【BRAHMAN】もう、後悔と罪悪感の中
だけで生きる時期は終わった
BRAHMANが、インディーズ時代の3作品を新たに録り直した17曲入りのアルバム『ETERNAL RECURRENCE』を完成させた。昨年リリースした『ANTINOMY』と、その後のツアーで、どんな表現でも、どんな状況でも、圧倒的な生を響かせられる力を証明した彼ら。その力が、当初からの揺るぎないオリジナリティーに加わった今作。大きな意味を持った傑作である。
取材:高橋美穂
まずは、何で今のタイミングで再録して作品にしたかをうかがいたいのですが。
改めて、ご本人の口からうかがえるところだけでも。
うーん、俺も事細かく言おうかなとも思ったわけ。でも、不毛な揉め事でグチグチするくらいなら、今の自分たちで録り直して、自分たちに責任ある形で販売すればいいっていうか。今はむしろ録り直す機会を与えてもらって感謝してます(笑)。やり出したら…まぁ、昔のものを録り直せる機会なんてそうそうないし。“あん時こうしたかったな”っていうのをやれるって思ったら、楽しかったし。純粋にそれでいいんじゃないかなって。廃盤もしたくてしたわけじゃないし、仕方なく選んだ道だったから。録り直すことに賛否あるのは分かるけど、自分たちとしてはすっきりして良かったです。
ライヴでやり続けてる楽曲ばかりですしね。
だから、俺ら的に違和感はないんだけど、いわゆる企画盤やベスト盤って個人的には好きじゃないから、そういう捉え方をされたら嫌だと思って、事の経緯を喋った方がいいかと思ったんだけど、別にどう思われてもいいと思って。こういうことをやる時期だったんじゃないかなって思うし。時期って、やろうと思ってもダメな時はダメで。でも、やるべき時は、望もうが望まざろうが、目の前に出てくる。それが時期。自分たちでこの時期を作ったわけじゃないからね。
具体的な話に言及すると、『A MAN OF THE WORLD』からは全曲入ってますけど『grope our way』と『WAIT AND WAIT』からは抜粋にしたのはなぜですか?
まぁ、インディーズ時代のコンプリート盤を作りたかったわけじゃないから、ライヴでやってない曲を無理やり入れたりしたくはなかったし、オリジナル持ってる人だけが楽しめるっていう考え方も俺は好きだから。最初は『A MAN~』だけやろうと思ってたの。あとの曲はほんとはオマケなんだけど、そのオマケがデカいよね(笑)
さらに初回盤は、写真集だったりバンドスコアだったり、3000円以内でいろんなオマケが付いてますよね。
だって、録り直しじゃん。俺は“初回限定盤”は好きじゃないから、新しいアルバムではオマケを作ろうとは思わないけど、こういうアルバムだからこそ、遊び心がないとつまんないと思って。その時にいろいろアイディアが出てきたし。
改めてレコーディングして、自分たちの変わったところや変わってないところも見えてきたりしましたか?
常にあるからね、そんなの。それを超えたいと思ってやってるから、昔のを聴けば、若いなぁとか全然足りてないなぁとか思うんだけど、それはそれで、その瞬間にしかできないことだから。そこと喧嘩をするようなアルバムは作ってなくて。ただ、現実に今の自分たちがあるっていう。
よく、昔の曲をライヴでやるのが恥ずかしいっていう人もいますけど、BRAHMANはずっとやり続けてますよね。
恥ずかしいのと可愛いのは同居してるから。できればまた日の目を浴びせたかったからこそ、ライヴで演奏してたんだろうし。自然なんじゃないの。別に懐古主義でもないし、この録り直しで儲けようとも思ってないからさ。
聴いてて思ったのは、10年以上経ってるのに一貫性があって、かつ新鮮なところがBRAHMANらしいなって。
あぁ、思ったより、イビツではなかったなぁって。もっととんちんかんなことやってたと思ったけど。ずっととんちんかんだったのかもしれないね(笑)、今でもね。時代に合っちゃえば、その瞬間はすごいかもしれないけど、古臭くなってくるし。自分たちの身の丈に合ったことをずっとやりたいと思ってきたから。まぁ、時代の産物ではあるけど、波があると乗らない癖はあるね。疑うっていうか。みんなが盲目的に右に行ってれば、変だなって思っちゃうし。その楽しさも分かるんだけど、その結末も分かってるっていうか。
でも、BRAHMANを始めた当時って20歳くらいで、まだ状況に浮かれてしまいがちな年代だったと思うんですけど。
浮かれてたよ、今考えると。ただ、一番大きい波、『AIR JAM’98』くらいになった時、そう思った。自分で自分のことが怖くなったんだと思う。バイトしなくてよくなって、ライヴにも人がいっぱいいて、ほめてくれて。このままいたら、俺、ダメになっちゃうわって。後悔もあるけど、ちょっとずつやっていけば、取り戻せるんじゃないかと思っていて。人の付き合いもそうじゃん。一回ダメになってもさ、もう一回同じ時間を共有することはできないけど、誠実にやり続けてれば、取り戻すことはできるじゃん。そうやって生きていくしかないかなって。仕方ないだけで終わらせたらもったいないんじゃないかなって。それにはずっと真摯でいないとダメだよね、当たり前だけど。もう、後悔と罪悪感の中だけで生きる時期は終わったと思うから。そこを踏まえた上でどうするかっていう。出始めは、このアルバムも怒りだからね。
でも、BRAHMANの作品で、怒りのみで突っ走ってるものって、最近は少ないような気がしますね。
その時その時で出てくると思うよ。だって、怒りって栄養剤みたいなもんで、一瞬はカーってなるけど、続かないから。もっと若くて、何もなくて、怒りが原動力になる時期もあると思うけど、今の俺らがそれやったら嘘になっちゃうから。もっと大きく見ていかないと。でも、J-POPで歌われるような安っぽい愛ではないと思うし。今回、歌詞もちょいちょい見直したけど、何回も同じことを書いてるなって思ったりするんだよね。今でも。ずっと納得してないんだよね。毎回ここはゴールじゃないかって思うんだけど、すぐに先があることに気付くから、やり続けてるんだと思うよ。
- 『ETERNAL RECURRENCE』
- 【通常盤】
- TFCC-86299
- 2625円
- 『ETERNAL RECURRENCE』
- 【初回限定盤】
- TFCC-86298
- 2009.06.10
- 2990円
ブラフマン:1995年、都内を中心にライヴ活動をスタート。96年に『grope our way』を発表(現在廃盤)。1stアルバム『A MAN OF THE WORLD』がインディーズ史上、異例の60万枚以上のロングセールスを記録。シングル「deep/arrival time」でメジャーデビューを果たす。徹底した激しいライヴスタイルとその存在感は他の追随を許さないバンドとして、熱狂的にオーディエンスやバンドから支持されている。21年Zepp ツアー『Tour 2021 -Slow Dance-』と連動したコンセプチュアルな作品「Slow Dance」を9月22日にリリースする。BRAHMAN オフィシャルHP