取材:土内 昇

ひと周りしてきた道程を見てほしい

音速ラインにとって2008年はどんな年でした? 昨年の11月に3rdアルバム『三枚おろし』を発表して、ひと区切りついたところからのスタートだったと思うのですが。

藤井
そうですね。アルバムを3枚出したことで、音速ラインがどんなバンドなのか分かってもらえた気がしたんで、かなり自由にできたというか。“何をやってもいいんだな”って思えたんですよ。だから、すごく充実してましたね。やっぱり自信が付いたんだと思います。“激しくて切ない”だけじゃないところを見せれたし。裸になったというか、全部見せ終わったなって。ひと周りした?
大久保
うん。『三枚おろし』の3枚までで、コンセプト的なことはやり尽くせたと思うから、それを4枚目の『風恋花凛』で爆発させられたのかなって。だから、これからは振り幅が広くなっても、認めてもらえるかなってのは思いますね。

バンド的な変化は感じます?

藤井
基本は何も変わってないんですけど、いい感じに肩の力が抜けてきたというか…“俺らのことを分かってもらうには、どうすればいいんだろう?”みたいなところがハズれてきたんで、自然体でいられるようになったのが一番デカいと思いますね。
大久保
そうなったからこそ、今まで見れなかったものが見えてきてるし…そういう意味での変化はあると思うんですけど、基本的には何も変わってないですね。
藤井
人間的なところでは全然変わってないです。どんだけ素人臭いんだって(笑)。全然プロっぽさがない。
大久保
さっきも話してたんですよ。どうやったらオーラって出せるんだろうって(笑)。

(笑)。あと、ライヴが変わったと思いませんか? 会場は大きくなっているのに、客席との距離がどんどん近くなってますよね。

藤井
そうですね。どんどんお客さんとのつながりが太くなってきてる。曲を作ってる時に、聴いてくれるみんなの姿が観えていることが多くなってきたんですよ。そういう作り方をしていると“届くかな?”じゃなくて、“届く”って思えるんで、それも自信につながっているんだと思います。

そんな2008年を象徴するのが『風恋花凛』だと。

藤井
そうですね。ほんとに自然体のままで作れたんで、ひと周りして“音楽を楽しむ”っていう原点に戻ってきたんだと思います。“なんで、もっと広がっていかないんだろう?”というところから抜け出せたというか。自分らが楽しくやって、それが伝わっていくってことが大事…いろいろ試行錯誤してやった結果、それが一番大事なんだって思えたから、やっぱりひと周りしたんだと思いますね。ひと周りすると、それだけ成長しているわけだから、またそれが自信になってるんだろうし。

そんなタイミングで、年明けにベストアルバムが発表されるわけですが。

藤井
ひと周りしてきた道程を見てほしいとも思っていたし、「ポラリスの涙」で違う層にも広まっているとすると、その人たちにとっての音速ラインの入口にもいいと思うんでね。シングルは全部入れて、あとはライヴで定番になっている曲も入れて…だから、これを聴いてライヴに来れば間違いないっていう。

出来上がったものを聴いた時の印象は?

藤井
当時のことが全部鮮やかに蘇りますね。「スローライフ」に至ってはね、インディーズ盤の『うたかた』の前にも録ってるんですよ。その時に朝までかかったんで、大久保と買い出しに行ったんですけど、野犬に追っかけられたんです。その記憶まで蘇った(笑)。
大久保
100メートルぐらい全力疾走しましたよ。生まれて初めて犬に追っかけられて、『ドラえもん』ののび太状態でした(笑)。
藤井
そんなことまで思い出されたってこともあって、やっぱり歴史を刻んでるって思いましたね。

「ありがとうの唄」が入っていて、ファンにも感慨深いですよ。

藤井
大久保のムチャぶりでライヴ中に作った曲ですからね(笑)。そのライヴに来てた人はみんな知ってるわけだから、絶対に思い出しますよね。

そんなベストアルバムと『風恋花凛』を引っ提げて、1月から全国ツアーが始まりますが、どんなライヴが期待できそうですか?

藤井
『風恋花凛』とこのベストを聴いてくれば確実に盛り上がるでしょうね。
大久保
いつもよりも本数が多いので、自分たちなりに試行錯誤しながらやっていこうかなと思ってます。基本的には『風恋花凛』がメインなんですけど、ベストの中からも演るだろうし…いつも以上にセットリストを組むのに悩みそうですね。でも、ツアータイトル通り、みんなをハッとさせようかなって。

ファイナルは中野サンプラザで、初のホールですが。

大久保
ドキドキですよ。そのドキドキを「疾風のように」で爆発させます!
藤井
サビの“ドキドキドキ”ってところで掛け合いをしたいんだよね。これ、書いておいてくださいね。

『風恋花凛』のインタビューの時も言ってましたよ(笑)。

藤井
ハハハ。でも、それでより客席と近くなるんじゃないかなって思うんですよね。あとね、大久保が昔、親から“サンプラザで演るようになったら認めてやる”って言われたらしんですよ。でも、観に来るかどうか分からないんだよね(笑)。
大久保
その時に適当に言っただけかもしれないしね(笑)。
音速ライン プロフィール

切なくて懐かしい珠玉のメロディと言葉を運ぶ“スローライフ主義”のバンド、音速ライン。メンバーは福島県出身の藤井敬之(vo&g)と東京都出身の大久保剛(b)の2人。03年にこのデュオを結成した彼らは、間もなく自主レーベルを設立して音楽活動をスタート。その音楽性は多くの人の心を揺さぶり、翌04年にはインディー・レーベル<SONG‐CRUX>より1stミニ・アルバム『うたかた』を発表。さらに同年中に2ndミニ・アルバム『青い世界』も発売した。音速ラインの快進撃はこれだけに止まらず、結成後わずか約2年という短期間でメジャー・デビューを果たし「スワロー」(05年)をリリース。同年11月には待望の1stフル・アルバム『風景描写』を発表して日本全国に大きな話題を提供した。続いて早くも翌年には2ndアルバム『100景』も発表。スローライフ主義のバンド=音速ラインは、忙しい日常をフッと忘れさせるような音楽を届けてくれる。注目して欲しい。音速ラインOfficial Website
公式サイト(レーベル)

OKMusic編集部

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