【蘭】
文:土内 昇
“ポップロック”がテーマ
もともとはバンドを組んで活動をしていたそうですね。
蘭
美容師だったんですけど、それを辞めたと同時にアルバイトをしながら、遊び感覚でバンドを組んで、都内のライヴハウスに出たりしてたんですよ。その頃は、今みたいなロックなものじゃなくて、ほんとJ-POP…CharaさんやJUDY AND MARYみたいな個性的なヴォーカリストの曲を演ってましたね。
なぜ、美容師を辞めてまで音楽をやろうと?
蘭
美容師になったのも上京するための口実だったんです。ずっと歌をやりたいと思ってたんですけど、うちの父親は絵に描いたような“厳格な父”だったんですよ。音楽をやるために東京に行くなんて許してもらえるわけがなく、しかもただの美容師だと東京に出る必要がないって言われるので、ACQUAっていう有名な美容室に入った…専門学校を出てなかったから、電話だけでも20回ぐらい断られたですけどね(笑)。
すごいっすね(笑)。
蘭
でも…結局、2年半ぐらい勉強させてもらったのかな?
音楽がやりたくて東京に出てきているので、そんな自分の目標や夢を理解してもらって円満に退社させてもらったんです。しかも、ACQUA時代の先輩の同級生が龍なんですよ。先輩が感性のいいすごいギタリストがいるって大絶賛してたんで…彼と知り合ったのは1年半ぐらい前になるんですけど、その前からいくつかバンドを掛け持ちしたりしてメンバーを探していたんですね。でも、なかなか思うような人と出会えなかったんで、先輩が言ってたギタリストのことを思い出して連絡してみたら、ちょうど彼と一緒にいたみたいで、それがきっかけで知り合ったんです。いろいろ話して、彼の夢だったり、音楽に対する思いに私とリンクするものがあったんで、一緒にやりましょうって。ギターも聴かずに決めました(笑)。
龍くんの蘭さんに対する印象は?
龍
派手な姉ちゃんだなって(笑)。で、カラオケに行って歌を聴かせてもらったんですよ。その時に彼女は椎名林檎さんの「罪と罰」を歌ったんですけど、すごかったですね。声のインパクトというか…なんか、すごかったんですよ。
そして、初音源のミニアルバム『光と影』が完成したわけですが、J-POP的なものからハードなものまでありますよね。
蘭
私の歌を初めて聴く人はいろんな想像をすると思うんですね。だから、ひとつの方向性をバンって出すよりも、いろんな私を聴いてもらいたいと思って。でも…ほんと、バラバラですよね(笑)。私の中では“ポップロック”がテーマとしてあるんですけど、1曲目の『Happy days』と3曲目の『光と影』とでは“同じ人が歌ってるの?”って思うくらいテンションも違うし。
あと、どの曲にも陰を感じたのですが。
蘭
きっと、そういうものって隠せないんでしょうね。だから、いろんなパターンの曲があるのに、どの曲を聴いても…それこそ『Happy days』ですら歌声に寂しさが漂っているって言われるし、そう言われて自分も納得してます。出したくない部分まで出ているというか(笑)。まさに“光と影”ですよ。
それだけ自分を出し切れたと。
蘭
そうですね。今までのいろんな経験が生かされてる…って感じですね。それが歌詞や歌になって表れていると思います。
龍
彼女の表現力という意味でも今できることは出し切れたと思うし、楽曲的なところでもいきなりベストというか、シングルスみたいなものができちゃったって思いますね。
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