【Superfly】“歌い方”ではなくて、
言葉を伝えることを意識した

2009年第一弾シングルは壮大なバラード! 25歳の今の自分の姿を投影したと語る歌詞には、彼女が抱えてる苦悩だったり、立ちはだかっている壁などが描かれているが、それを乗り越えて行こうとする強い意志も綴られている。
取材:石田博嗣

4月1日に『Rock'N'Roll Show 2008』のライヴDVDがリリースされましたが、そのホールツアーではどんなものが得られました?

気付いたことというか…会場が広ければ広いほど、お客さんには届きにくいのかなと思ってたんですね。単純に距離もあるし、イスもあるし、お客さんも落ち着いて聴いてしまうのかなって。でも、逆に“伝えたい”という思いは強くなるし…お客さんとの距離が遠ければ遠いほど、祈るように歌ったり、より力強く歌ったりするんで、あまり距離や広さには左右されないんだって、安心しました。だから、この早い段階で、ホールツアーができたのはすごく良かったし、うれしかったですね。

早い段階でのホール公演ってことで、プレッシャーはなかったのですか?

プレッシャーは感じてました。ホールツアーはアンコールツアーだったんで、いい意味で1回目のツアーとは変化を付けたいし、変わりすぎないようにもしたい…そのバランスが難しいなって。新鮮な気持ちでやりたいし、お客さんには楽しんでもらいたいし。だから、セットリストとかもすごく悩んだし、慎重に取り組んだ…“裏切りたくない”っていう気持ちがすごく強かったですね。

では、ツアーが成功に終わって、“やった!”みたいな。

いや、“まだまだやれる!”って(笑)

頼もしいです(笑)。では、「My Best Of My Life」についてうかがいたいのですが、この曲はドラマの主題歌なんですよね。

最初にドラマのプロデューサーさんから歌詞の内容についてリクエストをいただいたんですよ。現代の女性…それも強い女性を描いてほしいって。でも、“現代の女性”って言われても広くなるし、難しいなって思ったんですね。だから、25歳の今の私の姿を書くのが一番リアルで、“今を生きている”っていう意味でも強い女性が書けるかなと思って、今の私が抱えてる苦悩だったり、立ちはだかっている壁だったりっていうものを、そのまま書きました。

確かに、歌詞の主人公は“ちぎれそうな心”を背負っていたり、幸せに浸ることを怖がっていたり、どこか後向きなところがありました。

不安感とかが出てますね。まず、私がこの曲を聴いて感じたのは、孤独感だったんですよ。濃いブルーの空の下に砂漠が広がっていて、その中を“ここはどこなんだ?”って彷徨っているっていうシチュエーションが思い浮かんだんです。なので、それをそのまま楽曲にぶつけました。今の孤独感と向き合う私というのは、今しか書けないので、その姿を書いたというか。

志帆さんが今向き合っている孤独感というのは?

これはですね、ホールツアー中に“人って孤独なんだな”って感じたんですよ。ツアーが始まる前に、ちょっと喉の調子が悪くて、病院の先生からもあんまり喋らないようにって言われてたから、ツアーの空き日は人に会わないし、電話もしないし、絶対に声を使わないって決めてたんですね。で、ツアーが始まって、最初のうちは良かったんですけど、自分的にうまくいかなかったライヴがあったりすると、辛くて、悔しくて、どこかに吐き出したかったんですけど、ツアースタッフのみんなとはすごく空気が良かったし、その真ん中にいる私が弱音を吐いてはダメだと思って何も言えなかったんですよ。だから、自分で解決しないといけないんですけど、誰にも会えないし、電話もできないんで、ある夜、ふて寝をしたんです。そしたら、涙が止まらなくなって、泣き叫んでしまったんですよ。そうしてるうちに、隣の家の家族団欒の声が聞こえてきたり、道行くカップルの声が聞こえてきて…でも、私はひとりでガーって泣いてる。世界中にはこんなにたくさん人がいて、近くにこんなに人がいるのに、私が今泣いていることや、感じている思いを知っているのは誰ひとりいない。そう思ったら、“ああ、人ってひとりなんだ”って感じて…。でも、孤独だからこそ人は人にやさしくなれたり、愛し合うことができるのかなって、自分なりに考えるようになって、そうこうしてるうちに、この曲に出会えたという感じですね。

だから、この主人公は孤独感に苛まされているけど、前に進んでいこうとしているのですね。

その思いはすごく強いですね。目の前に道はないから、正しいのか、間違っているのか分からないけど、自分で選んで切り開いていかないといけないと思っている…っていう感じです。今は振り向く余裕はないけど、2~3年後に振り向いた時に、真っすぐでも、曲がっててもいいからちゃんと道がつながっていればいいなっていう前向きな楽曲になりましたね。

そんな前向きな歌詞を歌う、歌入れの時はどんな気持ちで臨みました?

これは…お腹が痛かったんですよ(笑)。“これはまずいな”って思ってたんですけど、この曲を健康な状態で歌っても説得力がないって思ったんですよね。腹痛を抱えながらも歌い抜くっていうことが、壁を乗り越えて“生き抜く”ってこととイコールだと思って、腹痛も悪くないなって(笑)

ポジティブっすね(笑)。そんな腹痛と闘いながらの歌入れだったようですけど、ひと言ひと言を大事にしていて、言葉を伝えようとしているように感じました。

それはすっごい意識したというか…腹痛だったこともあって、言葉を歌うことに集中できたと思います。ちょっと前までは、自分の持ち味を出さなければいけない、個性を聴いてもらいたいって思ってたんですけど、そうじゃないなって。もっと大事なのは、言葉であり、心であって、歌のニュアンスというのは心がどうあるかによって全然変わってくると思えたんですよ。だから、今回は“歌い方”ではなくて、言葉を伝えることに焦点を合わせて歌いました。

本作は2009年第一弾シングルなのですが、この曲でSuperflyの新章が幕開けるという感じですか?

そうですね。でも、あんまり気合いを入れすぎないようにしたいと思っていて…気合いは入ってるんですけど(笑)。ここから新しいSuperflyが始まるので、乞うご期待って感じですね。面白いことをとにかくやりたいと思っているので。
「My Best Of My Life」
    • 「My Best Of My Life」
    • WPCL-10675
    • 2009.05.13
    • 1200円
Superfly プロフィール

スーパーフライ:越智志帆によるソロプロジェクト。2007年にシングル「ハロー・ハロー」でデビュー。08年に1stアルバム『Superfly』をリリースすると、2週連続1位を記録! 以降、オリジナルアルバム及びベストアルバム計6作品でオリコンアルバムランキング1位を獲得。09年にはニューヨーク郊外で行なわれた『ウッドストック』の40周年ライヴに日本人として唯一出演し、ジャニス・ジョップリンがかつて在籍したBig Brother & The Holding Companyと共演を果たす。シンガーソングライターとしてのオリジナリティーあふれる音楽性、圧倒的なヴォーカルとライヴパフォーマンスには定評があり、デビュー17年目を迎えてもなお進化を止めずに表現の幅を拡げ続けている。Superfly オフィシャルHP

OKMusic編集部

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