からお訊きしたいのですが。

この夏に、チャットモンチーやACIDMANとかと“3人バンド同士で来年辺りツアーでもやろう”とか言ってて、でもその時には4人になることが決まってたから、忍びない感じだったんだけど(苦笑)。わりとひた隠しにしてたんですよね。せっかくなんで、ドカンと言った方がいいかなって。遡ると、去年の秋の『LINEAR』ツアーで、純くんが地元の群馬のライヴを観に来て、打ち上げで飲んで盛り上がってからの話なんですよね。で、年末くらいからチームの中でどうやって迎えようって話をして、3月くらいから4人でスタジオに入って、新曲を作ってました。

大山さんとの再会前に、4人での構想はあったのですか?

まぁ、何か達成するごとに解散だとか言ってるバンドだから(笑)。『LINEAR』の反動じゃないですけど、ライヴを意識したサウンドを『Immortal』で録ったのが去年の夏なんですよね。それでかなり達成感があって。その矢先の純くんとの再会だったんで、“じゃあ、入るか”ってなったんです。道の途中にいたんですよね(笑)。音を出す前からいい感じだろうなって思ってたし。でも、純くん曰く、バンドをするつもりはなかったらしくて。バンドでギターを弾くモチベーションが枯れて、田舎に帰ったわけで。今だから僕らと純くんのタイミングが、合致したんじゃないかな。

大山さんと一緒にやってみて、ギタリストとして、またアイディアを生む人として、どういう印象ですか?

1曲1曲のアプローチは違うんだけど、僕が求めてたもうひとりのギターを完全にやってくれてて。それを見越して誘ったところもあるんで。曲を作る時も弾き語りの状態だから、ギターのアレンジとか考えてないことが多くて。そっから踏み込んだ作業をする時に、いろいろ聴き漁ってアイディアを集めたり、その都度やってきたから、そこにひとり居てくれるのはすごく助かります。ぶつからないこともないですけど、やっぱ一個の曲をカッコ良く仕上げるのが全員の目指すところだから、そこで滞ることはないですね。“これでダメなら、こうしてみたら”とか話し合ったりして。

ヴォーカルに集中しやすくもなったんじゃないですか?

そうですね。リズムのノリが出やすいっていうか。3人の時って隙間があったんですよね。いつもタイトに意識しないとシンクロしなかったんで、演奏する時にいろいろ気を使わなきゃいけなくて。だから歌に集中したくても、リズムをキープするところに意識が行ってたりとか。そういうところが、もうひとりギターがいるだけで、委ねる感じで歌えるんですよ。そこの気持ち良さは感じますね。

そういう意味で言うと、「Little Miss Weekend」は音数や新鮮なアイディア云々っていう4人になったメリットを押し出すんじゃなく、潔いサウンドに仕上がっていて、メンタル面での変化が表れている気がしました。

そうですね。『Little Miss Weekend』は、かなり大胆にやってのけた曲で。4人になって、どこが進化できるかっていうと、今までよりアレンジの色彩感を増したり、より実験的なこともできる。だけど、この曲ってまったく逆で。僕がネタを作った状態では、すでに何曲か4人で作っていた新曲とは違った、余りにもシンプルな曲だったから、結構メンバーに出しあぐねてたんですよね。“他の3人がやりたがるかな?”って。でも、他の曲も出揃ったから、そろそろこれも出そうかって出してバンドで合わせた時に、すごくシンプルで、ストレイテナーならではの、4人になったことでの変化っていうか…ものすごい爆発が起きて。スタジオの外で聴いてたスタッフが“いいねぇ!”って言ってくれて。そうなんだって本腰入れて作っていったら、やっぱカッコ良いんじゃないかって思ってきたんですよね。

シンプルだからこそ真の進化が見えると思いますよ。

今はシンプルに、今まで作ってきたものを進めるっていうことをやってますけど、4人になってどうなんだっていうのは、これでアルバムを作って、11月末からのツアーで見えるかなって。お客さんにも観せられるし、僕らもツアーをやってみないと図りかねてて。だから、その先どうなるかはこれからかなって。ゆくゆくはバケモンみたいなバンドになりたいんで(笑)。何をやらかすか分かんないみたいな。別に変なことをやるんじゃなくて、音楽でそういうものが出せたらいいなって思いますね。

楽曲からもそうだし、ホリエくんの発言からも、今のテナーには自信というか、攻撃性が感じられますね。

そうすね。攻撃は『LINEAR』は鳴りを潜めてて、どっちかというと実験的だったので。今回は4人になったのもあるし、今まで築いてきたものを一回見直して、ライヴバンドとしての攻撃性を重視しているところはあります。

またカップリングは、スピリチュアライズドの「Electricity」のカバーですが、テナーでカバーは初ですか?

トリビュート盤以外では初ですね。それも4人になったからカヴァーでもやってみようかっていう。この手のギターが純くんは得意だし。この曲をやってみたいっていうのは前々からあったんです。これって、リアルタイムで聴いてた人は“おっ!?”ってなると思ったんですけど、思いのほか少なくて(苦笑)。僕自身は原曲をサイケというよりも、ガレージっぽいニュアンスで捉えてたんですよね。リズムが見えなくてグシャーってなってるけど、あれをタテでノリたかったんで。あの時代に、まだキッズだった自分がスピリチュアライズドのライヴに行ってたら、完全にモッシュしてただろうなって(笑)。そういうふうにしたかった曲なんで、そんなアレンジをしてみました。
ストレイテナー プロフィール

ストレイテナー:1998年にホリエとナカヤマによって結成。渋谷、下北沢、新宿、八王子などでライヴ活動を行ないつつ、02年には自主レーベル『ghost records』設立し、マキシシングル「SILVER RECORD」をリリース。また、結成時よりホリエアツシ(Vo&Gu&Pf)とナカヤマシンペイ(Dr)のふたりによる最小限のセッションが注目を集めていたが、日向秀和(Ba)が03年よりライヴに加入(翌年に正式メンバーとなる)、08年には大山純がギターとして加入し、正式に4人体制となる。17年10月にメジャーデビュー15周年を迎え、翌年で結成20周年に突入することを記念したトリビュートアルバム『PAUSE 〜STRAIGHTENER Tribute Album〜』がリリースされた。ストレイテナー オフィシャルHP

OKMusic編集部

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