【Hilcrhyme】ちゃんと自分なりの理
解をしてくれればいい
新潟でスキルを磨いたHilcrhymeが自身の友人に向けて作り上げたウェディングソングで待望のメジャーデビューを果たす。自身に満ちた本作をMC TOCが熱く語った。
取材:ジャガー
もともとインディーズ盤のシングル「もうバイバイ」にも収録されたナンバーがリードトラックとなっていますね。
レコード会社の人から声をかけてもらった時に、インディーズ盤の音源を気に入ってくれていて、『純也と真菜実』をもっとピックアップしたいと提案されたんです。自分の中では、一度出したことのある曲だったから抵抗があったんですけど、もっとたくさんの人に聴いてもらえるチャンスでもあったので、いいなと。
その「純也と真菜実」は結婚をテーマにしていて、友人との固い絆を感じる曲でもありました。
僕の男友達が結婚した時に書いた曲で、人のために初めて書き下ろした曲でもあるんです。違いとしては、いつもは自分の主観で書くのに対して、これは客観的に捉えましたね。結婚するふたりにサプライズで披露したかったので、曲を作っているとは言わずに“付き合ったきっかけは?”とか“奥さんってどんな人?”って聞き出しつつ、僕から見たふたりを表現しました。
3番目の歌詞の8小節には、特に友達への気持ちが凝縮されているように思ったのですが。
そこだけは僕の主観なんですよ。デモ音源で出した時にはなくて、後から付け足して。ふたりを祝う気持ちをもっとあふれさせてもいんじゃないかなと。自分にとっても思い入れの強い部分ですね。
サビの“相思相愛”は口ずさみたくなるほどに残りますよね。ストリングスがバックで鳴り響いてるのも新鮮でした。
この曲は、結構特殊な打ち込みで。拍のところにちょうど言葉を持ってきて、音に合わせて跳ねてる感じを出したかったんですよ。音の骨組みを作るのがKATSUで、その彼が音楽教室の息子ってこともあり、もともと管弦楽器が好きみたいなんです。その影響もあってHilcrhymeの曲にはストリングスが入ってることが多いですね。KATSUはヒップホップに限らず、いろんなジャンルの音楽を聴いているので、彼の作る曲はエンジニアさん曰く、前例がない音たちだから本当に編集が難しいと。
エンジニアさんを泣かせた甲斐もあり、バリエーションある3曲が揃いましたね(笑)。
そうですね(笑)。やっぱりいろんなものを聴いてほしいなって思いが一番にあって。アッパーなものから、こんなメロウな曲もできるんだってことを形にしたくて。『純也と真菜実』っていう超幸せな結婚ソングを書いてるわりに、僕自身はどちらかというとハッピーエンドを歌うより、バッドエンドを歌ってしまいがちで…ネガティブなんです(笑)
でも、ネガティブだからこそポジティブでいることの良さを上手く伝えることができるじゃないですか。「ツボミ」を聴いてそう思いましたよ。
結局歌の中では花が咲かないので、変な曲だと思うかもしれませんが、今何かを頑張っている“花を咲かせようとしている人たち”に向けて作ったんですよ。人によって、花を咲かせるって意味が違うので、共感してくれる人もそうじゃない人もいると思うんですけど、曲を聴いて何か思うって段階で聴き入っていると思うので、どんな反応だとしてもうれしいです。聴いて、ちゃんと自分なりの理解をしてくれればいいですね。
クラブでの一夜をドラマティックに描いた「Little Samba~情熱の金曜日~」は、自然とリズムに身を任せる感じで楽しめました。
今までやったことのないテンポだったりノリで、僕らもライヴの武器としてすごく気に入ってます。“ライヴをしなきゃ話にならない!”みたいな、ライヴを考えて作った歌なので、リズムに乗ってほしいですね。物語展開っていうのは気を付けている部分で、やっぱり感情移入してもらうためには必要なことなんですよ。CDでは歌詞カード見ながら聴き入ってほしいな。
3曲とも日本語の本来持つ良さを引き立ててますよね。
国語が得意だったので(笑)。Hilcrhymeの紹介文で“日本情緒あふれる”って言葉をよくいただくんですけど、言われてみると確かにそうかもしれないなと。日本語の良さや、日本の風景や季節を書いてることが多いので。出身が新潟なので、本当に自然にあふれたいい場所だし…いわゆる田舎ですが(笑)。でも、四季の移り変わりがはっきりしているし、きっと東京のような都会では味わえないことを肌で感じて育ってきたので、新潟で良かったと思います。
リリック、メロディーと聴きどころも多いし、シングルとしてはボリューム満点の仕上がりですね。
そうですね。『純也と真菜実』は、今までにあった曲ですけど、初めて聴く人の方がほとんどですし、ガッチリ聴いてもらいたいですね。『ツボミ』と『Little Samba?情熱の金曜日?』はライヴで活きる曲なので、ライヴにもぜひ来てもらってね。リードトラックはありますが、本当均等に聴いてもらいたいです。全てがHilcrhymeだと思っているので。
ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP