【いきものがかり】
取材:高木智史
常に新しくなっていくポップミュージッ
ク
いきものがかりは本当に毎作毎作ごとに新たな一面を見せてくれる。それは成長なのか、彼らのポテンシャルによるものなのかは12枚目の今作までくるともう計り知れないが、『ライフアルバム』以降の3枚のシングルについて振り返ることで確認していきたい。
アルバムから2ヶ月足らずでリリースされた「帰りたくなったよ」はバラード曲なのだが、描かれた歌詞の世界感が他の楽曲と群を抜いていた。リリースされた4月といえば、春。新生活! お花見! とポカポカ陽気に花粉症以外の人は心が弾む季節だろうが、その時期に彼らはアッパーな楽曲で背中を押すようなものではなく、胸をグッと掴む壮大でノスタルジックな楽曲を持ってきた。“帰りたくなったよ”という吉岡聖恵の歌が、その場所が故郷なのか大切な人が居るところなのかを思わせ、自分の原点を気付かせてくれる。そう思うことで勇気が沸き、単に浮かれて日々を消化するのではなく、意味のある前進へとつながる1曲になっていると思ったのは僕だけではないはず。
続いては夏にリリースされた「ブルーバード」。この作品は一聴して前作との違いが分かる、勢いのあるロックチューンだ。そのサウンドに合わせるかのように後ろを省みない歌詞も一体となっている。また、いきものがかりはどちらかというと、楽曲をじっくりと聴かせるストリート出身のアーティストであって、そんな彼らが「ブルーバード」のような振り切ったサウンドを出してきたことは、そこにアーティストとしての成長があったのだろう。
季節が秋に変わる頃、まだ記憶に新しい11枚目のシングル「プラネタリウム」が届けられた。「帰りたくなったよ」の切なさ、「ブルーバード」の前を向いた強さ、そのふたつをこの楽曲は持っている。それはサビの“悲しみの夜を越えて 僕らは歩き続ける”を見れば一目瞭然かもしれないが、これこそがいきものがかりの真骨頂なのではないだろうか。ミディアムな曲調に吉岡の伸びやかな歌が乗り、じっくりと聴くことができる楽曲はストリート時代の彼らを彷彿させる。例えサウンドがシンプルであっても十分に歌が生きる楽曲なのだ。
独自の視点で織りなすバラード、アーティストとしての成長を感じるロックチューン、原点を感じさせるミディアムナンバー。そして最新シングル「気まぐれロマンティック」なのだが、これまた毛色の違う楽曲が耳に飛び込んできた。“気まぐれロマンティック”というテンション高めなタイトルがピッタリはまる、バンドサウンドにピアノ、ブラス、ハーモニカと大忙しな超ポップなアップナンバーなのだ。“もはやポップミュージックの代表格と言えば、いきものがかり!”と思ってしまうほどのパワフルさを持つサウンドに“気持ち良い”の言葉しか出てこない。間違いなくライヴでは手拍子の鳴り響く、盛り上がり必至の楽曲となっていくことだろう。また、歌詞は気まぐれなキャピキャピした女の子の恋心を描いているのだが、それを男性である水野良樹(Gu&リーダー)が書いていることに同じ男としてビックリする。とはいえ、これも、いきものがかりの姿。アプローチはそれぞれ違うがどの曲もらしさを感じてしまい、そのセンスは一流だ。
冒頭でも触れたが今作で前アルバムから4枚目。そろそろアルバムの発表も近いのだろうか。そのアルバムもきっとさまざまなキラキラした音楽を届けてくれることに違いない。
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