取材:高橋美穂

リスナーの方にあえて伝えたいんですけど、間々田さんって関係者向けの紙資料まで、ご自分で手書きしてるんですね。

それは完璧主義っていうより、少しでも伝えたいっていう欲があって(笑)。でも今回、CDの歌詞カードは手書きではないんです。隅々まで自分の表現を伝えたいという欲が強すぎると、聴き手が入る隙がないのかなって。聴き手と一緒に作れるようなアルバムにしたいと思ったんですよね。

歌詞カードに限らず、聴き手を意識されたところも大きかったのですか?

初めての試みだったんで、今でも不安なんですけど、自分だったらこの方が感情が乗せやすいってやってるうちに、ハッとなって…でも、聴き手に伝えるにはどうしたらいいだろうって立ち止まる瞬間が今回いっぱいあったんですね。それゆえに悩んだり。今までもそういう気持ちは多分あったんですけど、伝えることだけに一生懸命だったし、音楽をすることができるようになった自分にすがってることに精いっぱいだったんで、それが少しずつ見えてきたというか。1年前に1stフルアルバムを出して、いろんな方に聴いてもらえることが増えて、その分批判や評価にも直面することが増えて、いろんなことが怖くなったんですね。人が怖くなったというか。それでもワンマンライヴやイベントにも出させてもらう機会があって、ライヴが音楽をしていく源だなぁと思ってたら、今年の2月のワンマンライヴをインフルエンザで延期させてしまったんですよ。それで1カ月間できなくなって、源が奪われて、どうしようと。それで人だけじゃなく、音楽まで怖くなって。それでも1カ月後にライヴがあって、5月からレコーディングさせてもらって、その時にもう私ひとりだけの音楽じゃない、いろんな人のおかげだなって思って。不安になっても、いろんな人が助けてくれたんで、やっぱり自分は人が好きなんだと思えたんですよね。でも、このアルバムにそういう思いを詰め込むことを意識したわけじゃなくて、私の体の中に…人間の体って80%が水でしたっけ? そこにバニラエッセンスのように、そういう思いが蓄積されていたんでしょうね。だから、意識しなくても匂いとして出てきたんだと思います。

でも、人が好きとはいえ、人に媚びるわけではなく、感情マックスですよね。

人が怖くなったりしてるうちに、いつもバーンっていけるところを、ちょっと躊躇して縮こまってたことがあって。そうしたら、伝わっていいものまで伝わらなくなっちゃったんですよ。だから、中途半端は一番いけないんだと。不安でもやりきるしかないと思ったんで。

1曲目の「ハサミ」からザクサクと髪を切る音が入ってて、躊躇ないですよね。

あははは! 怖がらせたいわけじゃなく(笑)。2曲目の『髪の毛』が今までの自分を断ち切る意味があって…この曲はギターを弾いてないんですよ。キーボードを弾いてて。それが私にとっては挑戦で。ギターを取られると裸一貫や!みたいな気持ちになっちゃうので(苦笑)。それを私の曲ですって入れたわけで、怯えてた自分を断ち切る思いが詰められてると思いますね。

だから、「アイドル」みたいな曲も作れたのかもしれないですね。

ほんとにそうですね。さっきから言ってますけど、やっぱり人が好きだなって…小学校の道徳の教科書に乗ってるようなことで恥ずかしいんですけど(苦笑)、それを歌いたいと思った時に、やっぱり躊躇があって、アイドルって偶像の姿に辿り着いたんです。でもこの曲、最初からそう計画したわけじゃなくて、“私の光は音楽だけだ、なかったら生きてる意味がないんだ”って歌詞だったんです。そこから、人が好きだってテーマに着くまで悩んで、レコーディング当日の朝に決めたんです。でも、実は『アイドル』って偶像だけじゃなく、憧れの人や目標って意味もあるんですよね。

じゃあ、アルバムタイトルの“予感”にはどんな意味が込められてるのですか?

今までのレコーディングって、やることで精いっぱいだったんですけど、今回は、“私ってこんなふうになっていけるんだ!”って毎日ワクワクしてたんですね。前のアルバムの『嘘と夢と何か』は、今生きてる世界は嘘だらけで、いっぱい夢があって、でも見えない何かに突き動かされていて、それを一緒に探していこうって意味だったんですけど、その“何か”って私にとって“人”だなって。これからも“何か”は変わっていくと思うんですよ。でも、私は“何か”を見つけられるんじゃないかなって予感があるんですよね。それを、聴いてくれた人たちにも感じてほしい。自分も変われるし、こんなにワクワクできる心を持ってるんだって。
間々田優 プロフィール

ママダ ユウ:茨城県出身の女性ソロシンガーソングライター。08年11月にリリースされた1stフルアルバム『嘘と夢と何か』での生々しい表現が話題を呼び、一気に名と音を広めた。オフィシャルHP

OKMusic編集部

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