【北出菜奈】
取材:高橋美穂
ゴシックは人の心に眠ってる気持ち
北出さんはご自身で作詞もなさってますけど、「月華-tsukihana-」は複雑な女心が描かれてる気がしたんですよね。“飼い殺しなら救われる でも見事に鍵は外れて”のあたりとか。
私としては普通で(笑)。みんなもきっと思ってるけど、なかなか言えないんじゃないかな。“飼いならしてくれればいいのに”っていうのは、この人と永遠にいたいってみんなが夢を見るのと同じことだと思うんです。誰かと一緒にいる時に、ふと自分はひとりだと感じる瞬間が怖いんですよね。そういう気持ちをどう言葉にしようっていうのが、ずっと自分の中にあって。
またライヴだと、ヴィジュアル的なインパクトも相俟って、パフォーマーという印象も受けますが、意識はされてますか?
パフォーマンスしてる感覚は全然ないんです。あの空間で歌うとあぁなるだけで、リズムをとることの延長なんです。薔薇の花があった方が落ち着くとか(笑)、そういう理由で客席に向かってるっていうより、歌に向かってる行為なんですよ。
とは言え、今回のジャケットでも和ゴスに挑戦されていたり、歌以外の表現にも拘りを感じずにはいられないのですが。
私はパフォーマンスができない代わりに、CDに収まりきれない気持ちを視覚で訴えられればと思ってますね。和ゴスは、海外で和の粋をカッコ良いと言ってる海外の人たちの視点を目の当たりにして、表現したくなったところもあります。
和でも表現できるとなると、ゴシックって奥深いですね。
ゴシックって、人の心に眠ってる気持ちなんじゃないのかな。だから、表面的なゴスっていうよりかは、心情的なゴスをイメージしてて。もちろんファッションも心情的な部分から発生してパターン化してると思うんですけど。壊れてて美しいものに惹かれたりするんで、そういう表現をしていきたいですね。
また2曲目の「鏡の国のアリア」はヘヴィな楽曲ですね。
これは実はデビューくらいからずっとあったんですけど、暗いからダメって言われてた(苦笑)。ただ、今回ネギ(根岸孝旨=プロデューサー)とやる上で、この人だったらやってくれるんじゃないかって思って、ぶつけてみたらカッコ良く仕上がったんで。やっぱり、ただ暗いだけではダメだし、形にして人に伝わって何かしらのエネルギーを生まなければいけないと思いますね。
歌詞は物語的な内容ですけれども。
これは、それぞれで幻想を生み出してほしいです。私は歌ってると、自分が存在してるってすごく感じるんです。自分の顔は自分では見えないということは、見てもらわない限りは自分の存在って確認できないと思うんですよね。そうやってお互いを確認することは、鏡と鏡みたいな感じなんじゃないかなって。
まさに“鏡の国”ですね。さらに3曲目の「マノン」は、このシングルの中ではかなりキュートな楽曲ですが。
私もずっとヒリヒリしてるわけではなくて(笑)、ぼーっとしてたりもするんです。『マノン・レスコー』って本を読んでいて、この時に。マノンって売春婦の悪い女に描かれてるんですけど、それに多くの男の人が惹かれていって…。だけど、彼女は純粋で可愛いロリータ的な女性なんだと私は思うんですよ。そうやって誤解を受けるところに自分を重ねたのかもしれないですね。
お話をうかがってると、ほんと真面目な方ですよね。
あははっ! 真面目じゃなさそうでしょ? でも、感覚的に出すためには、考えないといけないんですよ。成長していろんな情報が入ってる状態で感覚的にやろうと思ったら、考えて、その瞬間には何も考えないってことをしないとできないから。
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