【フィルハーモユニーク】
取材:ジャガー
音の響きや言葉の力、バンドを肌で感じることのできる内容で、14カ月待っていて良かったなと思えるアルバムでした。
五郎川
ストックもあったし、2ndシングル「みちしるべ」の流れでアルバムを出そうと考えていて、実際にアルバムを作ったんですけど…なんか1stっぽくなかったんですよ。“フィルハーモユニークってこういう音楽やってます”っていうのを紹介するには弱くて。自分たち自身が己を掴めていないような印象を受けたので、いちからフィルハーモユニークらしい音やアレンジを考え直したので時間がかかってしまいました。
特に時間をかけたのは、どういった点ですか?
五郎川
バンド感を出すことですね。1stシングル「優しい響き」も「みちしるべ」も、弾き語りで成立するパーソナル部分の強い作品で、バンドと離れていってしまった部分があったんです。
今泉
歌を大事にすることが前提にあったので、最初に作っていたアルバムでは歌声が伝わるのであればバンドの音は後ろで鳴っているだけでもいいと思っていたんです。当時はそれで納得していたけど、今思うとバンドらしさはなかったですね。良い曲だけど、聴き直した時に僕たちらしさがないから“フィルハーモユニークとは?”っていうのを改めて考えました。僕個人としては、“無骨なんだけど、全体を通じて優しさや温かさを感じるもの”。それが個性になってくれればなと。
五郎川
もともとバンドの青写真的なものがなくて。ない中で、歌を大切にしたり、“こういう感じかな?”って話し合いつつ、音を確かめ合いながら…本当に手探りの状態で自分たちらしさを探してました。なので、アルバムができてフィルハーモユニークってこういう感じなんだっていうのを知ったし、自分たちをやっと確認できたって感じがします。
このアルバム制作で、しっかりとバンドと向かい合ったということですね。
五郎川
そうですね。バンドでやるポップスには限界があると思っていた人間だったんですけど、4人で音を成立させるってことにベクトルが向いた時にフィルハーモユニークの幅が広がったように思います。僕が書いた楽曲をバンドに提供するのではなく、僕がバンドの中で曲を書くイメージになった…今までは頭にある完成形をなぞる作業だったのが、バンドから何かを生み出すイメージに変わりました。
手探りの中、突破口となった楽曲はありますか?
五郎川
「君という光」と「涙の足跡」ですね。合宿を終えて取りかかったんですけど、この2曲ができてからアルバムの輪郭が見え出して。バンドでもバラードチックなものが成立することに気付かされました。
今泉
第一印象から曲の温度というか方向性が分かりやすくて、こういうことがやりたいんだなっていうのが伝わってきたので、アレンジも意外と早くできましたね。
原
「涙の足跡」は演奏がしっかり響いてきて、歌だけじゃない僕たちの個性をちゃんと見せることができたかなって思います。ラフミックスを聴いている段階で、サビに向かっていく後半のバンドのグルーブ感に感動しました。
この2曲が中心となり、あとは順調に?
中村
レコーディング環境がすごく温かくて、楽しかったんですよね。バンドを始めた時の初期衝動に似たものがありました。
今泉
バンドの初期衝動を取り戻した後にアレンジも変わったし、今回入ることになった「エンドロール」を聴いてもらえればバンドの温度感が伝わると思います。弾き語りの時点で歌に魂があり、個人的には最後の最後までシングルにしたかったオススメの1曲なので。
五郎川
自分たちらしさに気が付いて、何かを掴んだ瞬間のままレコーディングに入れたので、あとはそれを引っ張っていけば良かったんです。合宿が終わるまでは、苦しいなと思う時期があったんですけど、やっぱり自分を知ることができたり、新たな発見をするのって楽しいじゃないですか。そこに救われましたね。バンドマジックって言い方は大袈裟かもしれないけど、奇跡と呼ばれる瞬間はきっとあって。そういうのが何となく分かる瞬間が面白いんですよ。本当に苦労したことは決して無駄ではなかったんだなって。
まさに「涙の足跡」の一節のごとく。先ほどから“バンド感”というキーワードが出ていますが、そこを追い求めるのであればもっと激しさがあってもいいのではと思ったのですが。
五郎川
インディーズ時代は荒削りなロックのほうがエッジが立ってていいと思ってたんですけど、自分たちの音楽への熱をロックと呼んで、そういう気持ちでポップスをやると激しさだけでは伝わらない新しい音になるかなって。
中村
激しさでいうと、「コンコルド」が今までの自分たちにはなかったアップテンポな楽曲ですね。間奏でもギターのソロがあったりと、これからのフィルハーモユニークにつながるような作品になったと思います。ライヴでやってもすごく盛り上がりそうな楽曲でね。
五郎川
…って、盛り上がりましたよね?
今泉
つい最近披露したところでは?
中村
そうです、すごく盛り上がった曲です(笑)。
(笑)。ここまでノリに身を任せる楽曲って珍しいですね。
五郎川
肩の力が抜けた楽曲もあってもいいんじゃないかなって。本当に身を任せてというか、見た感じでロックしたいなっていう単純な発想から作りました。一転、「真っ白な未来」はピアノが中心にある楽曲なんですけど、バンドがしっかりと乗っていたり。タイトルの“ウラシマノウタ”にも込めた、ゆっくりと色褪せることなく愛され続けてほしい一枚です。